スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

二次会

忘年会の二次会は、事務所の人達だけで居酒屋で行われた。


私は始めお局様と飲んでいたが、途中でお局様は帰宅。
みんな酔いが回って訳が分からなくなってきていた。斎藤さんが何やら叫んでいる。


そんな時、私の隣にドカリと腰を下ろしたのは。


木元君。




木元君「どーもー」


私「はは、どーもー。大分酔ってる?」


木元君「いや、まだまだっすよ。壱さん飲んでます?」


私「ん〜これ以上飲んだら帰れなくなりそうだから(笑)」


木元君「……壱さんさ、浩太さんと付き合ってるんだって?」



私「えぇえええ!何突然!」



木元君「さっき斎藤さんから聞きました」


私「あ〜、そっか、うん、そう」




木元君「あーーー、やっぱホントか」



私「ははは、お恥ずかしい」



木元君「…俺、職場恋愛は絶対ないわーって思ってたんですよ」


私「…うん、私も最初思ってた」



木元君「けどさ、いつだったか、壱さん目ぇすっごい腫らしながら仕事してた時あったじゃん。俺この会社入ってちょっとした頃かな」





(ケンと別れた時だ…)





木元君「目ぇ真っ赤にして、泣きそうなの何とか耐えてる状態で仕事に集中しようとしてるの丸わかりで。…俺、何があったのか分かんないけど、何かそれ見た時、たまらなくなって。ホント、職場はないわーって思ってたのにね。壱さんは俺の事弟みたいに思ってたかもしれないけど。俺は…姉さんには見れなかった。だから、転勤から帰ってきたら告ろうって思ってたんです」



私「……」



木元君「でも、先に浩太さんに取られちゃいました☆あ、俺二人の仲どうこうしようとか無いから。そこは大丈夫。壱さん男見る目ありますよ、俺逆立ちしたって浩太さんには敵わないっス。浩太さん、ホントすげー格好いいから。見た目も、中身も。浩太さん以外なら許さないけどね(笑)浩太さんなら、納得っス」



私「そっか…」




木元君「ただちょっと俺の気持ち伝えたかっただけだから」



私「うん、…ありがとう」



木元君「幸せになってね」









そして次の日、木元君は本社に帰っていった。

忘年会

木元君が帰ってくる!


忘年会が終わったら、木元君は次の日には本社にとんぼ返りしなければならなかったが、私はワクワクしていた。まるで弟みたいな、可愛い可愛い部下。久々に会える!嬉しい!






浩太は最後まで行く事を渋っていた。
浩太は飲み会が苦手だ。特に職場の飲み会は。
飲み会の雰囲気も嫌いだし、酔っ払ったウザい上司に絡まれる位なら美味い飯を食べに行きたいといつも言っていた。

そんな理由で、これまで浩太は会社の飲み会はいつも欠席していたのだが。
私が行くとなると話は別らしく、渋々ながら参加する事になった。



そして忘年会開始ー。


場所はとある温泉旅館。居酒屋にこの人数は入らないからね。広い大広間を貸し切っての大忘年会だ。


開始と共に、綺麗なお姉さん達が数人入ってきた。


司会「今年はコンパニオンのお姉さんをお呼びしましたー!」

一気に親父達が浮き足立つ。ウッザ!!!



私「私聞いてないんですけどー」


お局様「まぁまぁ、お酌しないで済むからいいじゃない」


私「男共の視線がキモ過ぎる」


お局様「キモいわねー」



そんな感じで私はお局様と一緒に飲んでいたのだが。


ふと浩太の方に目をやると。



なんと!




浩太がコンパニオンに囲まれてる!!!



えぇええええ!!!???


な、なんでなんで!?




