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【全てが滅ぶその前に】男女編

二回目にして、ドラゴン設定がいかされない話になってきたような…。
残念ながら思ったままに書いているだけなので、キャラクターのやりとりだけ生暖かい目で読んでいただければと。
画像らくがきは、ロキ。


話題:連載創作小説



白い鳩が窓の格子にやってきた時、私は目を覚ました。
鳩は語りかけてきた。
今の人間界は天候がはちゃめちゃで不作が続いているらしい。
一週間かんかん照りになって作物が干からびたかと思いきや、次の週はどしゃ降りの雨が続いて畑がダメになっているとか。
原因は…まぁ、私なのだが。

「坊主、どうすんだ?」

「ご迷惑おかけして、申し訳ありません。
妹だけでは管理できませんでしたか」

「そのようだなぁ。
困った兄妹だ。まったく」
「お返しする言葉もありません」

ドラゴンである自分が小さな鳩に頭を下げる図は、はたから見れば可笑しなことだろう。
だが、この鳩…ロキさまは最高神の義兄弟にあたり、私をドラゴンにしてくれた方だ。
本来は鳩の姿ではなく、人型の神である。

「人質のくせに自由だなぁ」

そう、私と妹は父と共に、神同士の戦争を終わらせるため、敵である最高神の下に和解の形として人質となったのだ。
再び終わりのない争いを始めたくはない…が。

「こんな事態に陥るとは思わず」

不覚。
がくりと肩を下げると、ロキさまは小さなため息をついた。

「俺だって、ドラゴンにしたからにはもっといろんな場所で話題を作ってくれると思っていたさ。
それが、これだ。
闘技場で暴れるだけなんて、なんて低俗な…。
ドラゴンの意味ないし」

「牽制の意は失っていないかと」

「違うもの牽制してたら意味ないだろう。
とりあえず、ここからお前を出す手筈を整える。
それまで闘技場仲間と仲良くしておけ」

「はい…」

畑を潤す為に最高神が私を呼んでいるわけなのだが、兄妹の勝手な都合により参上できない始末である。
ちなみに、私はこの闘技場にいるグラディエーター達と境遇が違う。
まさかドラゴンにまでなって人間に劣るわけがなかろう。はっはっはぁ…つまり勝ち続けてお金を払えば自由になれるわけではないのだ。
誓約のもと、ここにいる。それをどうにかしない限り永遠にここにいなくてはいけない。

「もう寝よう。
頭を使うのはあまり得意ではない。
ロキさまが何とかしてくれるだろう」

明日は新たな雇い主がついて、檻の場所も変わるというし、早く寝て忙しさに備えよう。
体を丸めて尻尾で顔を隠し、ゆっくり眠りの世界へ落ちて行く。

『お休みなさい、フレイさま』

「あぁ、お休み妖精達」


ふわりと光の妖精達が去っていくと、私の意識も去っていった。








「二人は隣同士の檻だ。
どちらも稼ぎ頭だから、くれぐれも喧嘩するなよ」

昨日、最高神に呼び出された事に驚いていたわけだが、今日も同じくらいのサプライズがやってきた。

「巨人の隣…」

「ドラゴンが同僚!やったー!」

巨人の娘がなぜか喜んでいる。
だが、私は喜べるはずもない。巨人は昔から神族の天敵だ。
こいつらは野蛮で狂暴で知性に乏しい。絶対に関わりたくない。
巨人族も我らを目の敵にしているはずだが、この娘は私を本物のドラゴンであると思っているようだ。


「私はゲルト。
あんたは?」

「…ユングヴィだ」

知性溢れる神族として名乗るだけはしておいてやる。仕事名である『フレイ』というと知れ渡った名であろうから、本名にしておいた。
神族とばれたら面倒そうだからな。

「ユングヴィ、これから宜しく」

屈託のない笑顔とは、こういうものの事を言うのだろうか。
ふん、頭がすっからかんだから清々しい笑顔でいられるのだ。そうに違いない。






「やぁ、お嬢ちゃん。
仕事ははかどっているかな?」

白い宮殿の窓に降り立った鳩は、机に向かって作業をしている女性に声をかけた。
彼女は、黄金のように光輝く美しい髪を揺らし、陶磁器のようなすべやかな頬を窓際に向けた。
鳩に向ける金色の瞳は誰をも魅了する光を…称えているはずが、今は血走っている。

「ロキ!
お兄様はちゃんと闘技場から連れ出せそうなの?」

「まぁね。
もう手は打ってきた。
君が誓約を破って、愛人の仕事をしなくてもなんとかなりそうだよ」

ふわりと風が吹き、鳩が黒髪の青年に変わると、女性を見下ろすように窓枠に突っ立った。
一見、台詞は安堵する内容に思えるが、彼女にとってはその仕草と台詞は、ギリッと歯を食いしばりたくなるようなものだった。

「どうせ私は最高神の命令で当分動けないわよ!
それを笑いに来たわけ?
上手くいってるならいちいち来ないでちょうだい!」

「おぉ、怖い怖い。
こんな顔を見たら、愛人達も寄り付かなくなるだろうな」

「それを言うなら、あなたのその、人をいじくる性格が知られたら床を共にしてくれる女性はいなくなるでしょうね!」

「俺はその点も気に入られて戯れている。
お嬢ちゃんはお子ちゃまだからわからないかなぁ」

「なんですってぇぇ」


低俗とはこんな言い争いを言うのでは…と突っ込む者はいなかったが、代わりに乱入してきたおじさんが一人。

「フレイアちゃん、太陽と雨の管理表はまだ出来上がらないのかな!!畑が潤うまで遊びに行かせないからね!
ロキはこんなところで油売ってないで、早くフレイを連れ帰って来い!ドラゴンとか余計な姿にしたのお前じゃん!」

おじさんが杖を一振りすると、二人の頭上にゴンゴン!とタライが落ちてきた。
若干ロキのタライの方が大きいのは見間違いではない。
痛みに悶えたが、二人は(これでも)最高神に反論するわけにもいかず、目線だけで『けっ、あばよ!』と交わすとそれぞれの仕事に戻っていった。
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