初めてする同棲生活。
一緒に生活する事で、生活習慣の違いから価値観のズレが気になり破局するカップルが多いと聞いていたが、私と浩太はそこそこ上手くやっていた。
浩太は基本的に優しい。
他人同士だもの、生活習慣や料理の味付けが違うのは当たり前だ。
同棲する上で家事全般は私の仕事だったが、浩太はそれに口を挟む事は無かった。インテリアも全て私の趣味に合わせてくれた。
たまに喧嘩もする。私の至らない点は容赦なく叱ってくれた。
喧嘩しても、私が不貞腐れていると浩太がすぐに折れてくれた。大抵の喧嘩は私が悪いのに、プリプリしてる私の背後から「いつまで怒ってんの」と抱きしめてくれる。こうされる事に私は弱かった。
浩太は大人だなぁ…
お互い職場の人には付き合ってる事は言わなかった。
……が、何故かみんなにバレていたようだ。上層部を除いて。
斎藤さん(30)曰く、「言わなくてもお前ら見てれば分かるわ」だそうだ。
一度、浩太を可愛がっている工場の古株「爺ちゃんズ」に聞いてみた事がある。
私「ねぇ、爺ちゃんズは何で浩太を可愛がってるの?」
爺ちゃんズ@「爺ちゃんズじゃない、秋本さんって呼べ。こいつと一緒にすんな」
爺ちゃんズA「俺の方こそこいつと一緒にすんな」
私「(仲良しだなー)…んで、爺ちゃんズはなんで浩太を可愛がってんの?」
爺ちゃんズ「「………」」
爺ちゃんズ@「浩太か。あいつは他の若いやつらとはちょっと違うな」
爺ちゃんズA「度胸がある。俺に初めて会った時も敬語なんて使わなかったしな(笑)」
爺ちゃんズ@「俺たちに叱られれば大抵の連中は尻込みする。けど、浩太は違った。何でだ!?って食ってかかってきた。」
爺ちゃんズA「浩太のあの見た目もだな。あれワザとやってんだろ。自分を見た目で判断しない奴にしか心を開かない。そういう所だな、気に入ったのは」
私「ふ〜ん…。そっか、ありがと」
爺ちゃんズ「でも壱、あいつはやめとけ。なかなか頑固だぞ」
私「ん〜?そうねー、どうかなー?」
爺ちゃんズ「まさかもう付き合ってるんじゃないだろうな」
私「ん〜?んーどうかな〜?あははは、じゃあねー」
その日の晩、浩太が「何か今日爺ちゃんズに殴られたんだけど」と言っていたが知らない。←
そして季節は過ぎ、年末。
毎年恒例の、社内全社員揃っての忘年会が開かれる事になった。
本社からも、社長を始め、総務部長や営業部長なども参加。
そして、本社に単身赴任中の木元君も参加する事になった。