私が固まっていると、毎度お馴染み斎藤さん(30)がそれに気付き、私にこう言った。



斎藤さん「あーらら、浩太女にモテそうだもんなー。本人毛ほども興味ないけど。そこがモテんだろうなー。けどコンパニオンはみんなのものだ。俺が何とかしてきちゃる」


そう言って斎藤さんはコンパニオンの輪の中に無理くり入って行き、見事バラけさせた。



そうか、浩太はモテるのか…。
今まで女の人と一緒にいる所を見た事が無かったので知らなかった。新事実。




それから、私は無事木元君と再会し、「久しぶりー」「お久しぶりっすー」と当たり障りのない挨拶をし、本社での生活や仕事の事などを話しながら時間は過ぎていった。





宴もたけなわ。


二次会は、事務所と工場で分かれる事になった。
浩太は「もうウンザリ」と言った様子で二次会へは行かず帰る事にしたらしい。
私は事務所のみんなに誘われるまま二次会へ突入。




二次会は居酒屋で行われる事になった。
もちろん、木元君も一緒に。



同棲

初めてする同棲生活。

一緒に生活する事で、生活習慣の違いから価値観のズレが気になり破局するカップルが多いと聞いていたが、私と浩太はそこそこ上手くやっていた。


浩太は基本的に優しい。
他人同士だもの、生活習慣や料理の味付けが違うのは当たり前だ。

同棲する上で家事全般は私の仕事だったが、浩太はそれに口を挟む事は無かった。インテリアも全て私の趣味に合わせてくれた。



たまに喧嘩もする。私の至らない点は容赦なく叱ってくれた。
喧嘩しても、私が不貞腐れていると浩太がすぐに折れてくれた。大抵の喧嘩は私が悪いのに、プリプリしてる私の背後から「いつまで怒ってんの」と抱きしめてくれる。こうされる事に私は弱かった。
浩太は大人だなぁ…




お互い職場の人には付き合ってる事は言わなかった。



……が、何故かみんなにバレていたようだ。上層部を除いて。




斎藤さん(30)曰く、「言わなくてもお前ら見てれば分かるわ」だそうだ。



一度、浩太を可愛がっている工場の古株「爺ちゃんズ」に聞いてみた事がある。


私「ねぇ、爺ちゃんズは何で浩太を可愛がってるの?」


爺ちゃんズ@「爺ちゃんズじゃない、秋本さんって呼べ。こいつと一緒にすんな」

爺ちゃんズA「俺の方こそこいつと一緒にすんな」


私「(仲良しだなー)…んで、爺ちゃんズはなんで浩太を可愛がってんの?」


爺ちゃんズ「「………」」



爺ちゃんズ@「浩太か。あいつは他の若いやつらとはちょっと違うな」


爺ちゃんズA「度胸がある。俺に初めて会った時も敬語なんて使わなかったしな(笑)」


爺ちゃんズ@「俺たちに叱られれば大抵の連中は尻込みする。けど、浩太は違った。何でだ!?って食ってかかってきた。」



爺ちゃんズA「浩太のあの見た目もだな。あれワザとやってんだろ。自分を見た目で判断しない奴にしか心を開かない。そういう所だな、気に入ったのは」




私「ふ〜ん…。そっか、ありがと」


爺ちゃんズ「でも壱、あいつはやめとけ。なかなか頑固だぞ」



私「ん〜?そうねー、どうかなー?」



爺ちゃんズ「まさかもう付き合ってるんじゃないだろうな」



私「ん〜?んーどうかな〜?あははは、じゃあねー」





その日の晩、浩太が「何か今日爺ちゃんズに殴られたんだけど」と言っていたが知らない。←






そして季節は過ぎ、年末。
毎年恒例の、社内全社員揃っての忘年会が開かれる事になった。



本社からも、社長を始め、総務部長や営業部長なども参加。


そして、本社に単身赴任中の木元君も参加する事になった。

感情

あれは今でも忘れられない。



初めて見た







浩太の涙













「ねえ、ちょっと話があるんだけど」
そう言って私を呼び止めた大家さん。
見た目は60代後半、いつもバッチリメイクをしている気の強そうなマダムといった印象だ。


「はい、何ですか?」
早く帰りたいんだけどな〜と思いつつ大家さんに向き直ると、大家さんは開口一番にこう言った。






「あなた、男の子連れ込んでない?」






え…



いきなり何を言い出すんだろう。返答に困っていると。


「駐車場によく車が止まってるじゃない?」



確かに浩太がアパートに来る時は、空いている駐車場のスペースに車を置かせて貰っている。
しかし、それは大家さんが「ここ空いてるからいつでも誰か来た時に使っていいよ」と言ったからだ。
浩太が来るのだって週に1回位のもので。





私「すいません、ちょっと頻度が多かったですか?」

と私が聞くと、大家さんは大きく溜め息をつき。



「まぁねー、確かに使っていいとは言ったけれど。まさかあんな子連れ込むとは思わなかったから」




は?何…?あんな子って…?



