わんらい没供養
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ピリッと痛みを感じて指先に目をやると、案の上、細く切れていた。ゴミ捨て場行きの参考書に小さく抵抗された気がして、らしくもない感傷を覚える。
自分史上最高に勉強したが、第一志望には受からなかった。まあもともと高すぎる目標ではあったし、正直それほど後悔はしていない。なるようになっただけだ。ただ、
「何サボってるの」
今日もこうして片付けを手伝いに来てくれている友人と別れることになるのが、ほんの少しだけ気にかかる。
「お前は俺がいなくても大丈夫だよな」
なんて気持ちの悪い台詞は口が裂けても言えないが。
実際大丈夫なのだろうし。
大丈夫でなければ困るし。
片付けはお手伝いさんの仕事だったから、などと言い出しそうな顔をしながら友人は、手際よく荷造り紐を切る。運搬係の俺はよっこらしょとそれを積んでいき、女々しい思考を誤魔化すように腰を伸ばした。うーん、結構な量になるな。
「夢破れて山河あり、って感じだな」
「国だよ」
「そうだっけ?」
だから落ちたんだよなどと続けないあたり、やはり彼はいい友人である。
夢の痛覚
しかし、まさか野郎2人でドライブに繰り出すような仲になるとは。当時の俺はつゆほども思っていなかった。