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「うぅ・・・なんでボクがこんな・・・!『金』が本当に居たらどうするんだよぉ・・・居なかったにしても、自習してないのが耶馬渓先生に見つかったら、そっちのほうがコトじゃないか・・・!」
ボクは遠巻きに13階段を眺めている。ジャンケンでハメられて、肝試しにここまで来させられたのだ。けれどあんな恐ろしい話を聞いた後じゃ、ここから先へはどうにも足がすすむ気がしない。
「で、でででもあのドアノブに印をつけなきゃ証拠にならないし・・・」
意を決しソロソロと階段へ近付く・・・
と、突然ガチャリと大きな音を立てて古びたドアが開いた。
「う、うわあぁ出たぁ!」
思わず腰を抜かし、なんとか逃げようと後ずさりしていると、屋上から降りて来た男がこちらへ近づいてきた。
「ひ、ヒィッ・・・!」
「何してんの。お前1年?えーと、成幸くんか」
「ヒイィ!な、なんでボクの名前を・・!」
「名札」
「・・・あ」
少し落ち着きを取り戻したボクは、相手をまじまじと見てみる。
何故か体操服だけど、至って普通の男子生徒だ。ジャージの色からして3年生らしい。他の生徒みたいに趣味で喧嘩なんてしそうなタイプに見えない。正直ものすごくホっとした。
「お前屋上に行くの」
「えっ、あの、これは肝試しのようなもので、その」
「落ち着けって。とって食ったりしねぇから」
ケラケラと名も知らぬ先輩が笑って、ボクは自分の無様さが少し恥ずかしくなった。
「屋上はやめといた方がいいぜ。あそこにはな、こわーいお兄さんがいるからな」
「そ、それはやっぱり、き・・『金』・・・ですか・・・!?」
「・・・、」
王将は少し考えて再び口を開いた。
「いいや、『銀』だよ」
「ぎ、『銀』・・・?」
「もう居もしない『金』の意志を継ぐ、気の毒な男さ」
「えっ・・・ちょっ、それって一体・・・あっ!」
ボクの話も聞かず、その先輩は手すりを滑り下りて行ってしまった。
「とりあえずー!死にたくなかったらその扉は開くなよー!」
下の階から響く声に、ボクは裏返った声でハイと返事するしかなかった。
******
「銀っつったら現副会長だろ、生徒会の。つまり荒暮のナンバー2な」
「ひえぇ」
「・・・そいつが『金』の遺志を継いで屋上の番人をやってるってワケか」
「ら、らしいです・・・」
ボクはタマナシさんとブブゼラくんに挟まれながらしどろもどろに説明をする。
「なんにせよ最強の男『金』はもうここには居ないって事か・・・残念だったなブブゼラ」
「・・・フン」
「いやぁ、見れないとなると余計に気になっちゃいますよねぇ!伝説の最強生徒『金』と耶馬渓先生の勝負!ボク喧嘩は嫌だけど、これは一回見てみたかったなぁ」
「ハブ対マングース的な?」
「エイリアンvsプレデターみてぇな?」
「あははは」
「さーて、諸君!次の授業は日本史だ!さっさと用意をしたまえよ!」
意気揚々と耶馬渓先生が教壇に立ち、ボクはあわてて教科書を取りだす。
いつもガラガラの教室は、もちろん連れ戻された生徒でいっぱいになっていた。
******
「屋上に続くのはこの階段だけのようだ」
ズンズンと耶馬渓が階段をのぼる。
ドアに手をかけ、開く
「・・・」
不良生徒達がひしめいているさまを予想しながらドアを開けた耶馬渓は、あまりに静かでがらんどうな屋上に拍子抜けした表情を浮かべた。
「・・・ん?」
