現在放送中の大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』より、東京オリンピックに関わる人々16名の新キャストが発表された。

中村勘九郎と阿部サダヲの2人がリレー形式で主演を務める『いだてん』は、いよいよクライマックスを迎えようとしている。1964年10月10日東京オリンピック開会式。それは、1940年東京オリンピックの悲劇を乗り越えた日本の悲願であり、『いだてん』のゴールでもある。

今回発表された新キャストは、三谷幸喜、松田龍平、井上順、立川談春、井之脇海、カンニング竹山、前野健太、増子直純(怒髪天)、浜野謙太、角田晃広(東京03)、黒田大輔、平原テツ、須藤蓮、川島海荷、吉川愛、駿河太郎の16名。そんな1964年東京オリンピックの実現のために結集した、夢と希望とパワーに満ち溢れた人たちだ。

この日発表された新キャストは最終章<1964年東京オリンピックに関わる人びと>。三谷幸喜が演じる市川監督は[東京オリンピック]のほか、[ビルマの竪琴][おとうと][四十七人の刺客][八つ墓村][どら平太]などで知られる日本を代表する映画監督。

黒澤明監督に代わり、急きょ、ドキュメンタリー映画[東京オリンピック]の監督に就任。「記録映画も美しく撮ればいい」の言葉通り、完成した作品は極めて芸術性の高いものとなり、当時の興行記録を塗り替える大ヒットとなった。

2004年の大河[新選組!]、16年[真田丸]の脚本を手掛けた三谷氏は、足利義昭を演じた06年[功名が辻]以来2度目の大河出演となる。

三谷氏は13年のフジテレビ[女信長]の今川義元役や06年の映画[犬神家の一族;監督市川崑]の那須ホテル主人役など、俳優業も少なくない。

1964年東京オリンピックのために国立代々木競技場を設計した建築家・丹下健三役に松田龍平。日本建築界の巨匠。日本の伝統美と西欧の近代建築を融合させた斬新なデザインで、戦後の芸術界をリードした。1964年東京オリンピックのために設計した国立代々木競技場は、20世紀を代表する名建築として高く評価されている。東京オリンピック組織委員会会長・津島寿一役に井上順。二度にわたって大蔵大臣を務め、戦後の賠償交渉に辣腕(らつわん)をふるった。東龍太郎の後任として日本体育協会会長に、さらに1964年東京オリンピック組織委員会の初代会長に就く。62年アジア競技大会をめぐり、田畑とともに政治スキャンダルに巻き込まれる。大蔵次官を経て政界に転じ、当選1回ながら大蔵大臣に就任。吉田茂の右腕として頭角を現す。1960年に内閣総理大臣に就任すると「所得倍増計画」を打ち出し、戦後の高度経済成長をけん引する。1964年東京オリンピックを首相として見届ける。公式記録映画「東京オリンピック」総監督。内閣総理大臣・池田勇人役に立川談春。

第1話にタクシー運転手として出演していた角田晃広は、その腕を見込まれ「聖火リレー踏査隊」の一員となり、ギリシャのアテネからシンガポールまで2万キロメートルの距離を自動車で走破する森西栄一役を務める。森西はオリンピックの魅力にとりつかれ、田畑に直訴して組織委員会の式典課に入り大会準備に奔走するという役どころだ。

1945年(昭和20年)8月6日、原子爆弾が投下された広島で生まれる。高校在学中に国民体育大会の陸上400mで優勝し、1964年東京オリンピックへの出場を目指すが、代表選考会で敗退。田畑によって、開会式の最終聖火ランナーに抜擢される。坂井義則役に井之脇海。国立競技場のすぐそばにある食堂「水明亭(すいめいてい)」店主役にカンニング竹山。土地柄、スポーツ選手や観戦客にも愛され、いつも常連たちでにぎわっている。1964年東京オリンピックの開会式当日、ひょんなことからスタート直前の最終聖火ランナー・坂井義則をかくまうことに…。

