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アクルinあびす!6



生い茂るってきっとこういうことを言うんだろうね。
届く光さえ疎らなチーグルの森で、俺とルークはここに来ているだろう導師を探していた。
え?導師守護役とかどこかの大佐、襲撃犯とは会わなかったのかって?あんなもの来る場所がわかってるんだからいくらでも避けられってものです。襲撃犯はタタル渓谷での垂れ死んでいるんじゃないでしょうか。


「あっ、アクルあそこ!」


俺の後ろをちょこちょこと着いてきていたルークが何か見つけたらしい。視線の先を辿れば白い法衣に身を包んだ少年が魔物に周りを囲まれていた。
ありゃま、あれはちょーっとやばいんでないかい?
走り出したルークの後に続いて行くも、少年―導師イオン―を襲う魔物を止めるまでには至りそうにない。


「イオン!!」


切羽詰まったルークの声に現実に戻される。
ああ、そういえばなんとか式譜術ってやつは体に負担が――。


「アカシック――トーメントっ!!」


あ、れ?
俺の見間違いでなければ導師イオンが荒々しい声を上げてなんとか式…あ、ダアト式譜術を使った気がするんだけれど。つーか音素に還る魔物見てものすごく良い笑顔を浮かべてる。
うーん、もしかして導師イオンは俺に似て、いやいやどちらかというとアレン寄りかな。俺に言わせればまだまだ甘っちょろいって感じだ。


「おい!大丈夫かよ!?」


なんてことをつらつら考えていると、黒いオーラに気づかないルークが心配そうに言いながら地面に膝をついていた導師イオンを支えた。
一拍遅れてそこに着けば、華やぐように笑った導師イオン。


「ルーク!…と、あなたは?」

『お初にお目にかかります、導師イオン。ルーク様に雇われて護衛をしておりますアクル・マーカスと申します』


このような場所なので立礼で失礼しますと断りを入れれば、あの笑顔のまま気にしないでくださいと返された。
さてさて。先ほどの会話で違和感が一つ。

今回が初対面がはずなのに、どうして導師イオンはルークを知っているのか。
ついでに言えば俺のことは知らない。

となれば答えは一つ。


『導師イオンも二回目、ですか?』



(見開いた目は年齢相応の驚き方)



「イオンもか!」

「ルークもですか!?し、しかし前回はアクルなんて方…」

『僭越ながら私がご説明させていただきます。チーグルの巣穴に向かいながら、ね』



***
短し\(^o^)/
ぬるぬる進みます(二回目)

アクルinあびす!5

『ブウサギ!面白いですねブウサギ!!』

「可愛いとかじゃないのか?」


やってきましたエンゲーブ。
ぶーぶー言ってるのに耳の長いブウサギとやらに目を奪われている俺にルークは変なの、とへらっと笑った。
だってこいつブタなの?ウサギなの?ていうかブウサギだよ。ブウサギってなんだよ!てな感じで俺の心はブウサギでいっぱいです。


『はしゃいじゃってすみません。ブウサギを見るのは初めてだったので』

「いいよ、俺も初めて見た時はそんな感じだったし」

『ルークは優しいですねー!さて、そろそろローズさんのお家に行きましょうか』

「? どうせ後で行くことになるだろ」

『言ったでしょう?後手に回る必要はありません。持っている知識は生かして先手を取るのが吉なのですよ』


それじゃあ行きましょう。
小さな村だから、というより頭に刷り込まれているため、村一番の家ローズさん宅は簡単に見つけることができた。いやあ全部知ってるって楽チン楽チン。
コンコン、扉をノックすれば恰幅の良いおばさん―ローズさん―が応対に出てきた。こんにちは、と挨拶すれば気持ちの良い返事が返ってくる。


『私、アクル・マーカスと申します。…初対面で申し訳ないのですが、少し相談に乗っていただけないでしょうか』


一度視線を下に落とし、少しの間のあとに相手の目を見つめる。相手にだけ聞こえるように声のトーンを落とせばもう簡単。


「…訳ありみたいだね?いいよ、入んな!」


ほら、信じてくれた。ま、いつもの俺と違って本当のこと言ってるけどねえ。
そんなことを思いながら呼ばれるままにローズさんの玄関をくぐった。


***


「さあ、ここには私とアンタ達しかいないよ。話してごらん」


おばさん、というよりお母さんみたいなローズさんは俺達に紅茶とアップルパイを出してそう切り出した。あ、この紅茶中々いい香りする。
紅茶に口をつける前に一礼し、隣に座るルークに視線を送る。


