現パロ。
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 朝になると、冷たい空気に目が覚めるようになった。
 まだ光が夜の気配を押し退けきらない早朝。
 日当たりのいい縁側は、ようやく昇ってきた太陽にうっすらと照らされ、暖かな色を帯びていた。
 俺は崖に面した勝手口に積んだ灯油を、砂浜へ運んだ。
 次いで、ロープで頑丈に縛られた布の固まりを。
 それは、奴が視界の内に入れるのを避けながらも、その存在を消し去ることを今の今まで許さなかったものだ。

 灰色の砂の上で、炎は様々な証であるものを燃やし尽くそうとしている。
 海風が匂いを薄めてくれることに、俺は安堵していた。
 背後から近づく気配に気付きながらも振り向かずにいると、左肩から腕にかけ、ひとの重みと体温が伝わった。
 淡い色彩の髪が、視界の端で揺れる。
 僅かに首を動かしその表情を窺うと、長い睫毛に陰る碧眼は、揺らめく炎と煙に縫い止められたように動かない。
 潮騒と海鳥の声と火の爆ぜる音だけが、ひんやりとした大気に満ちる。
 目の前の炎が消えるまで、俺達は無言で肩を寄せ合い、その光景を眺めていた。