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物語(後)

遅くなりました!!


後編になります。加筆修正をしたので、オリジナルのものと所々違いますが、大まかな流れは一緒
改めて読み直すと、恥ずかしかったり……
楽しんでいただければ幸いです!

*****



「灰かぶり」



 あるところに灰かぶりという少女がいた。

 灰かぶりは魔女だった。灰かぶりには魔法がかかっていて、清い心の持ち主にしか本当の灰かぶりの姿が見えないようになっていた。それ以外は灰をかぶったただの汚い少女にしか見えない。

その魔法は、今は亡き灰かぶりの母がかけたもので一生取れることはないのだが、別に彼女には都合が悪くなるとかそんなものではなかった。

 それよりも亡き母が残していた遺言が灰かぶりにとっては重要なものだった。それは「灰かぶりの本当の姿を見える者には無条件で助けること」。

 灰かぶりはそれを今まで守り続けてきた。灰かぶりは死ぬことができない。魔女は相手から物理でも魔法でもして殺されない限り、死ぬことがない。彼女の母が死んだのは誰かから呪われてしまったからだ。

母が亡くなる直前に誓い、そして墓前でも誓った。そうして誓約に縛られることになった。

永遠とも呼べる時間を、灰かぶりはたった一人で、その誓約を守って生きていた。





 ある日の夜。灰かぶりは路地裏で一人の少年を見つけた。少年は蹲って、その路地裏で小さくなっている。

 灰かぶりはその少年の金の髪を羨ましいと思いながら見下ろし、話しかけた。

「どうして、こんなところにいるの?」

 灰かぶりの問いかけに、少年は顔を上げてじっと灰かぶりを見る。灰かぶりもまたその少年の顔を見つめた。

 少年の顔はかなり整っていて、一見は普通の美少女にしか見えない容姿だ。金の髪の毛は肩にほとんどつくくらいで、一般男性よりも長い部類に入っている。髪が長いせいもあってより少女らしさを増している。

「……変わった髪の長さだな、アンタ」

 少年は灰かぶりを瞳に映して、ぼそりと小声で呟いた。



「へぇ、貴方、私の姿が見えているようね」



 灰かぶりは愉快そうにその口元だけを歪ませ、少年を見下す。

 確かに灰かぶりの髪の長さは変わったものだった。左側はそのくすんだ金の髪を腹のあたりまで伸ばしているのだが、右側は違う。右側だけは肩に付くかつかないか位までの長さしかない。あべこべな髪型だが、灰かぶりはこの髪型がたいそう気に入っていた。

 それよりも、髪の長さが違うことが見える者は灰かぶりの本当の姿が見えている者だ。灰かぶりは表情をそのままで口を開いた。

「久しぶりに私の姿を見える人を見つけた。さぁ、困ったことがあるんでしょ?言ってごらん。私が助けてあげる」

「……助け?そんなことできるはずないだろ。アンタ、頭が狂ってんのか」

 灰かぶりの言葉に、青年は嘲笑った。その表情は灰かぶりの言葉をまったくと言っていいほど信じていないようだ。

 彼の言葉を聞いた途端に灰かぶりは無表情になった。灰かぶりのことが信じられない、そう言った人たちはみんな灰かぶりを嘲笑った。だからその時は彼らが自分の言うことを信じられるようにすればいい。長い経験から、灰かぶりは分かっていた。