『ありがとうございます。じゃあルーク様お願いします』

「え、俺!?…え、えーと」


いきなり振られたからか、すっとんきょうな声を上げるも、ルークは小さく咳払いして自分を落ち着かせる。


「――キムラスカランバルディア王国、第三王位継承者ルーク・フォン・ファブレと言います。あ、あの、礼儀とかは気にしないでくださいね」

「き、キムラスカ王族様だって!?なんでまた従者もろくに連れずこんな辺鄙なところへ…」

「先日賊に浚われて…マルクト領まで連れて来られたのです。先ほど挨拶したアクルが守ってくれ、近くにあったのがここでしたので寄らせてもらいました。望んでないとはいえ、密入国になりますし、マルクトへの敵対行動と見られないためにも早急にキムラスカへ鳩を飛ばしたいのです。…鳩を貸していただけませんか?」

「もちろんですとも!どうぞお使いください!!賊に浚われたなんてさぞお疲れでしょう…!アクル様共々宿を用意しますのでっ」

『私はルーク様に雇われたしがない傭兵です、どうぞお気遣いなく』

「ていうか、俺もそんなに畏まられると困るかも…」


苦笑した顔を向けられて、思わず俺まで苦笑いしてしまった。


***


「ピオニー陛下と叔父上とマクガヴァン元帥に鳩出したし、とりあえず大丈夫かな?」

『んー、敵国ですからなんとも言えませんが、タルタロスが一般市民に迷惑をかけていたことも書き添えましたし…多分大丈夫でしょう』エンゲーブの宿屋のベッドに座りながら、鳩を飛ばした窓に目を向ける。
鳩ってすごいねえ、よく迷わずに手紙を届けられるものだ。

ちなみにキムラスカ国王陛下にはルークの無事と俺という傭兵を雇っていることを。
ピオニー陛下にはマルクト領に結果的に無断で入ってしまったことへの謝罪と諸々の報告を。
元帥にはピオニー陛下へ送った内容に加え、近い内にそちらに行くのでキムラスカに戻るための準備を頼むことを。
そして元帥以外への手紙に、返答はセントビナーへ鳩を送って欲しいと言う旨を。

正式な紙ではないけれど、ファブレの紋章が入ったルークの日記の一部を使わせてもらったし、情報を握り潰されるなんてことはまずないだろう。
とりあえずは、まあ。


『明日のためにそろそろ寝ましょうか』

「だな」


おやすみ、アクル。
はい、おやすみなさい。



(無能な軍人に陛下からの連絡が早く伝わることを願って)



「…ん、むぅ…」

『(…襲っちゃだめかなあ)』



*****
アクルはなんでも知っているというチート。だってローレライからの刷り込みだし\(^o^)/
ぬるぬる進みます←

アクルinあびす!4

『しかしあれが本当に軍人なんですか?見た目といい戦闘といい、到底軍人とは思えないんですが』

「改めて言われると本当にな…」

『住居侵入?に誘拐でしょー。ルークを指差すなんて言語道断ですし、かるーく死刑になりますよ』


それでなくともキムラスカとやらは王族の血を酷く尊いものとして扱っている。賊を侵入させるなんてことは城を守るものにとっても王族にとっても落ち度でしかない。
さてさて。
タタル渓谷に詳しいルークの案内の元、無事に渓谷の出口にたどり着くことができた。
確かこのあとエンゲーブとやらに行くんだったっけ。本来なら寄り道せずに最短ルートでバチカルに向かいたいところだが、今後のことを考えると導師イオンとの接触を持っておくに越したことはない。
丁度辻馬車乗りのおじさんもいることだしね。