はたはたと白いシャツがはためいているのを目の端に捉える。荒暮高校の学生服だ。
「・・・これは・・・?」
耶馬渓がシャツの方へ歩を進めると、一人の男子生徒が上半身裸で座り込んでいた。両者は目があい、ギョッとする。一瞬の間が流れた。
「キャー!のび太さんのエッチ!」
生徒は突然膨らみもない胸を手で隠しながら、裏声で叫んだ。
呆気にとられて立ち尽くす耶馬渓に、生徒は「そこはちゃんとツッコめよ」と裏手を入れる真似をした。
「このシャツは君のもののようだが、何故こんな所に?」
「あぁ、さっきカレーパン食ってたら中身こぼれちまってさァ」
生徒はケタケタと笑いながら明るく喋りだす。
「カレーってシミになると目立つしめっちゃくちゃ恥ずいじゃん?『あ、コイツカレーこぼしてやんのwwwどんだけ食いしん坊だよwww』みたいになるじゃん?だから急いでそこの水道で洗ったわけよ」
「ふむ・・・」
チェーンやアクセサリー等の装飾は無く、髪は黒く短く、ズボンも靴も学校の指定通りのものを正しく着用した(上半身は裸だが)生徒。荒暮には非常に珍しい、他所で見かけても絶対気付かないような一般的な男子高校生だ。ただその『普通』のなりがここでは却って印象的にうつるのだが。
耶馬渓は成幸という前例を既に見ているため、「とんでもない不運で荒暮に入る事になった普通の生徒」が他にもいたのだな、と不思議に思う事もなかった。見た所健全な、高校生らしい明るい青年だ。学校の風紀や秩序を乱す者にはとうてい感じられなかった。
「長居をしていると授業が始まるぞ。はやく教室へ戻るように」
「おいおい俺のこのスーパーセクシーなカラダを見て女子が妊娠したらどうすんのよ・・・ってオイ!聞けよ!」
ふざけた事を言い続ける生徒を捨て置き、耶馬渓は不良生徒達を見つけるべく校内へ戻って行った。
「・・・で、・・・誰だ今のゴリマッチョ」
耶馬渓の去った後、生徒はひとり呟いた。
「会長、体操服を持ってきました」
少しおいて長ランの男が屋上へやって来た。その鋭い眼差しや身にまとうオーラは、彼が只者ではない事を語っている。そんな男が、平平凡凡としたこの生徒を『会長』と呼び、敬った様子を見せている。
「おせーよ銀!知らないオッサンに俺のスーパーセクシーボディ見られちゃったよどうすんだよ」
「風邪をひかないうちに着替えられたら良いかと思います」
バカは風邪なんてひかないんでしょうけど。と付け加えながら、銀と呼ばれた長ランの男は体操服を手渡した。
「お前まで完全にスルーしたな、俺のスーパーセクシーボディのくだり。許さん死ね」
「・・・オレ『も』、ですか?」
「あぁさっきゴリマッチョなオッサンが来てな、『授業が始まるからはやく教室戻れ』だってよ。そいつだよ俺のスーパーセクs」
「そいつは恐らく教育実習生の耶馬渓ですね」
「聞けよ」
「なんでも一カ月で荒暮を平定するとか」
「へェ。・・・で、俺のセクシーボd」
「会長の体は別にセクシーではありません。絶対に何も起きないので安心して下さい」
「ひでぇ」
「・・・で、じゃあゴリマッチョは俺を潰しに来たって事か?」
体操服に袖を通しながら、『会長』と呼ばれた生徒は訊く。
「どうでしょう。荒暮のトップに接触しに来たにも関わらずその反応だったという事がオレは気になります。一体何をしに屋上へ来たのか・・・」
「俺があんまり真面目な優等生だったから人違いしたと思ってンのかもな!」
「あぁ、なるほど」
