※一次創作ブログなので一定期間後非公開にします。
※単語から飛んでいらした方は他のページには行かないでいただけると恥ずかしい思いをせずに済みます。私が。


・・・・・





 九、十、十一人目を殴り飛ばした視界の端で、複数の敵が弓を構えるのが見えた。さすがに熟練の手つきだ。狙いも正確。全弾回避は無理だな。だがまあ戦闘さえ継続出来れば陽動は果たせる、と、冷静に割りきったベオウルフの足を刹那止めさせたのは、

「さあ、輝いてしまおうか!」

意識の外から確と届いた男の声だった。放たれた矢が不自然に軌道を変える。追って振り返った途端弾けるように馬が飛び込んで、翻った槍が事も無げに脅威を打ち払った。

「お前……!」

言葉を無くすベオウルフに微笑みを投げかけ、フィン・マックールはそのまま敵陣に突っ込む。金糸の残像が尾を引いた。派手な登場に混乱したのは敵も同様で、ただ既知であった分だけベオウルフの方が立て直しは早かった。乱れた戦線に飛び込み、殴って蹴ってはまた殴る。

「助けに向かうのなら美しい姫君が望ましいのだが!」

さなかに馬上から余裕の声が飛んできたので「頼んでねえよ!」と怒鳴り返すと、狙ったように敵の生首が飛んできた。

「物騒な王子サマもいたものだなァ!」

掴んで投擲。新たに二人を打ち倒した。

「何、短慮な王には似合いの騎士ではないかね!」

諌めているつもりか。意図を読みかねて槍を追えば、朗々たる詠唱の直後奔流が眼前の敵を一纏めに押し流していった。

「それとも、やはり目覚めのキスが必要かな?」
「要らん」

愛想のない返答に、フィンが笑う気配があった。

「そうか。ならば、」
「ああ、」

殴って蹴って立っていた方の勝ちだ。敵の増援が見える。合図など無くとも飛び出したのは二人同時。戦場は怒号と悲鳴に満ちていた。



 陽動とは敵を全滅させる作戦ではないし、そもそもそんな作戦は誰も許可していないし、早く連れ戻してくれと頼んだのになぜ一緒に暴れてくるんだ云々。
 参謀の苦言を「すまんな、興が乗りすぎた」の一言で済ませようとするフィンの隣、「どっちがバーサーカーだか」とベオウルフが笑い、説教の時間は延びた。





・・・・・


たぶん戦闘シーンの練習をしたかったんだと思う。