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【私と私の小さなヒーロー】


「行くぞ! 必殺――」

 画面の向こうでヒーローが叫んだ。変声前だが声量は充分だ。相対する鎧の怪人は、ぐぉおとかぐぁああとか言いながらヒーローのモーションを待ち、真っ向から攻撃を受けた。特製の強化スーツで繰り出される必殺技は、そのヒーローの体躯には似合わない破壊力を持っている。

「ぎゃああああああ」

怪人は悲鳴をあげて、それでも文字通り必死に一歩を耐え、ヒーローの小さな背中がびしっとポーズを決めたのを見届けてから、爆死した。

どかーん!!

お見事。上出来だ。
私は端末のスイッチを切った。ここからは生で楽しもう。着衣がほどよく乱れていることを確認して、少し考えて眼鏡もずらす。歪んだ視界で身を捩り、自分の後ろ手に手錠をかけた――慣れてしまった動作だが、そういう性癖を持っているわけではない。このあとの展開を思い描いて緩んでしまいそうな表情筋を戒めながら、いかにも憔悴した風を装って冷たい壁に肩を預けたところで、入り口のドアがぶち破られた。

「大丈夫か、ハカセ!」

この瞬間が、たまらない。
現れたのは、変身を解いたヒーローの少年だ。荒い息もそのままに私のもとに駆け寄ると、真っ先に眼鏡の位置を直してくれた。

「ああ助かった、よ」

途端にクリアに戻った世界で、目が合う。年に不相応な力強さと自信と思いやりと、年相応の疑いを知らないきらめきとが混ざりあったその瞳が。まっすぐに私を、私だけを見ている。

「っ、」

背筋にぞわりと走るものを感じて、私は拳を強く握りしめた。やはり手錠は正解だった。彼はそんな私の様子を気にとめることなく、待っていろよと鍵を開けて私を助け起こした。

「怪我はないかハカセ?」

「ああ、君は?」

「オレは大丈夫。ハカセのスーツのおかげでな!」

こちらを見上げる笑顔が眩しくて目眩がする。

「あれを使いこなせるのは、君の力あってこそだよ」
(――半分は。)

余計な一言を隠して言えば、小さなヒーローは得意気に、でも少し恥ずかしそうに、話を変えてきた。可愛い。

「まったく、あいつらもしつこいよな。ハカセはもう組織を抜けたのにさ」

「だからこそだよ、やつらは裏切り者を許さない」

「ハカセは天才だから手放したくないんだ」

許せないぜ、と怒りを露にする彼に、私はゆるゆると首を振る。

「いまはもう、私のすべてを君のために活かすと決めたから」

「そういうこと真顔で言うなよ!」

たまにはと思って紛れもない本心を告げたら、彼は赤くなってしまった。

「……それに、オレのためにじゃなくて、正義のために、だろ!」

こうして胸を張る彼の、そのよく変わる表情も危うさも、なかなかどうして心を揺さぶるものがあるのだが、しかし。

「……そうだね」
(冗談じゃない!)

叫ぶ代わりに頷いた。そのままうつむく私をどう思ったのか、ヒーローが私の手を掴む。小さくて、柔らかくて、温かい手だ。

「帰るぞ、ハカセ」

「ああ」

この手が拳を握って敵を撃ち、ヒーローとして正義の名のもとに彼が笑っていられるのならば。

「今度はもっと強い敵と戦いたいな!」

「怪我はしないでくれよ」
(怪我はさせないよ)

「心配すんなって。オレ、ヒーローだぜ!」

君のためなら私は。悪魔だって造ってみせる。


【私と私の小さなヒーロー】



・・・・・


友人のためにショタを書こうと思ったのがきっかけだったのに手癖を出しすぎましたね!

小ネタ:春の歌唱大会

 あきのさん家に乗っかって、ついったーで歌わせてみたネタに一部追加です。だって春だもの。邦楽縛りで国とか時代とか言語とか時系列とかは気にせずニュアンスを楽しんでいただければ幸い。好き勝手歌って好き勝手コメントします。


 * * *


シ「♪ちーいさーい頃ーはー かーみさまがいてー」

藍「(いまも居る……)」
翠「(叶えてくれる)」
虎「ま、まさかの選曲」
【やさしさに包まれたなら】


翠「♪なんでもないようなことが 幸せだったと思う なんでもない夜のこと 二度とは戻らない夜〜」
♪テーレーレーレレレレ レーテーレレ-

イリス「どうした兄貴」
シオン「洒落にならない匂いがするね」
【ロード】


藍「♪月の欠片を集めて 夢を飾り眠る 時の砂散りばめても あの頃へ帰れない」

イリス「誰に会いたいの? 誰が愛しいの? 誰に触れたいの? お前を苦しませるのは誰なの? ねぇ??」
翠「選曲が意外だったのは分かったからお前は黙れ」
【月光花】


朱楽「♪愛をー償えーば 別れーになるーけどー こんなー女でもー」

藍「姉さん……」
ロウム「色気が勝ちすぎてコメントに困るな」
【償い】


ミヤコ「♪十五 十六 十七と 私の人生 暗かった」

人形師「お、おう……」
虎次「このコーナーやめません?!」
【圭子の夢は夜ひらく】


クロ「♪黒猫のタンゴ タンゴ タンゴ 僕の恋人は黒い猫」

虎次「渾身の裏声……!」
人形師「ネタでしかねぇ」
【黒ネコのタンゴ】


人形師「♪飲んでぇー 飲んでぇー 飲まれてぇー 飲んで 飲んでぇー 飲み潰れて眠るまで 飲んでー」

ミヤコ「名曲だねぇ」
虎次「、染みるっす」
【酒と泪と男と女】


ロウム「♪しーあわーせはー あるーいてこーない だーから歩いていくんだねー」

イリス「逃げろ!!」
【三百六十五歩のマーチ】


イリス「♪あーなただけ見つめーてる 出会ァった日から 今でもずっと! あーなーただけそばにいれば 他に何もいらなァアい 夢のHigh Tension!!」

虎次「熱唱だし藍さんから視線外さねぇし藍さんは顔上げねぇし表情も変えねぇし」
シオン「改めて聞くと熱い歌詞だね」
【あなただけ見つめてる】


ルシ「♪貴様と俺とーは 同期のさーくーらー 同じ兵学校の庭にぃ咲くー 咲いた花なぁら散るのは覚悟ー 見事散りましょ 国のため」

虎次「軍歌……」
ルナ「お前なぁ」
【同期の桜】


虎次「戦え! 何を!? 人生を! 戦え! 何を!? 人生を!」

翠「泣いてるのか……?」
シオン「何が始まったのかと思った」
【戦え! 何を!? 人生を!】


ルナ「♪はっぴばーすでー とぅーみー はっぴばーすでー とぅーみー はっぴばーすでー でぃあ わたしー はっぴばーすでー とぅーみー」

虎次「どうしたんすか」
ルシ「昨日(4/1)が誕生日だった」
虎次「……なんか……すんません」
【?】


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