「いやツッコめよ」
「・・・会長は校則を遵守した身なりを除けば、全くもって怠惰で自堕落な男です。よもや優等生を自称するなんて百万年早いでしょう。・・・これで満足ですか」
「う、うん・・・」
銀にまっすぐな目で事実を述べられ、『会長』はようやっと少し大人しくなった。
「あぁもう、そうではなくて。奴は会長が『金』だった頃の話だけを聞いて屋上へやって来たのかも知れません」
「あーヤメテ俺の黒歴史」
「『金』のトレードマークといえば立ち上げた金髪でしたから、ぺしゃんこの黒髪になった今の会長が『金』だとは思いもよらなかったのでしょう」
「なるほどねー。金なんて馬鹿野郎、もう皆さっさと忘れてくれればいいのにねー」
「・・・」
笑い話でもするように同意を求められ、銀は複雑な表情を浮かべた。
「オレは、生徒会長となり『王将』と呼ばれている今のあなたと同じくらい、『金』の頃のあなたが好きです。だからオレはそんな事は言って欲しくない。」
「・・・、」
王将は僅かの間言葉に詰まった。蛮勇の塊であった過去の自分を好きだと言う銀の目があまりにまっすぐで、照れくささと、そこに見える期待の重さの二つが混ざり合った形容しがたい気持ちに苛まれるのだった。
「・・・会長、もう一度あなたの力で荒暮を」
「キャーッ好きだってッ!これはおケツ隠しとかねえとな!」
ふざけた様子でヒョイヒョイと尻を隠しながら、王将は銀から距離を取る。
スカされた事に銀は何も言わない。ただ少し肩を落としているようではあった。
「・・・・・・俺はさァ、屋上でダラダラできりゃァそれでいーんだよ」
「・・・。耶馬渓がそれすら奪うとしたら?」
「ウーーーン・・・でも俺らあと半年ちょいで卒業じゃん。いいんじゃね、我慢するし」
焚きつけようとする銀と、のらりくらりとかわす王将。両者とも互いの腹の中が分かった上での、攻防のような会話だった。
「耶馬渓は相当強いらしいですよ。今までの誰よりも」
その言葉にだけピクリと王将は反応した。
「・・・へー」
「会長と唯一まともに渡り合える相手かもしれないんですよ」
「いやぁ、俺もう戦わねぇし」
「アンタ言ってましたよね退屈だと!勝敗が見えないようなタイマンを楽しめる相手が欲しいと・・・!」
「銀。しつけぇ」
王将に睨みつけられ、銀は息をのむ。
「・・・すみません」
「あーだりぃ。たまには教室行ってみっかなァ。子守唄聞きに」
バリバリと尻を掻きながら王将はドアへと向かった。
******
もう少ししたら午後の授業が始まるな、という頃に、ボクははるか頭上から声をかけられた。
「成幸くん」
「はっ、ハイ」
振り返り見上げると、耶馬渓先生がニコニコとこちらを見ていた。・・・すごい身長だなぁ。この荒暮高校には180〜200センチの大柄がざらに居るからボクは本当に猛獣の中に放り込まれたウサギか何かのような気分になる。
耶馬渓先生は4日前にうちの高校に来た教育実習生で、この秩序崩壊も甚だしい荒暮高校を一カ月で平定してみせろ、という雇用試験を受けている所らしい。普段はこうしてニコニコと笑顔で穏やかに僕らに接している(正直不気味だ)が、怒ると手がつけられないバーサーカー野郎なうえに沸点が物凄く低い。初日からちょっかいを出してきた生徒にブチギレて大暴れし、一瞬にしてクラスを凍りつかせた事もまだまだ記憶に新しい。
そんな耶馬渓先生がボクなんかに一体何の用だっていうんだろう・・・
えっ、解説乙?