「あんな金髪でチャラチャラした子!うちの周りウロチョロされたらご近所に何言われるか!あなたはそんな心配ないと思ってたのに残念だわ。ね!もうあの子を連れて来るのはやめてね。それから、駐車場を使った分、一万円を罰金として徴収しますから。分かった?」



言う事言って大家さんは帰って行った。









何を言っているの。
この人は本当に人間なの。


始めはただただ驚愕で頭が回らなかった。
次第に湧いてきたのは怒りと、そして悲しみ。



浩太に何て言おう。
浩太に何て言おう。
浩太に…



悔しさと怒りでどうにかなりそうだった。
浩太の照れた笑顔を思い出すと泣きたくなった。










次の日、浩太に会う事にした。

浩太に全て話し、引っ越そうかと思うと伝えた。


浩太は静かに聞いた後。



「大家んち、どこ?」


と聞いてきた。


「大家と話がしたい。大家んち教えて」





ヤバい、と思った。
完全にキレてる。



「だっておかしいでしょ。たまに使っていいっつーから使っただけなのに罰金って。俺の事はいいよ何とでも好きに言えばいい。そんなん慣れてる。でも何で直接俺に言わない!…だから話してくる。場所教えて、お願い」




教えては駄目だと思った。
私だって腹が立つ。本当に。大家を殴りたい位。
でも浩太に居場所を教えればそれこそ…穏便に済まなくなる。

我慢だ。冷静になれ。


私が頑なに頭を横に振ると、浩太は「くっそ!なんで!!なんでだよ!!」と声を荒げた。




私は泣きながら「ね、引っ越そう?んでもっともっとずーっと一緒にいよう?邪魔されない場所で、一緒に暮らそう?」



今思えば逆プロポーズのようだったと思う。




浩太は黙って私を見つめた後「…………ごめん、俺のせいで」と言って一粒の涙を零した。

















そうと決まったら即行動!!
不動産情報を徹底的に調べ、すぐに新居を決めた。
新しい大家さんに二人で会いに行き、同棲しても大丈夫か尋ねると、快くOKしてくれた。「大変だったね」と言って貰えて少し気分が晴れた気がした。




前の大家には、微塵も心の篭ってない「大変ご迷惑をお掛けしました」という手紙に一万円を添え手渡した。
大家がドアを閉めた後、「こんなん(一万円)くれてやるよっ!!」ベー!!としたのは言うまでもない。





そして私と浩太は新しい場所で、同棲を始める事にした。

恋人

20数年生きて来て、初めて恋人と呼ばれる人ができた。








浩太はすごく私を大切にしてくれる。
言葉数は少ないけど、その分態度で示してくれた。


こんなに大事にされた事、今まで無かった。



私も同じ位浩太を大事にしなきゃ。
もう、軽率な行動や軽口はやめよう。
言葉を大切にする浩太を見習わなきゃ。




「自分が言われて嫌な事は相手に言わない」


それが浩太の教え。



思った事をポンポン口に出していた自分を恥じた。
もっと相手の…浩太の事を考えよう。





毎日がとても幸せだった。


念願だったバイクの後ろに乗せて貰い、髪が有り得ない位絡まる事を知った。


浩太はちょくちょく私のアパートに遊びにくるようになり、私の作ったオムライスを「美味い美味い」と食べてくれた。










そんなある日、仕事から帰るとアパートの前に人が立っているのが見えた。






大家さんだ。



「こんばんは」そう言って通り過ぎようとした時。



「ねえ、ちょっと話があるんだけど」と呼び止められた。
前の記事へ 次の記事へ