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お前にはやらない(土、篠→鴨)

「…けほっ…けほ………」

「伊東先生、大丈夫ですか」


自室で横になる鴨太郎を篠原が覗き込む。

鴨太郎の頬は赤く染まり、額やこめかみにはうっすらと汗が浮かんでいる。

風邪をひいて寝込んだのだ。


「根の詰め過ぎです。三日連続で徹夜など…」

「…はぁ…何も言い返せ、ないよ…」


苦しそうに胸を上下させ、呼吸をする。

篠原は軽くため息をついた。


「先生は真選組の参謀なのです。もう少し自覚を持って頂かないと」


桶の水でタオルを絞り、鴨太郎の額にのせる。

心配そうに揺らぐ瞳が鴨太郎を捉える。


「先生お一人のお身体ではないんですよ」


そっと髪の毛に触れる篠原の手。


「……ん…」


その手の感触が気持ち良くて、そっと目を閉じる。


「…ありがとう…、しのはらくん…」


苦しさの中、嬉しそうに僅かに目を細める。


「先生の部下として、当たり前のことを申したまでです」


テキパキと看病する彼の横顔をしばらく見つめる。


あぁ…しのはらくんは優しいな……


ぼんやりとそんなことを考える。





「そういえば先生、風邪は汗をかくと治るといいますよね」


「……ぇ?」


突然自分の目の前が黒に支配される。

篠原が自分にのしかかってきたのだと理解するまで、数秒を有した。


「…しのはらく……?」

「俺と汗、かいてみませんか?」


目の前の篠原の顔が楽しげに歪んだ。






コンコンッ


篠原の手が鴨太郎の着流しにかかろうとしたちょうどそのとき、


「…邪魔するぜ」


こちらの返事を待たず襖が開けられた。


「……ひじ、かた…くん…」


眉間にシワを寄せた土方が鴨太郎の室内に入ってくる。

鴨太郎の様子を見に来たのだろうが、随分と機嫌が悪い。


「どうだ?鴨太郎の体調は…」


心の中で舌打ちをすると、篠原は仕方なく鴨太郎から退いた。


「……えぇ。まだ熱が高いので、絶対安静ですね」


何事もなかったように振る舞い、片付けをして立ち上がる。

土方はそんな篠原を立ったまま睨み付ける。


「では、薬をお持ちしますので、一度失礼します」

「………あぁ」


一礼し、土方の隣を通り越す。


「……篠原」


土方が篠原を呼び止めた。


「………何でしょう」


振り向かず、襖に手をかけたまま答えた。


「…テメェ…、今鴨太郎に何してやがった」


怒りを声に露わにして篠原に問い掛ける。


「…別に、伊東先生の看病をさせて頂いていただけです」


背中越しにも分かる、土方からの鋭い視線。

きつく自分に突き刺さる。


「…何か問題でも…?」

「…テメェ、」

「貴方も、俺と同じ気持ちなんでしょう?土方副長」


土方からの殺気が更に強くなる。

歯軋りの音がする。




僅かな沈黙を、小さな舌打ちが断ち切った。


「…テメェにだけは渡さねぇよ」


吐き捨てる土方の言葉を背に聞き、篠原はそっと部屋を出た。





「それは俺の台詞ですよ」




小さく呟いた彼の声は誰にも届かず闇に消えた。





************

風邪をひいた鴨太郎と看病する篠原くん。
看病してる隙に鴨太郎を襲おうとしたりとか柊の篠原くんはかなりの腹黒^^
それが心配で土方は鴨太郎の元へ様子を見に来たら案の定、みたいな。
鴨太郎は全く気付いてない(笑)

ちなみにこのときは鴨太郎はまだ誰のモノにもなっていません。
土→鴨←篠、みたいな感じです。
モテモテ鴨太郎(^p^)

ハッピーバレンタイン・後編(土鴨)