・・・ありがとう。これがボクの役回りみたいなんだよね。
「荒暮の生徒のトップは誰か、そして何処に居るかを知っているかい」
ああ、おそらく先生はうちのリーダー格から潰s・・・指導していくんだな。
「うちのトップは生徒会です」
「フフフ・・・君。それは確かにどこの高校もそうだが、私が聞きたい返答とは少し違うようだね」
「あっ、いえ、本当にうちを牛耳るのは生徒会の面々なんです。主に、ですけど。学期ごとに行われる『生徒会選抜闘評』という喧嘩試合で校内最強番付が決まっていて、そのトップメンバーが荒暮を制する資格を持つ『生徒会』に君臨するんです。確か今は『王将』という3年生が会長のようですよ」
「ほぅ・・・では『王将』クンをはじめ、生徒会役員に会うには生徒会室に行けば良いのかな?」
「えーと、あの、名前は確かに『生徒会』なんですけれど、基本的に強者の代名詞というか・・。普通の学校の生徒会のように真面目に活動をしているわけではないので、殆どあそこには誰も居ません」
「そうなのか」
「ハイ。」
ぬぅん、と先生は腕を組んだ。ふっとい腕だなぁ。ウチのデカい生徒といい、一体何をして鍛えたらこんな体になるんだろう。
「・・・、では仕方ない。生徒会の件は次回にしよう。授業の5分前だというのに生徒が殆ど戻っていない。今はそいつらを連れ戻すとするか」
クルリと大きな背が向けられる。緊張がやわらいでボクは大きく息を吐き出した。・・・それにしてもバックレている不良たちを5分ちょっとでどうにか出来る、と当然のように算段しちゃうんだ・・・やっぱり怖いなこの人。
「で、彼らは何処にたまるモノなのかな成幸くん」
「わあっ」
「ン?どうしたのかね大きな声を出して」
「い、いえ・・・急に話しかけられてビックリしただけです・・・」
「そうか悪かったね」
「いえ・・・。えっと、不良っていったら屋上にいるんじゃないですかね。ボクの偏見ですけど。」
「そうか。そうだな、ありがとう成幸くん。もし私が遅れるようだったら自習をするよう指示してくれたまえ」
「はい」
「ふぅー・・・!」
びっくりした!普段は紳士的にふるまってるみたいだし、こちらが従順にしておけば問題ないみたいけど、突然何でキレるかわからないし・・・本当心臓に悪いよぉ・・・
「よぉナリ」
声をかけるがはやいか、ドカリとボクの机に座る学ランが一人・・・まぁ男子生徒は大体学ランなんだけど、この人はちょっと特別というか。
「お前ウチの屋上は聖域だって事知らねぇみてぇだな。次はどうせ自習だろ?面白い話教えてやるよ」
身なりと声が合わず違和感を覚えるこの人。タマナシさんは『心は男なんだけれど生憎体は女で生まれてきてしまった』という人らしい。顔は可愛い方だと思うのに、大股開きだし髪を刈り上げたりなんかしちゃってて勿体ないなぁと思う。怖いから言わないけど。
「タマナシさん、あの、机・・・」
遠まわしにどいて下さいと言いたくてモゴモゴしていると、今度は椅子の背もたれにドカリと衝撃を感じる。
「・・・」
そろりと振り向くと、予想通り後ろの席のブブゼラくんがボクの椅子に踵をのせていた。最近分かって来たけれど、これは話に混ぜて欲しいという意思表示のようだ。
「よぉブブゼラ、お前も聞きたいか」
「・・・フン」
ニヤリとタマナシが笑うと、ブブゼラはふてぶてしく足を組んだ。ボクの背もたれの上で。
「オレ達が入学する前の話だ・・・この学校には『金』と呼ばれる男がいたらしい。その名の通りまっキンキンの金髪をバキバキに固め上げた、意味不明に強い男だ。」
・ ・ ・ ・ ・
かつてはウチの広い屋上も、他校とたがわずワルたちのたまり場だった。・・・と言っても実質使っていたのは勢いのある4グループだ。そいつらに気圧されて弱小グループは次第に外の非常階段の方へひしめくようになった。「日影組」って奴だな。