そのほか、新たに10名の新キャストが発表。前野健太が東京オリンピックのシンボルマークを制作したグラフィックデザイナー・亀倉雄策役、1964年東京オリンピックのシンボルマークを制作、短距離走のスタートの瞬間をとらえた公式ポスターなども手掛ける。その斬新で力強いデザインは、半世紀を経た現在も高く評価されている。怒髪天の増子直純が映画監督・黒澤明役、[羅生門][生きる][七人の侍]など映画史に残る作品を数多く生み出した日本映画界の巨匠。1964年東京オリンピックの記録映画の監督に決定するが、信頼する田畑が組織委員会を去り、のちに自身も辞退する浜野謙太が国民的歌手・三波春夫役、朗らかな笑顔と浪曲で鍛えた美声で知られ、数々のヒット曲を生み出す。1964年東京オリンピックでは[東京五輪音頭]が大ヒット、のちの大阪万博のテーマ曲[世界の国からこんにちは]とともに、戦後日本の復興の象徴となった。浜野サンは第9話(3月3日)で初代内閣総理大臣・伊藤博文に扮しており、『いだてん』で女優の杉咲花が女子スポーツの先駆けとなったシマと、その娘・りくを演じるなど、血縁のあるケースの同一ドラマ内1人2役は多々あるが、同一ドラマで血縁のない全くの別人を演じるのは異例。

黒田大輔が東京オリンピック選手村 料理長・村上信夫役、ヨーロッパの日本大使館や有名ホテルで修行した後、国内屈指のホテルの料理長に就任。1964年東京オリンピックでは選手村のレストラン「富士食堂」の料理長として、日本になじみのなかった世界各国の料理を提供し、選手たちの活躍を支えた。平原テツが東京オリンピック組織委員会選手強化本部 副本部長の大島鎌吉役、1932年ロサンゼルスオリンピックでは三段跳びで銅メダルを獲得。大学卒業後は陸上競技を続けながら運動部記者として活躍する。陸上界きっての理論派で海外事情にも明るいことから、組織委員会では選手強化本部の責任者として、選手育成に貢献した。須藤蓮が参加国の国旗の手配に尽力した吹浦忠正役、早稲田大学在学中、国旗の知識を見込まれ、組織委員会にスカウトされる。1964年東京オリンピックでは、国旗を正しく掲揚することがホスト国の使命であるとし、史上最多の参加国となった94か国の国旗の手配に奔走する。須藤サンは連続テレビ小説[なつぞら]に夕見子の駆け落ち相手役が記憶に新しい。

川島海荷がボランティア通訳・大河原やす子役、1964年東京オリンピックでは得意のフランス語を生かして、たった2人の選手で初参加したコンゴ共和国のボランティア通訳を務める。小柄なため、身長の高い選手たちからフランス語で「ちび」という愛称で親しまれる。吉川愛が田畑政治の娘・田畑あつ子役、政治の次女。1964年東京オリンピックの会期中は世界各国のVIPを接待するコンパニオンとしても活躍する。開催の直前に、組織委員会の要職を解かれた父を、母・菊枝(麻生久美子)とともに陰で支える。駿河太郎が国立競技場の上空に五つの輪を描いた航空自衛隊パイロット・松下治英役で出演する。1955年に自衛隊に入隊し、主力戦闘機のパイロットになる。航空自衛隊の曲技飛行チーム「ブルーインパルス」で編隊長を務め、1964年東京オリンピックの開会式で、国立競技場の上空に五つの輪を描くミッションに挑むことになる。


▽脚本・宮藤官九郎コメント
宮藤です。いよいよ佳境です。僕にとってはずっと佳境なのですが。
このたび1964年東京オリンピックパートの新キャストが発表になりました。
まだ出るか!まだ出すか!なんで出るんだ!?という超豪華な顔ぶれに驚きを隠せません。
そんな最終章を楽しむ最良の方法、それは、現在放送中の幻の東京オリンピックパートをしっかり観みることです。
今こそ観なくちゃ。戦前の招致活動とその反省が、1964年東京オリンピックへの布石となって結実する。作者として最も心血を注いだ部分であり、手前みそですが、最も大河ドラマ的な流れを意識した部分です。
「物語や時間があっちゃこっちゃ飛んで分かりにくいんでしょ」という風評で観てない貴方あなた、もったいない。ここからは飛ばないし分かりにくくもない。じっくり腰を据えて近代スポーツ史を、そして戦後復興から1964年東京オリンピックまでを描きます。
「いだてん」いよいよ最終章、です!


大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』は毎週日曜日<総合>20時〜、<BSプレミアム>18時〜<BS4K>9時〜放送中。(全47回)