馬鹿だ。

馬鹿だ。

僕は馬鹿だ。


こんなこと、少し考えれば分かっていた筈なのに。

僕は馬鹿だ。



世の中の女性達が十四郎を放っておく筈がない。

十四郎だって、女性達から貰った方が嬉しいに決まってる。


始めから分かりきっていたことなのに、

僕は馬鹿だ。




自室の畳へと膝をつき、鴨太郎は涙を流した。


悔しかった。

悲しかった。

寂しかった。



土方が貰っていた、山のようなチョコレート。

綺麗にラッピングされた包み。

美しいパッケージ。

きっと土方への気持ちが込められているのだろう。



それに比べて自分のチョコレートは

不器用なラッピングに

気の利かないリボンの巻き方。



そのどれを取っても、足元にも及ばない。



自分が情けない。

こんなモノで彼が喜んでくれる筈がない。

僕は馬鹿だ……



見つめたチョコレートの箱をゴミ箱に捨てようとしたとき、



「鴨太郎、何やってんだよ」



不意に頭上から土方の声が降って来た。


「…十四郎…」


どうして


視線で問えば


「お前からバレンタインのチョコ貰いに来た」


当たり前のように言ってのけた。


「まだ貰ってなかっただろ」

「何……、用意してないって、」

「じゃあコレは何だよ」


土方は鴨太郎が後ろに隠したチョコレートを取り上げる。


「!!!ぁっ……」


それは、


「か、かえしてっ」


鴨太郎が土方の手のチョコレートを取り返そうとするが、土方はそれをヒョイとかわす。


「なんでっ…かえしてよっ…」

「やーだね。コレは俺のだ」


半泣きになりながら必死に取り返そうとするが、無駄に終わる。

土方はお構いなしにリボンを解き、包みを開けた。


「やっ……」


包みの中には、鴨太郎らしく几帳面に丸められたトリュフチョコレートが入っていた。


「…すげぇ……」

「かえしてっ…お願いだから」


感嘆を漏らす土方の手からチョコレートを奪い返し、俯いてしまう。


「何でだよ…そのチョコレートは俺の為に作ってくれたんだろ」

「ち、ちがうよっ…」

「じゃあ誰に渡すつもりだったんだ」

「……っ…それは…」


土方に威圧感のある瞳で見つめられ、言葉に詰まってしまう。


カッコ悪い。

恥ずかしい。

たくさんのチョコレートを見て嫉妬してただなんて。


どうやって言えば彼は許してくれるんだろう。



「お前、大方俺がチョコレート貰ってるの見て妬いてたんだろ」

「っ…」


ビクリと肩が跳ねる。


見透かされてる……十四郎は僕のこと何でもお見通しだな…


「あのな鴨太郎、俺はあのチョコレート、ひとつだって喰う気はねぇよ」


ため息混じりに呆れたように言う。


「俺は、心から好きなヤツからしか、鴨太郎からしか受け取らねぇ」

「…!………」


真っ直ぐと鴨太郎を見つめる。

ぎゅうっと心臓が締め付けられる感覚になる。

土方の本気の目。


「っ…駄目だよ…、僕のなんか全然綺麗じゃないし…、きっと美味しくない…」

「うるせぇ、お前が何と言おうと俺はお前からしか受け取らねぇって決めてんだよ」

「…でも、」

「いいから。…お前の気持ち、俺にくれよ」


土方の鴨太郎を見つめる目が、優しく色を帯びる。


「……、…うん…」


その優しさが心に染みて、自然と涙が零れた。


「泣くなよ」


苦笑した彼に向き直り、素直にチョコレートを差し出す。


「綺麗じゃないし、美味しく出来てないと思う。…でも、僕からの気持ち、受け取ってもらえますか…?」


今の気持ちを精一杯彼に伝えた。


「有り難く頂戴するぜ、鴨太郎」


チョコレートを受け取る彼の表情はとても幸せそうだ。


「すげぇ嬉しいよ」


土方は再び包みを開け、中のチョコレートを見つめる。


「綺麗に作ったな…さすが鴨太郎だ」

「そっそんなの誰にだって作れるよ…」

「いいや、お前にしか作れねぇよ」


ふ、と土方が笑う。

鴨太郎の頬にますます朱が走る。


「喰ってみてもいいか…?」

「十四郎にあげたんだから…好きなようにしていいよ」


鴨太郎がそう言うのを聞いてから、包みの中のチョコレートをひとつ頬張る。

豊満な甘さと香り、ほのかな苦味が口内に広がる。

そして………


「コレって…………マヨネーズ、か?」


びっくりしたような表情の土方を見て、鴨太郎が僅かに微笑む。


「うん……十四郎、マヨネーズ好きだから…」


チョコレートに入れるのはどうかなって思ってたんだけど、と照れて笑う鴨太郎を渾身の力を込めて抱きしめる。


「っ!?と、十四郎?」

「すげぇ、美味い。嬉しい。ありがとうな、鴨太郎」


ぎゅうっと抱きしめる腕と広い胸から、彼の体温と鼓動が感じる。

とても幸せな時間。


この時間がずっと続けばいいのに、


そう思う鴨太郎の耳元に、


「ホワイトデーは10倍返し、な」


幸せいっぱいの土方がそう言った。




*********

うわぁあんこんなのでごめんなさい!

