2011-1-14 00:32
「おめでとう」
『おめでとうございます!!!』
“おめでとうございやす”
[おめでとうございます]
《おめでとうございますー!》
{おめでとうでござる}
【おめっとさん】
〔めでたいアル!〕
〈おめでとうございます!〉
12月13日、午前0時。
溜まった書類と報告書を片付けていた僕の耳に、携帯の音が届いた。
次々に届けられるメール。
いろんな人から送られてくる、お祝いの言葉。
こんなにたくさんの人たちからの祝辞を、僕は未だかつてもらったことがない。
幕府の用事で出張中の疲れた僕の心に、みんなの温かい言葉がじんわりと染み込んでいく。
優しさに包まれる。
たくさんの人達に祝福されて、僕は幸せ者だな……
――――けれど、
いくら待っても、“彼”からのメールが来ない。
僕はその夜、なかなか眠りにつくことができなかった。
13日、夜23時。
(やっぱり、覚えている筈ない……よね)
仕事を終え自室へと戻り、携帯を見て、ため息をつく。
結局今日“彼”からの連絡はなかった。
(付き合っているといっても、まだ少しだし)
(彼も僕も仕事がある)
(彼にだって生活があるし)
(そもそも僕にとって誕生日なんてあってないようなもの…)
(彼にはたくさん迷惑をかけたし…今だって、きっと…、)
近くにあった座布団を引き寄せ、壁を背にして座る。
疲れているせいか、どうしても悪いことを考えてしまう。
力なく座り込み、携帯を見る。
携帯には先程と同じ画面のまま、誰からも連絡はきていない。
「……ふぅ」
出てくるのは、やはりため息ばかり。
彼は今、何をしているのだろう。
風邪を引いていなければいいな…
マヨネーズの食べ過ぎでお腹を壊していなければいいけど。
そんなことを思いながら、心の底に僅かに残った寂しさを振り払って。
「……十四郎、」
窓の外の夜空を見上げながら、“彼”の名前を呟いた。
「――――呼んだか?鴨太郎」
瞬間、庭から聞こえてきた聞き覚えのある声。
驚いて庭に目を移せば、草木を掻き分けて現れる漆黒の影がひとつ。
近付いてくる影が、月明かりで照らされる。
――――聞き間違いじゃなかった。
「なんとか間に合って良かったぜ」
その人物は、愛おしむように、愛深いように、優しく僕を見つめて微笑んでいた。
「………どうして…、」
驚きのあまり声が出ない僕を優しい目で見つめて、
「会いに来たんだよ」
そのまま、ゆっくりと縁側に座る。
「今日はお前の誕生日だからな」
そう言って得意げに笑い、僕を見上げる。
悪戯っ子のような彼の顔を見て思わず、嬉しいような、困ったような笑顔を浮かべてしまう。
「遅くなっちまって、悪い」
「…忘れられてると思ったよ」
僕も彼の隣へと腰掛け、視線を交えさせる。
「そんなこと、ある訳ねぇだろ!」
当たり前のように言って僕を抱き寄せてくれる彼は、やっぱり優しくて。
「…でも、会いたかった」
抱き寄せられた勢いに乗せて彼の肩に寄り掛かり、自分の気持ちを素直に表す。
「…あぁ、俺もだ」
さりげなく手を握りしめ、彼がそう呟く。
彼の温もりが掌から伝わってくる。
「…どうして、連絡くれなかったの…?」
恨めしい気持ちも少し込めて、彼を見上げながら問い掛けると、
「お前にやきもきして欲しかったから」
何とも簡単で憎らしい答えが返ってきた。
「…意地悪」
「お前限定でな」
こんな些細なやり取りにも嬉しく思うなんて、僕はよっぽど彼を欲していたんだなぁと思う。
「……鴨太郎」
「…とうしろう…、」
握りしめた手に互いに力を込めて。
「誕生日、おめでとう」
「…ありがとう、十四郎」
僕の人生で一番温かな誕生日は、こうして過ぎていった。
END
おまけ↓
鴨「そういえば十四郎、どうやって此処に入って来たの?」
土「んあ?」
鴨「だって此処、幕府管轄の宿舎だから…」
土「あぁ、それなら上様に『厠貸してくれ』って言ったらあっさり入れてくれたぜ?」
鴨「………(上様……)」
終
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ようやく書き上げました鴨誕小説です…!
遅くなってしまい大変申し訳ございませんでした!!
小説書くの自体久しぶりで上手く文章をまとめられず…orz
こんな継ぎ接ぎだらけの文章ですがお許しください…
ちなみに冒頭のいろいろな鍵カッコで括られたおめでとうは各キャラから鴨太郎へのお祝いメールです。
上から順番に鷹久、勲、総悟、篠原、山崎、万斉、銀さん、神楽、新八です。
万斉と神楽以外全然分からない…(T∀T)