−−見えなかった未来。見え始めた未来。
優子side
『聞いてたんならわかるよね。嫌いになってよ。あたし最悪だったでしょ。好きでもない男と寝れんだよ。』
『ゆうちゃんが望んだことじゃない』
『でも事実。あたしはこうやって陽菜を泣かすことしかできないよ』
『それでもいいよ』
そんな風に目を見ないで
小嶋さんの芯の強さには毎回驚く
普段ぼーっとしてるのにこんなときだけずるいでしょ
『よくは、ないでしょ…』
『ゆうちゃんがいればそれでいい。』
いいわけない
あたしなんかのなにがいいの
『男と寝たとか陽菜を傷つけないためにしたことだよね。ゆうちゃんはいつもそう。自分が傷ついて陽菜を守ってくれるでしょ?』
強く、純粋な瞳で見つめられて陽菜の気持ちが伝わってくる
声を出そうにも出てこない
『ゆうちゃんがずっと陽菜を避けるなんて無理だよ。がまんとかできないじゃん』
そうなんだけど
『あ〜あ指原よりへたれだ〜』
笑いながら眉毛を触られた
下がってるんだね
『一人で勝手に進まないで。そうゆうとこずるい。ゆうちゃんだけの問題じゃない。陽菜の中じゃ二人の問題なの』
なにも言わないならずっと帰らないからね?
あ、てゆか今日泊まるんだった〜って当たり前のように言う陽菜
『待ってよ。勝手すぎる。あたしなにも言ってない。』
『ゆうちゃんがなにも言わないから陽菜一生懸命話してんじゃんか』
『い、やそうだけど…』
それでもなにも言えない自分に嫌気がさす。ほんとは答えなんて決まってて、でもそれを伝えるのが怖いだけで
陽菜の首に回された手があたしの頬に触れて
『そうやってさ素直に泣けばいいじゃん。陽菜じゃ頼りない?』
頼りなくなんてあるはずない
ただ泣いていることにも気がつかないほどあたしに余裕がなかっただけだから
『っ、』
本音を言っていい?
『そばにいたいっあたし、あたしはっ陽菜が好き』
『…いっしょだ』
優しく微笑んだ陽菜の胸に顔を押し付けて泣いた
あたしは初めて陽菜に弱みを見せた
『よしよし。がんばったね〜すごいねっ』
『う、あはっあたし子供?』
『おっきい幼稚園児』
その手はあまりにも暖かくてあたしの汚い心が浄化されていく
どうしよう〜陽菜どんなゆうちゃんもすき。ばかかなあ?って首に巻き付いてくるかわいいやつ
−−優子宅
優子side
あたしの気持ちをかき乱すのはいつもこの白猫だな。
あたしにぐって近づいて手を握って眠られて。
陽菜の匂いをかいだらどうして全てのことがどーでもよくなるんだろ。
小嶋さんはほんとに来た。やっぱり言い訳をして帰ろうかと思ったけど楽屋でまた手を握られて、帰ろっかゆうちゃん。そんなこと言われたらあたしは断るなんて無理で。
一生この手を離したくない。そんな独占欲の塊を胸に抱きながらタクシーに乗った。
で、今に至るわけだけど。
あたしは大変困ってる。
あたしの膝に乗ったこの人は首に手を回してじっと見つめられて。さっきなんて小嶋さんからちゅうされた。
『どうした?』
『なにがー?』
『いや、おかしいでしょ〜』
『だからなにが』
『この体勢とちゅう…』
『ゆうちゃんがいっつもやってることじゃんか』
『あたしはいいの!小嶋さんはだめでしょ』
『なんで陽菜はだめなの?』
『それはっなんかさ、あたしがやったらおふざけだけど、小嶋さんがやったらリアルじゃん!』
