『ブウサギ!面白いですねブウサギ!!』
「可愛いとかじゃないのか?」
やってきましたエンゲーブ。
ぶーぶー言ってるのに耳の長いブウサギとやらに目を奪われている俺にルークは変なの、とへらっと笑った。
だってこいつブタなの?ウサギなの?ていうかブウサギだよ。ブウサギってなんだよ!てな感じで俺の心はブウサギでいっぱいです。
『はしゃいじゃってすみません。ブウサギを見るのは初めてだったので』
「いいよ、俺も初めて見た時はそんな感じだったし」
『ルークは優しいですねー!さて、そろそろローズさんのお家に行きましょうか』
「? どうせ後で行くことになるだろ」
『言ったでしょう?後手に回る必要はありません。持っている知識は生かして先手を取るのが吉なのですよ』
それじゃあ行きましょう。
小さな村だから、というより頭に刷り込まれているため、村一番の家ローズさん宅は簡単に見つけることができた。いやあ全部知ってるって楽チン楽チン。
コンコン、扉をノックすれば恰幅の良いおばさん―ローズさん―が応対に出てきた。こんにちは、と挨拶すれば気持ちの良い返事が返ってくる。
『私、アクル・マーカスと申します。…初対面で申し訳ないのですが、少し相談に乗っていただけないでしょうか』
一度視線を下に落とし、少しの間のあとに相手の目を見つめる。相手にだけ聞こえるように声のトーンを落とせばもう簡単。
「…訳ありみたいだね?いいよ、入んな!」
ほら、信じてくれた。ま、いつもの俺と違って本当のこと言ってるけどねえ。
そんなことを思いながら呼ばれるままにローズさんの玄関をくぐった。
***
「さあ、ここには私とアンタ達しかいないよ。話してごらん」
おばさん、というよりお母さんみたいなローズさんは俺達に紅茶とアップルパイを出してそう切り出した。あ、この紅茶中々いい香りする。
紅茶に口をつける前に一礼し、隣に座るルークに視線を送る。
『ありがとうございます。じゃあルーク様お願いします』
「え、俺!?…え、えーと」
いきなり振られたからか、すっとんきょうな声を上げるも、ルークは小さく咳払いして自分を落ち着かせる。
「――キムラスカランバルディア王国、第三王位継承者ルーク・フォン・ファブレと言います。あ、あの、礼儀とかは気にしないでくださいね」
「き、キムラスカ王族様だって!?なんでまた従者もろくに連れずこんな辺鄙なところへ…」
「先日賊に浚われて…マルクト領まで連れて来られたのです。先ほど挨拶したアクルが守ってくれ、近くにあったのがここでしたので寄らせてもらいました。望んでないとはいえ、密入国になりますし、マルクトへの敵対行動と見られないためにも早急にキムラスカへ鳩を飛ばしたいのです。…鳩を貸していただけませんか?」
「もちろんですとも!どうぞお使いください!!賊に浚われたなんてさぞお疲れでしょう…!アクル様共々宿を用意しますのでっ」
『私はルーク様に雇われたしがない傭兵です、どうぞお気遣いなく』
「ていうか、俺もそんなに畏まられると困るかも…」
苦笑した顔を向けられて、思わず俺まで苦笑いしてしまった。
***
「ピオニー陛下と叔父上とマクガヴァン元帥に鳩出したし、とりあえず大丈夫かな?」
『んー、敵国ですからなんとも言えませんが、タルタロスが一般市民に迷惑をかけていたことも書き添えましたし…多分大丈夫でしょう』エンゲーブの宿屋のベッドに座りながら、鳩を飛ばした窓に目を向ける。
鳩ってすごいねえ、よく迷わずに手紙を届けられるものだ。
ちなみにキムラスカ国王陛下にはルークの無事と俺という傭兵を雇っていることを。
ピオニー陛下にはマルクト領に結果的に無断で入ってしまったことへの謝罪と諸々の報告を。
元帥にはピオニー陛下へ送った内容に加え、近い内にそちらに行くのでキムラスカに戻るための準備を頼むことを。
そして元帥以外への手紙に、返答はセントビナーへ鳩を送って欲しいと言う旨を。
正式な紙ではないけれど、ファブレの紋章が入ったルークの日記の一部を使わせてもらったし、情報を握り潰されるなんてことはまずないだろう。
とりあえずは、まあ。
『明日のためにそろそろ寝ましょうか』
「だな」
おやすみ、アクル。
はい、おやすみなさい。
(無能な軍人に陛下からの連絡が早く伝わることを願って)
「…ん、むぅ…」
『(…襲っちゃだめかなあ)』
*****
アクルはなんでも知っているというチート。だってローレライからの刷り込みだし\(^o^)/
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