他人の目が無くなって行ったのをいいことに屋上の奴らはテリトリーを定め、そこでヤクをキめたり女とハメたり、気に入らない奴を連れ込んで私刑を執行したりと好き勝手していたそうだ。
ある日、そこに『金』が現れた。
そいつはものの数分にして、その4グループを一掃しやがったんだと。当時『金』はまだ入学したての1年生、しかも5月の事らしい。
以降屋上は『金』たった1人のものになった。これまで屋上に居た4グループが奪還しに挑もうとしても、はたまた成り上がりを狙った日影組が奇襲をかけようとしても、屋上へ続く階段を上ったと思った直後にそいつら全員『金』に負けて転がり落ちてきた。
その階段は「死の13階段」と呼ばれ、屋上に行こうとする者はいなくなり現在に至る・・・
・ ・ ・ ・ ・
「だとよ!」
「そ、そそそうだったんですか・・・!」
「・・・どうでもいいが、耶馬渓の奴屋上に向かったんだろ?」
ブブゼラくんの発言を聞いて、ニヤニヤとタマナシさんがボクを見下ろす。
「あわわわ」
「耶馬渓、死の13階段に挑む、か・・・おいブブゼラ、耶馬渓が無事に帰ってくるか賭けようぜ!オレは帰ってくる方に5000円な」
「・・・フン。適当な事言いやがって。そんな賭けはナシだ」
「あァ?」
「『金』の伝説はオレも知っているが、『金』はそもそもいつの時代の生徒なんだよ。」
「・・・さぁ・・・」
「最強だなんだと言って、耳に入るのは奴の昔の話ばかりだ。『金』はとっくにココを卒業したんじゃないのか?屋上には今、誰もいないなんてオチじゃないだろうな」
うーん、とタマナシさんは首をひねる。
「『金』の伝説はいつの話かハッキリしていない。しかも2年生に上がった頃を最後に突然途切れるんだよなァ。実在しているのかすら、どうだかハッキリしねぇ。ある意味都市伝説だな」
「そら見ろ、賭けなんざ成立しねぇんだよ」
「・・・けどな」
「?」
「4日前・・・ちょうど耶馬渓の奴が暴れたせいですっかり話がもっていかれたが、あの日、3年の奴が13階段で誰かにやられて倒れてたんだと。しかも一撃らしい」
「・・・そ、そうなの・・・」
「・・・フン」
それから先、タマナシさんとブブゼラくんは、「どうなんだろうな」「お前行ってみろよ」などとボクをはさんでこづきあいをしはじめてしまった。授業開始時間から2分が過ぎていた。
「よし、ジャンケンで負けた奴が13階段まで様子見に行こうぜ」
「クク、面白ぇ」
「ちょ、ちょっと、ふたりとも自習しようよぉ・・・」
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仕事は人の目がある所でチャキチャキやるのが一番良い。
「さすがに40人はキツかったなァ」
そう言って壁にもたれかかる王将は、息こそ上がっているが無傷に見えた。
「・・・嘘ばかり。あんなに楽しそうに喧嘩をしていた人が何を言い出すやら。」
銀はよろよろと王将に歩み寄り、自分も壁に背を預けた。
二人は暫く無言で空を眺めていた。はぁはぁという荒い呼吸が徐々におさまっていく。銀がチラリと横目で王将を見やると、王将はすぐに感付き銀の方を見た。
「・・・会長、ご迷惑をおかけしました。」
銀が深々と頭を下げる。それを見て王将が面倒くさそうに頭を掻いた。
「おまえさ、いい加減その他人行儀な喋り方やめない?」
「貴方と俺には立場があります。あなたは荒暮のテッペン、生徒会会長・・・自分はそれに従う副会長です。」
「わーってるよそれくらい。けどオレなんざ荒暮を仕切るようなテッペンらしい事、これまで一度だってやった事ねぇぞ?実際ウチを仕切ってんのは銀、おまえだろ。」