ギリギリバレンタイン間に合った……

書きたいことがまとまらずに苦戦しておりました。


本文を補足しますと、鴨太郎は基本的に何でもできます。

お料理でもお裁縫でも。

ラッピングも綺麗にしてます。

ただ自分と他人のと比べているので悪く見えるだけで、客観的に見れば完璧です(笑)


これからも精進します!!←←


読んでくださってありがとうございました!!

ハッピーバレンタイン・前編(土鴨)

「まだかな……」


自室で書類整理をしながら、鴨太郎はため息を吐いた。

先程から何度ため息を吐いただろう。

心が落ち着かない。

書類も手につかない。

気がかりな気持ちに耐えられず、再びため息をつく。


不安げな瞳はその先の綺麗にラッピングされたチョコレートへと向けられる。

昨日の夜中、みんなが寝静まった頃に作った、彼へのチョコレート。

彼に喜んで欲しいという一心で作ったもの。


「喜んで、くれるといいな…」


チョコレートを手に取り見つめて、見回りに行った彼の帰りを待つ。





バタンッ


「!!!」


不意に玄関先で音がする。


「十四郎……?」


ポツリと小さく呟けば、


「おーい、帰ったぞオメーらッ」


玄関先から土方の声が屯所内に響き渡った。


「!十四郎…!」


土方の声に鴨太郎の心臓も飛び跳ねる。

チョコレートを持つ手が震える。


「っ、よしっ…」


覚悟を決め、部屋から出る。

土方がいる玄関先へと向かう。


「ぉ、お帰りなさいっ、十四郎」

「!鴨、…ただいま」


鴨太郎の姿を見て表情を和らげる土方。

幸せそうに微笑む。


「見回りお疲れ様…」

「あぁ、サンキュな」


玄関に上がり、んーっと伸びをする。

渡すなら今しかない。


「ね、ねぇ十四郎、今部屋に行ってもいい…?」

「…あー…、…いいけど、すげぇ散らかってるぜ…?」

「…?うん、別に――――」


大丈夫だけど。

そう言おうとしたとき、


「副長ー、これ何処に置けばいいですかー!?」


山崎の土方を呼ぶ声と重なった。

振り向くと、色とりどりの箱が山のように入った大きなダンボールを抱える山崎の姿。


「…!!!」


それを見て鴨太郎は動きを止める。


「はぁ…、…適当なとこに置いとけ」

「じゃあ、また副長の部屋にでも置いときますね」


そう言って山崎が去っていく。


「…十四郎…、今のって……」


聞きたくない。

でも聞かずにはいられない。


「…あー、その………一応バレンタインってヤツの贈り物らしいぜ…?」


躊躇いながら土方が答える。




……やっぱり。




心の中でそう呟く。




「けど俺は好きでもねぇヤツから貰っても嬉しくねぇし…」


震える唇をギュッと噛む。

心が挫けそうになる。


「こういうのって、やっぱり好きなヤツから貰わねぇと、な?」


僕にそんなに気を遣わないで。


土方の気遣いが凍みて、とっさにチョコレートを隠してしまう。


「世の女性達はすごいね。す、好きな人のために贈り物をするなんて」


言葉がどもる。

声だけでなく、身体も震える。


「生憎僕はそういうイベントに慣れていないから、何も用意出来なかったよ」


精一杯、笑ったつもりだ。


「…鴨太郎、」

「すまない。来年はちゃんと用意しておく、から…」


土方の言葉を遮り、くるりと踵を返す。

最後の方はちゃんと言葉に出来なかった。


「ちょ、おい、」


土方の制止を聞かず、そのまま足早に自室へと戻った。




後編へ…


***********

すみませんすみません

直ぐに続きアップします


なるべく今日中に……!←←

きみとふたりで(土鴨)



寒い寒い、冬の季節。



手足がしんしんと冷えて、ジンジンする。


屯所の自室で火鉢に手をかざしながら、外を見る。


きっと今日は雪が降る。


ふとそんなことを思うと、


「今日は雪が降りそうだな」


隣にいた君もそう言ってくれて、


君と僕は同じ気持ちなんだと思えて、


何だかとても嬉しくなる。


僕は幸せ者だな…


きっと今一生分の幸せを使っているんだ。


両親の愛を知らない僕は、時たまそういう気持ちになる。


そう素直に告げれば君は一瞬目をパチパチして、笑って、


「それが普通なんだよ」


と言って僕の頭を撫でてくれた。


嬉しくて、


その手があったかくて、


何だか胸の辺りがぽかぽかしてくる。




日曜日の午後、寒さが少し和らいだ瞬間だった。




by鴨太郎
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