『ゆうちゃんはおふざけなんだ。』
『お、ふざけだよ?』
『じゃー陽菜特別じゃないんだ。好きじゃないんだ。こじぱ命じゃないんだ』
陽菜の言葉は遠慮なくあたしに降りそそぎ。チクチクなんてかわいいもんじゃないよ。グッサグサに刺さる。
『ゆうちゃんの嘘つき。嘘つききらい』
唇を尖らせて少しだけ目に涙をためてぷいっと顔を背けられた。
なんだよなんだよ。あたしの気持ちも知らないでさ。みんな言いたい放題いいやがって。
……それでもあたしは
『陽菜だってそろそろ大人でしょ。あたしに好きって言われて喜んでないで将来のこと考えないと』
陽菜のためなら生涯嘘つきにでもなってやる。
『いるもん。』
『ん?』
『ずっと一緒にいたい人。将来ちゃんと考えてる』
『あー…そうなんだ。だれだれ〜!?教えてよ!』
いつの間にか、いや最初からか。陽菜にはあたしは必要ないんだね。想像よりきついな…
『教えない。』
『えー?』
『嘘つきゆうちゃんには教えないもん』
こつんとおでこをつけられてちゅうしていい?なんて意味不明な展開にあたしはつい笑った。
『それいま?』『うん。してい?』
『だーめ。好きな人にするものです』
『…わかった』
首に回された手の力が強まって、ちゅっと音が鳴る。
全然わかってないんですけど。
−−逃がさないもん。
陽菜side
衝撃的な話しを聞いたあと2人が戻ったあとに陽菜も何気なく戻る。
誰かに話したら泣いちゃうぐらいつらいならその誰かは陽菜がよかったな。
楽屋に戻ると布団にごろんってしてるゆうちゃんとあっちゃんにデレデレしてるまりちゃん。
…まりちゃんだって十分浮気性。てゆか優子は浮気性じゃないし。陽菜にぞっこんらぶだし。
もちろん陽菜が向かうのはゆうちゃんのとこ。
『寝てるのー?』
『………』
『こらゆうちゃーん』
『えっ?ああこじぱ。』
『陽菜も寝よっかな』
『おいで』
全然眠くないけど、ゆうちゃんだって全然眠くなさそうだから2人でごろん。
『さっきまでいなかった』
『ん?あはっ。ちょっとね呼び出しくらってました!』
おーしまさんはしばかれてましたよ小嶋さん!
ゆうちゃんが大きな声出すときって自分の気持ち隠すのに必死なときだよね。
『じゃー陽菜もしばく』
『えー!あたしみんなのしばかれ役!?きゃー!』
でも小嶋さんにならいいか〜いやんSこじぱ♪痛いのはやめてね?
しばくってそっち系?別にそっちでもいいけど、そういえば男に触られてるんだった。
いらいらと切なさが入り混じって泣きそうになったけどゆうちゃんはもっと泣きたいはずだから。
『今日ゆうちゃん家いくから』
『え?今日…今日はあたし』
『だーめ。陽菜がいくって決めたの』
『あ、…はい』
いっぱい泣いていいんだよ。
ゆうちゃんが逃げるなら陽菜が逃がさない。
ハの字眉毛になっちゃってるこのばかを少しでも安心させたくて
『寝るから起こしてね』
小さな手を握って眠った。
−−AKBの最年長はやっぱりすごいよ
優子side
まりちゃんに話したあたしの全て。AKBの大島優子が実はこんな人間だってファンのみんなが知ったらあたし命ないんじゃないかな。
『実はさ』
もうまりちゃんと仲良く出来ないかもなって思う。なに言われんだろな。
『わたしニャロに告白したんだよね』
『え!?』
予想外の台詞に驚きを隠せない。まさか付き合いましたの報告だった?