「すみません」

「うわっ!?なんだあんたらこんな時間に!漆黒の翼か!?」


ルークを見てうわっはないでしょ。うわっ可愛い!はありだけど。


『漆黒の翼がどんな方は存じませんが、私達は貴方に危害を加えるつもりはありません。賊に浚われ、ようやく逃げて来てここに。失礼ですが貴方は…?』

「賊に!?よく逃げられたな…最近は物騒すぎる。俺は辻馬車の御者だ。もしかしたらまだ近くに賊がいるかもしれないし、首都まで行くが乗ってくか?」


くい、とおじさんが指差したのは恐竜みたいな動物が繋がれている辻馬車だった。
無論断ることなく、俺とルークは頷いた。


『エンゲーブは通りますか?』

「ああ、エンゲーブまでなら二人合わせて一万二千ガルドだ」

『…いちまんにせんガルド』


ガルドって何?この世界のお金の単位か。どのくらい高いのかはよくわからないけど、まあガルドなんて一つも持ってない。
ルークはもしかしたら持っているかも知れないけれど(だって貴族だし)ここでポンと現金出しても怪しまれるかも(賊に浚われてお金があるのはおかしすぎる)
ルークが自分の懐を探るのを手で制し、俺は着ていた団服を脱いで、おじさんに手渡す。


『このコート、装飾は全部銀でできているんです。多分そのぐらいの値段にはなるかと』

「ほう――よし、乗ってきな!」

『ありがとうございます!』


鉱物が違わなくてよかった。
目配せして、行きましょうと言えばなんだか申し訳なさそうにルークは俯いていて。


「俺、この時のために家から金持ってきてたのに…」


おじさんに聞こえない程度の音量で呟くルークに、ルークが二回目ということで何かしらの準備をしていたことに気づいた。そして俺がコートを差し出したことに何故だか負い目を感じていそうなことも。


『そのお金はまた後で使いましょう?一回目と同じにする必要はないんです、お金が足りなくなることもあるかもしれない』


だからそれはまた後で。
スマイル付きで促せば、ルークはぱあっと表情を明るくさせてこくりと頷いた。うんうん、可愛い子は笑顔が似合うよー。

そんなわけで俺達は優しいおじさんの辻馬車に揺られ、エンゲーブを目指すことにしました。



(途中マルクト軍に轢かれそうになったりして)



「アクル何してるの?」

『状況を詳しく書き記したものは説得力があるんですよ』

「ふーん?」



***
眼鏡死亡フラグ

アクルinあびす!3

「アクルっていくつ?」

『18になります。ルークの4つ上ですね』

「じゃあアクルってローレライにどこから連れて来られたんだ?」

『そうですねえ…預言がない世界とでもいいますか』

「預言がないのか!?」


いいなあ、すごいなあ。
そう言いながらきらっきらした輝く瞳でいくつもの質問を重ねるルーク様、じゃなかったルーク。
精神年齢も相まってか か な り 可愛い。俺の答えにふんふん頷きながら耳を傾ける様子は鼻血ものだね。出さないけど。
ちなみに敬語は嫌だ様付けもやだ!なんて駄々も捏ねてくれちゃって可愛いのなんのって可愛いんですよ。敬語は公爵貴族だからってのと建前があるからそのまま、名前呼びは第三者がいない時に限ることで了承してもらった。超しぶしぶだったけどね!


「それにしてもアクルは強いんだな!」

『もー、誉めてもなにも出ませんよ?』


ていうか俺の強さはこんなもんじゃないしねえ、なんて大鎌のイノセンスをくるくる回していると魔物とは違った気配と、砂利の音。
まあ予想はついてるけど。


『ルークは俺の後ろに隠れててくださいねー』

「?」


きょとんとしたルークに笑ってみせて、気配がある方向に視線を向ける。


「貴方っ…探したのよ!!」


はーい、襲撃犯のおっでましぃー。
片手にナイフ、身体中に擦り傷を作ったグラマラスな女性―ティア―が俺達をキッと睨み付けていた。
んん、綺麗な人は好きだけど常識ない人は嫌いなんだよねえ。


『どちら様ですか。探したって誰を』

「貴方には関係ないわ!そこをどいてちょうだい」

『関係ないはないですよー』


だって貴女、私にナイフを向けているじゃないですか。


「――え、」


刹那。
ルークに風が起きたと感じさせる間もなく襲撃犯との距離を詰めた俺は、状況を把握しきれない無能が軍人が呆けた声を上げたのを耳にしつつ大鎌で相手の首筋を捕らえる。
薄皮一枚。ぷつ、と浮かぶ珠は赤い色をしていた。