「・・・、それでもあなたが会長だ。俺が認めるテッペンはあなた一人。その証拠にあなたの圧倒的な強さに何人たりとも影すら踏めないでいる。・・・勿論俺も。」
「あーあーあーーー!」
銀の言葉を遮るように王将は大げさに伸びをした。ストンと腕を下ろすと、恨めしそうに睨む銀と目があった。
「・・・はあーっ。生徒会選抜戦なんて出なけりゃよかった。校内最強の座を狙ってみりゃあ、やれ校内をまとめろだの他校に力を示せだの。」
さっと王将はタバコをくわえ、一服を始める。
「・・・会長」
「ばーか、電子タバコだよ!絶賛禁煙中だ。本物やってたらバイトできねーだろーが。」
「・・・。」
笑って喧嘩やってる方が問題なんじゃあないですか、と言いかけた言葉を銀はのみ込んだ。元々今日の事は自分の不始末ではないか・・・銀の眉間にしわが寄る。
生徒会の統率をよしとしない荒暮の1チームが、敵対する他校のチームと手を組んで奇襲をしてきたのだ。よりにもよって統率については全く関与していない会長・王将ひとりにターゲットを絞って。自分がその気になれば、もっと火種が小さい内に・・・反乱分子が他校と繋がる前に潰せていたはずだった。なのにそれをせず放っておいた、そのツケがまわったのだ・・・そう銀はひどく悔いていた。
「お母様はどうですか。」
「ん?ああ、元気だよ。最近外に買い物に行くようになったんだ。オレにも普通に話しかけてくれるようになったし、飯も作ってくれるようになった。」
「・・・、それはよかった。」
「バカ野郎、ビミョーな面しやがってwwセリフと顔があってねーんだよ。」
パコンと頭をはたかれる。
「すみません。」
「いちいちクソ真面目に謝んなっつーの」
パコン
「・・・す、すみません・・。」
「お前なぁ。」
ハァーっと王将がため息をついた。
「・・・お前アレだろ、昔のオレに戻れって言いたいんだろ?」
ギクリと銀は固まる。
「わかりやすい奴。」
王将が苦笑いする。
「・・・あなたが母親をうつ病にしてしまったと責任を感じているのは知っています。だから真面目な姿を見せてやろうと努力している事も。けれど俺は・・・俺は、会長に上に立っていて欲しいんです。二番手の俺なんかじゃダメだ、荒暮を仕切るのは、」
「ケホ、ケホ」
ふと王将が渇いた咳を漏らす。チラリと銀がそちらを見やり、口元を押さえていた王将の掌に血がついている事に気がついた。
「会長・・?」
「・・・ン。」
「それは・・・」
「・・・、・・・なあ銀。お前にだけ言うな。」
「・・・ハイ」
「オレ、実は病気でさ。もう長くないんだよね。」
えっ
「統率とかはダリーって思ってるけどさ、オレも昔の生活好きだったんだよな。死ぬまでああいう風にしてたいって思ってた。・・・けどお袋、オレのせいで世間体気にしてあーなっちまったし、迷惑かけっぱで死ぬわけにいかねーだろ・・・?」
いや、そういう事じゃなくて
「・・・どうした銀。ビビッたか?」
銀は王将の胸ぐらをつかむ。挑発的に笑って見せる王将を心の底から馬鹿だと呆れた。
「あなたという人は!どうしてそんな大事なこと・・・!」
「そう揺するなよ、オレ死んじまうかもよ?」
「ッ、・・・嘘ですよね!?だってあなた今もこんなに・・・!」
「銀。」
スッと銀の手を離れ、今までに見た事のないような物悲しげな眼をして王将は笑うのだった。
「荒暮の長は・・・今日からお前だ、銀。」
わかったな?と王将が銀の肩を掴む。・・・銀は応えない。様々な感情が入り混じり、ただただ王将を見つめたまま固まっていた。
「オレの最期のわがまま、聞いてくれねぇのかよ」
悪戯っぽく笑う王将を見て、銀は堰を切ったように再び詰め寄った。
「俺は信じませんよそんなホラ話!だいたい会長はさっきまで縦横無尽に暴れまわっていたじゃないですか!そんな病人どこに居るって言うんですか!?」
「・・・」
