劇作家・演出家・映画監督・俳優と多彩な顔を持つ赤堀雅秋が作・演出を手掛ける、舞台『美しく青く』が、7/11から東京・渋谷のBunkamura シアターコクーン、8/1から大阪・森ノ宮ピロティホールで上演される。
シアターコクーンとのタッグは今回で4作目となる赤堀雅秋が作、演出を手掛ける同作は、仮設住宅を舞台に、普通の青年の愚鈍で実直に生きる姿を中心に、市井の人々の日常の中の絶望と希望を描いた作品。
震災で両親と弟を失い、生活のために原発で働く主人公・立花哲也役に向井理がキャスティング。哲也の同僚で元ヤクザだという西健二郎役を、2018年[プルートゥ PLUTO][ハングマン]に出演した大東駿介、哲也と恋に落ちる風俗嬢・杉田美咲役を赤堀作品では映画[葛城事件]に出演した、向井君とは舞台[髑髏城の七人]以来2度目の共演となる田中麗奈、哲也と美咲の隣に住む無職の若林春樹役を赤堀雅秋、春樹の妻・聖子役を秋山菜津子、役人の土井秀樹役を大倉孝二(ナイロン100℃)、哲也の向かいに住む老人・鈴木博役を平田満、都会からボランティアにやって来た若者・山田隆役を森優作、同じく田辺真紀役を横山由依(AKB48)、自治会長・望月行雄役を福田転球、美咲の母・正美役を銀粉蝶、美咲の兄・治役を駒木根隆介がそれぞれ演じる。
公演は7/11から7/28まで東京・Bunkamura シアターコクーン、8/1から8/3まで大阪・森ノ宮ピロティホールにて。東京公演のチケットの一般販売は5/19 10:00から開始。大阪公演については後日発表される。
■舞台『美しく青く』ストーリー
原発の町。震災で両親と弟を失った立花哲也(向井理)は、盛んになってきている原発再稼働反対運動をわき目に、悲しみを押し殺し、日々生活のために原発で働いていた。浅い知識でサッカーを語ったり、大して面白くもない テレビドラマを心待ちにしながら、元ヤクザだという同僚の西健二郎(大東駿介)と、なんとはない日常を過ごしている。
ある日、哲也はなけなしの金で行った風俗店で風俗嬢・杉田美咲(田中麗奈)と出会い、恋に落ちる。美咲は哲也の暮らす仮設住宅に転がり込み、風俗を辞めて工場で地道に働くようになった。町にごまんといるような凡庸な二人は、それでも懸命に生活し、懸命に愛し合う。
二人の家の隣には無職の若林春樹(赤堀雅秋)とその妻・若林聖子(秋山菜津子)が暮らしている。聖子からは、ことあるごとに難癖をつけられ、その度に哲也は平身低頭で謝り続ける。役人の土井秀樹(大倉孝二)が仲裁に入るが、関係はさらにこじれていく。
向かいに住む鈴木博(平田満)という老人は、煮物の余りをおすそ分けしてやるなど、何かと哲也と美咲に優しく接していたが、都会に住んでいる息子からの同居の誘いは、頑なに拒否し続けている。
都会からボランティアでやって来た若者の山田隆(森優作)と田辺真紀(横山由依)は、自治会長の望月行雄(福田転球)の指示のもと必死に活動し、仮設住宅の住人ともコミュニケーションを取ろうとする。しかし、その行動や理念にどこかチープさが透けて見える。
やがて哲也は美咲との結婚を望むようになるが、美咲は拒み続ける。哲也は強引に美咲の母・杉田正美(銀粉蝶)に会いに行くが、美咲は幼いころから母を嫌っており、さらには、美咲の兄・杉田治(駒木根隆介)は原発反対の運動に参加しているため、原発で働く哲也を認める訳にはいかなかった。
その後、鈴木老人の提案で、哲也と美咲の結婚式を仮設住宅の広場でとり行うことになる。
▽向井理コメント
・オファーが来た時の感想
今まで個人的に赤堀さんの演出する舞台は何度も拝見していました。
一見どこにでもいるような人々や、その生活を生々しく描くことで、自分とは何かを見つめるような世界に、いつしか自分も染まってみたいと思っていたので、オファーを頂いて嬉しい反面、その世界を創らなければいけない責任も感じます。
・赤堀雅秋の印象
舞台の上では大胆不敵、物語を揺さぶる存在ですが、実際の赤堀さんは作品同様、繊細で緻密な印象です。
・意気込み
念願の赤堀ワールド初参加です。今回もとある市井の人々を描いてはいますが、「生きる」ということの面倒くささや、汚い部分、きれいごとだけではない人間性も表現されると思います。
しかし、それは避けては通れない。
それを目の当たりにした人にしか見られない何かを見つけてもらえる作品にしたいと思います。
▽赤堀雅秋コメント
・現時点での構想
特に新たな試みをしようとは思っていません。凡庸な庶民の生活を凡庸にスケッチする。
ただ今まではどちらかというと近視眼的に描いてきたスケッチを、今回は『美しく青く』と自分らしくないタイトルをつけたように、
もう少し俯瞰で描けたらなと。より冷徹な目線で『現実』というものを浮き彫りに出来たらなと思います。
それが希望の物語となるか、破綻の物語になるか、正直今のところはわかりません。
諸行無常の儚さ、忘れ去られる恐ろしさ、その地続きにいる我々、空や海はいつでも美しく青く、そういう現実を描きたいです。
・向井理の印象
実直な方なのだろうなという印象。色々な思いはマグマのように内に秘めていたとしても、それを漏らさず、呑み込みながら遂行するイメージ。きちんと地に足つけて生きているイメージ。
・意気込み
シアターコクーンでまたチマチマした演劇をやります。
チマチマした演劇をシアターコクーンでやることに意義を感じます。
それが僕の仕事です。という意思表明です。
『美しく青く』
それは畏怖の念でもあり、祈りでもあります。