『AKB入る前はそれなりに女の子にももてたんだよ〜。泣きながら篠田を好きだって言ってくる子とかいたんだよ?かわいいよね』
『まりちゃんもてそうだもん』
『まあね。んでニャロは絶世の美女じゃん。てこずるかと思ったけど意外と自信はあったわけで』
『うわーお。さすが』
あたしには考えらんないな。陽菜にだけは自信なんて感情は生まれない。
『ははっ。でもまあ…初めてですよ。ばっさり振られたの』
『………』
振られたんだ、まりちゃんが振られたら誰が小嶋さんを幸せにしてあげれるだろう。
『ニャロの気持ちはわかってたけど、変態おやじみたいなアイドルで誰にも優しくしちゃう浮気性のどこがいんだと思ったけど』
『………』
『ゆっぴーのいいとこもいっぱい知ってるからさ。』
まりちゃん、なにが言いたいの。
『今日はゆっぴーがどんだけニャロを思ってるか確かめにきたわけ。負け犬の最後のあがき』
なにが言いたいの。
『わたしはニャロのために自分の人生かけれないわ。一生自分が苦しんでもいいから幸せになってほしいなんて思えない』
『………』
『ゆっぴーには勝てないわ。篠田は納得です!』
『あたしは』
『ゆっぴーはさ、自分を責めすぎ。いっぱい頑張ってAKBも引っ張ってそれで自分が壊れていいなんてばかみたいないいやつすぎ』
『違うよ』
『ニャロはゆっぴーのためなら一緒に壊れてくれるよ。あーてゆかニャロがいたら壊れないならもはや一緒にいるしかないか』
−−どんな優子も陽菜は知りたい。
陽菜side
『優子はさ、ニャロのことどうする気?』
『え?どうするってどうゆうこと』
まりちゃんとゆうちゃんが2人で楽屋を出ていったから陽菜はこの前のこともあって追いかけた。
人気の少ない廊下のベンチに座って話の内容はやっぱり陽菜。
『どう思ってるとかは聞かないから。好きなのはわかってるからそれをこれからどうするのかってこと』
いつものおふざけ麻里子じゃなくて今日はしっかりと26歳。
これって聞いていいのかな…
そう思ったけどゆうちゃんが陽菜に対して思ってることはどんなことでも知っておきたい。
むしろ堂々と聞くことにした。
『……どうするもなにも。あたしと小嶋さんはメンバーだよ。たとえ卒業したって関係は変わらない』
『そんなこと聞きたいんじゃないんだよね。篠田は優子の本音が知りたい。聞くまで動かない』
まりちゃんの本気度はすごくて思わず陽菜まで責められてる気分になる。
ゆうちゃんは…
『…まりちゃんはさ、なんだかんだすごいよね。あたしとは比べものにならないよ。』『どーも』
『言えばいんだね。どん引きしても知らないよ』
どうしよう。陽菜ばれてないよね?ここでばれたら2人の顔がどうなるか想像ついて怖い。
『ふー。あたしは陽菜が好きだよ。好きとか大好きとか愛してるとかそんな言葉じゃ伝えきれないほど想ってる』
ゆうちゃん…
『この想いが届いてほしいと思うけど、届かないで消えてなくなっちまえとも思う』
『………』
『あたしってさーほんとどうしようもないやつでさー。あ〜まりちゃんに嫌われるのやだなあ。』
『嫌わないよ。』
『わかんないじゃん。ほんとのあたしはどす黒い。心の奥にきったない感情があんの。陽菜とは正反対。AKBの大島優子、女優の大島優子、家にいるときの大島優子。どれがあたしかわかんなくなっちゃった』
『………』
『でもね、陽菜のそばにいるとそーゆーのぜ〜んぶどうでもよくなって、この人のそばにいたいなって本気で思う』
『………』
『でもね…大切すぎるんだよ。あたしの人生に陽菜を巻き込みたくない。あたしはもし陽菜と心が通じ合ったら一生陽菜を離してあげられないと思う』
『一生離さなきゃいいじゃん』
『幸せにできるならそうしてる。うん。…あたしは陽菜が欲しくてたまらないから壊してしまうと思うんだ』『壊す?』