『こーんな暗がりな場所でナイフ向けたまま話かけるなんて、野盗ですか?』


なんてこと微塵も思っていませんが。
すでにナイフを持つほどの力も保てないのか、ぶるぶる震える襲撃犯はルークを指差した。


「…わ、私はその人を探してっ」

『探して?どうするつもりです?』

「バチカルまで送り届けるのよ!!」

『へえ、それは今貴女が指差している人物をルーク様と知ってのことですか』

「っ当たり前じゃない!!」

『…刷り込まれた通りの馬鹿女だな』


ちっと神田みたいに舌打ちして、小声で呟く。


『ルーク様、この女性はルーク様のお知り合いの貴族の方ですか?』


もちろんこの時点で、の意味だ。


「ちが、」

「私は貴族じゃないわ!ダアトの人間よ!!」


お前には聞いてないよ襲撃犯。
ルークの言葉を遮ったことに、貴族の言葉を遮ったことに静かに怒りを宿らせる。
しかし、自分で言い切ってくれるのには助かった。


『なら、とりあえずルーク様への侮辱罪で死んでください』


すっきりした笑顔を浮かべた俺は、鎌の刃を横に滑らせた。



(あの絶望的な顔、醜いったらないね)



『すぱっと殺しときたかったんですけど…』

「簡単に人を殺しちゃ駄目だ!」

『ぶー…』



***
ルーくんが優しいので襲撃犯はアクルに殺されませんでした←
気絶してタタル渓谷に放置^^
アクルは殺す気満々でした。

アクルinあびす!2


『先ほど言いましたように、私はローレライに"ルーク様をお救いするため"にこちらに連れて来られました』


だいぶ使い慣れている黒い大鎌を振るい、所謂魔物と言われるモノを切り裂きながら夜道を進む。道とは言っても獣道だけれど。
もちろんその間ルーク、いやいやルーク様には剣なんて物騒なモノは持たせておりません。ローレライに刷り込まれた知識ではあるけど、こんな可愛こちゃんの家に襲撃に入って、且つ誘拐した人物と同じような真似は致しませんことよ。
ルーク様を守りながら戦うのぐらい楽なことだ。


『ローレライは一通り――一回目、でしたっけ?その辺りの知識は全て刷り込まれました』


さっきまでいた草原で気絶したままの襲撃犯。
無能な敵国の大佐。
裏切りスパイの導師守護役とやら。
自称親友の元貴族。
偽りの姫に傲慢な被験者。
それから――だーめだ、馬鹿ばっかで言い切れないね。

ザシュッ。

また一匹、植物のような魔物を音素?に還らせるとルーク様が不意に足を止めた。


『ルーク様…?』

「アクルは…気持ち悪く、ないのか」

『? 何がでしょうか』

「その、」


――レプリカという存在を。
そう言ったっきり俯いてしまうルーク様に首を傾げる。
気持ち悪い?何が?ルーク様が?こんな可愛い子が?
そこまで考えたところでああ、と思い出す。

この世界でレプリカが忌み嫌われていたことを。

正直、言わせてもらうなら人の外見なんてレプリカ技術なんてものを使わなくともいくらでも似せることはできる。世の中には瓜二つの人間だっているのだ。
だからといってその人々が同一であるわけではない。尚且つ、外見がいくら一緒であろうとも中身や本質が重なることなどあり得ない。
所詮レプリカなんてものは「見た目が同じの別人」なのだ。

ルーク様の場合、本来気にしなくていい事を周りの環境が、人物が、世界がルーク様を否定したせいであんなにも思い詰めなくてはいけない事態に陥ってしまったのだ(そうでなければ齢7つの子供が死に場所を求めて世界を救うことなどなかったのに)(世界を救った子供が救った世界を見られないなんてこと、あっていいはずがない)


『どうだっていいんだよねえ、そんなもん』

「どうだっていいってお前…!」


声だけで怒りが伝わる。
けれども、それこそどうだっていい。


『ルーク様はルーク様以外の何者でもありません』


愚かなレプリカルークでも、日溜まりを奪ったものでも、罪人でも。
それこそ、"ルーク"の代わりでもなんでもない。


『気持ち悪いわけないじゃないですか。この私が一目惚れするくらい可愛いんですから』


真っ黒い鎌をブレスレットに戻して綺麗な翠の目を見つめれば、ワンテンポ遅れてルーク様の頬は真っ赤に染まった。



(そんな初さもぐっじょぶです!)



「ところでアクルのそのでかい鎌ってコンタミネーションでしまってんの?」

『コンタミネーション?…とはなんですかルーク様』

「……説明の前に敬語外してもらいたいな」



***
誰得小咄ww
続くよ\(^o^)/
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