「いきなりポンとカミングアウトして、それで投げっぱなしにするつもりなんですか。俺は認めません!俺なんか・・・!荒暮最強は・・・あなたしか・・・!」
眉間に深くしわを寄せ、銀はうつむく。
「・・・チッ。ざんね〜ん」
「!?」
突然聞こえてきた王将の場違いな声に銀は顔を上げる。
目の前に立つ王将は・・・笑いをかみ殺しきれていない腹立たしい表情で銀を見下ろしていた。その顔を見て銀は全てを悟った。
「あっ・・・!だ、騙し・・・」
「ブフーーーーーッ!!!!」
耐えきれず王将が盛大に吹き出す。
「うははははwwwwwひぃーーーwwwwwお前クソ真面目すぎるだろwwww普通誰が信じるかよそんな安い映画みたいな話wwwwwwwwwっつーか引き受けろよ会長職wwwあそこまで信じといて何でそこは頑として譲んねぇんだよこの石頭wwwww」
「〜〜〜!!!」
怒りと恥ずかしさで銀の顔はみるみる真っ赤に染まっていった。
「てめぇ!」
ブンと銀が竹刀を振るう。
「おーっとォww」
ふざけた様子で王将はそれをかわす。
「人が!マジになって!心配してみりゃあ・・・!」
ブン、ブンブン
「うはっwwwそんなにwwwカッカすんなってwwww」
ひょい、ひょいひょい
「くそっ避けるな!!」
「当ててみろってんだよ副会長だろwww」
「くそっ・・・!」
「やーいヘタクソーwwww」
「人の!心を!弄んで!一発喰らってやろう位思えないんですか!」
「おーいそれが会長様に対する口のきき方かぁww」
「うるさい!!!」
***
結局銀は王将に一発も当てる事が出来ないまま息を切らし、へたりこんでしまった。
「うちの会長は・・・、性根が腐ってやがる・・・」
息も絶え絶えに憎まれ口を叩くと、頭上から「そりゃどうも」と皮肉で返された。
「ハァ・・・」
完全に戦意を喪失した銀は深いため息をつく。
「おい何座ってんだよ。帰ろうぜ銀。」
差し出された王将の手には、先程咳き込んだ際に吐血したと思われる血がまだ付着していた。
「・・・会長。病気が嘘なら、さっきの血は一体・・・」
「ン」
ぺっと王将が地面に血まじりの唾を吐き捨てる。
「・・・ケンカで口切れた。」
あぁ、と銀は納得し再びため息をついた。
「なぁ銀、オレ口切った。」
「今聞きました。」
「お前、ケガ人が目の前に居んだから背負って帰れよ。」
「・・・。」
銀がじとりと王将を見つめる。どうみても王将は無傷、満身創痍なのは銀の方だった。
「オレ、口が痛くて歩けなーい」
「あなたって人は・・・」
「・・・誰かさんの不手際でケンカに巻き込まれたカワイソーな会長を、労われないのかなァ」
「う・・・!」
この人には一生頭が上がらない気がする。
ケラケラと笑う王将にもういちど深く深くため息をつき、銀はその背を差し出した。
母「あ、アンタの部屋片付けたわよ」
前回までのあらすじ
キャラ作りが好きすぎて自分一人楽しいヤバ系シリーズ。
女キャラの絵ばかり本気を出すクソオムツですどうもこんばんは!
カワイコは「オトモダチ」という奴隷を従える荒暮高校2年の美少女です。
基本はピンクのセーラー(フリル付き)にゆるふわツインテールですが、自身の趣味と、あらゆるタイプのオトモダチを網羅するため、様々な系統の格好をします。
例によって例の如くつぶれてしまった部分
涙袋の白のラメでうるうる愛されEYE☆的な。
化粧や爪はあまり良し悪し(ダサイか否か)の基準が分かりませんが、カワイコはバリバリ化粧してるといいと思います。ケバカワイイの。
勿論ニーズに応えて薄化粧したりもして、それも普通に可愛いの。
パンチラへそチラ要員。
性 別 | 男性 |
年 齢 | 73 |
誕生日 | 8月18日 |
地 域 | 福岡県 |
系 統 | ギャル系 |
職 業 | 小学生 |
血液型 | B型 |