全然知らなかった。
木元君の気持ち。
私がずっと耐えていた時、木元君はずっと私の事を見てくれていたんだ。
ありがとうという気持ちと、ごめんねという気持ちがごちゃ混ぜになり、涙が流れた。
でも私が選んだのは浩太だ。
家に着けば浩太が待っている。浩太の前では今まで通りでいなければ。浩太を不安にさせたくない。
ただ。二次会から家に着くまでの間はどうか、この止まらない涙を許してください。
それから、3年が過ぎた。
木元君も無事単身赴任から帰ってきた。
先輩と後輩として、上手くいっている。
浩太とは相変わらず。
同棲も、3年も続くとカップルというより最早夫婦のような感覚。
たまに喧嘩もするが、仲良くやっていた。
いつの間にか親に「結婚はまだか」と言われるような歳になり、周りの友達も一人二人と結婚して行く。
そうなると自然と「結婚」のふた文字を意識するようになる訳で。
まだ10代の頃、自分が異性と付き合うなんて信じられないと思っていた。
20代になっても、自分が結婚なんてあり得ないと思っていた。
そして今。
自然と人間は大人になっていくんだなぁ、と思い始めていた。
そんなある日、私は友人に会いに関西へ向かっていた。
初めての関西はとても楽しかった。2泊3日、色んな場所へ行き、色んな美味しいものをいただいた。
そして帰る時間。
名残惜しくも友人と別れ、帰りの飛行機に乗り込んだ。
地元の空港に着いた時にはもうすっかり日が暮れていた。
空港には浩太が迎えにきてくれていた。
駐車場に行き、車に乗り込む。
私は飛行機が好きだ。小さい頃から空を飛ぶ事に憧れていたせいだろうか。初めて飛行機に乗った時に見た雲海に感動したせいだろうか。もう覚えていない。
車に乗って夜の飛行場に輝くライトをうっとり見ていたら、浩太がふと語りかけてきた。