「狂ってる?そんなことないわ。私は至って正常よ。私は魔女だから」

パチン

 灰かぶりが指を鳴らす。

すると少年と灰かぶりの目の前にポッと炎が燃え始めた。タネも仕掛けもない。突然、目の前で燃え始めたのだ。

 少年は驚いて、後ずさろうとするが背後は壁。逃げられない。

 それを見た灰かぶりはにやりと笑って、自分の腕を上へ振り上げる。

 すると、その炎も一気に空高く燃え始めた。

「まだ、信じられない?」

 灰かぶりはそう言って、頭上に振り上げたままの左手の人差し指を少年に向ける。

 炎は空高く燃え続けたまま、少しずつ少年の方へ向かっていく。まるで少年の方に引かれていくように。

 その様子を見て、少年は焦ったまま早口で言葉を紡ぐ。



「わ、わかったから!信じるから!さっさとその火を何とかしてくれ!」



 灰かぶりはまたパチンと指を鳴らした。すると炎は跡形もなく消え去り、また静かな夜が戻ってくる。

「じゃあ、ほら、言って」

 灰かぶりは見下し、つまらなそうに告げた。

 少年は一瞬躊躇いを見せたが、先程のこともあってしぶしぶ語りはじめる。

「俺は……好きになっていけない人を好きになったんだ」

「……それで?あなたはどうして欲しいの?」

 灰かぶりは首を傾げる。

「俺は別に……ただ、」

「その人と生きたいの?それとも好きになってはいけなかったから諦めるの?」

 灰かぶりはさもめんどくさそうに告げる。

 少年の瞳にはまだ戸惑いがあるようで、頻りに揺れていた。

「俺は……でも、男同士だから…」

 灰かぶりはその言葉でピンと何かを理解したように目を細める。そしてなんて矮小なことで悩んでいるのだろうと馬鹿馬鹿しく思って溜息をついた。

「男がどうしたというの?これなら関係ないでしょ」

パチン

 灰かぶりは指を高らかに鳴らした。

 鳴らした途端に少年は白い煙に包まれだした。すぐにその煙は少年をすっぽりと包みこむ。少年はその煙が消えるまで、時折咳き込んでいた。

 そして暫く経って、その煙がさっぱりと消え去ると、そこにはもう少年はいなかった。

 そこにいたのは、淡いブルーのドレスを着てしゃがみこんでいる少女である。胸元は少し大胆に開いていたが、そこには小さな膨らみが見えるだけである。

 少年――いや、少女は自身の姿を見て、目を見開いて驚いていたがすぐに慌てて立ち上がった。ドレスのスカート部分に汚れがついていないか確かめ、少しだけ布を掃う。

「うん、これで大丈夫でしょう」

 灰かぶりはにっこりと笑った。

「それで、結婚式を挙げてしまえばなんら問題はないよね。この国の法律は確か、結婚してしまえば本人たちの了承を無しに婚姻を消すことはできないのだから。あぁ、安心して。結婚式さえ終われば貴方はすぐに元の姿に戻る」

 少年は未だに自分の身に起こったことが信じられないようで、その胸元を触ってみたりしている。けれども、灰かぶりの話は聞いていたようで、戻るという言葉を聞いた途端ほっとした表情を作った。

「後のことは貴方たちで考えればいい。けど、もしまた私の力が必要なら……」

 灰かぶりは言葉を止めて、その自分の服の胸元に手を入れ、何かを探し始める。そしてそこから、赤い糸で結ばれた一房のくすんだ金の糸の様なものを出した。それを少女の手に握らせ、言葉を続ける。

「これを燃やすの。そうすればその灰からすぐに駆けつけられる」

 少女は手の中のその糸をじっと見つめる。そして、灰かぶりの短くなった右側の髪を見た。

「これ、アンタの髪か」

 その問いに灰かぶりは何も答えない。ただ、先程とは打って変わって優しく慈愛に満ちた顔つきで微笑んでから、振り向いて去ってゆく。

 少女は何も言わずにその背を見て、そして手渡されたそれをぎゅっと握りしめた。



**



 今日もまた灰かぶりは当てもなく街中を歩く。日中だから街には人が溢れている。時折灰かぶりはその細い腕を掴まれて、煙突掃除をさせられた。それも仕方ない。心が清い人以外には灰を被った薄汚い少女にしか見えないのだから。

「ねぇ、あなた知ってる?ようやく王子が結婚したらしいわね」

「あぁ、ひっそりと結婚したんですってね。まったく、どうしてこっそりあげるのかしらね?分かっていればお祝いしたのに」

「あら、お祝いよりも商売じゃなくて?」

「それよりも、王子と結婚した方はどんな方なのかしら。きっととっても美しい方でしょうね」

「遠い国からやってきたらしいけど、詳しいことは知らないわ。でもかなりの美貌らしいようよ」

「一度でいいから、見てみたいものだわ」

 街中は王子の結婚の話でもちきりだ。

 けれども灰かぶりはそれよりも退屈を味わっていた。

「私には、興味ない」

 灰かぶりはそう呟いて、路地に入る。もう大通りを通るのはこりごりだ。通るだけで、いやでも結婚話は耳に入ってくる。

「なんて退屈。そしてなんて不快。たった結婚話にどうしてそんなに興味を持つのかしら」

 灰かぶりは歩みを止めず、進んでいく。

 路地はガラの悪いものがいささかいるものの、誰も灰かぶりには話しかけなかった。そのことに灰かぶりはがっかりしながらも歩みを止めず、進む。

 すると、その途中で一人の幼女が灰かぶりのまさに踏み出そうとした足に縋り付いた。

「お願い、助けてっ!」

 灰かぶりは足を止め、自分の足に引っ付いている幼女を見下ろす。まだ、五、六歳の子供にしか見えない。少し汚れている栗色の頭をじっと見つめ、灰かぶりは口を開いた。

「どうして?」

 幼女は顔を上げた。その緑色の大きな瞳に灰かぶりの姿が映る。

「だって、おねいちゃん、わたしたちとちがう。ひかってるんだもん」

 灰かぶりは目を見開いた。そして口元を歪める。

「そうなの。私はとっても優しいお姉ちゃん。だから助けてあげる。さぁ、どうして欲しい?」

 さっきの暗い笑みを一瞬で消して、優しくまるで慈母のごとく言葉を紡ぐ。

 幼女はその姿を見て、その大きな瞳を潤ませた。ポロポロと涙をこぼしながら少女は言う。

「お、おかあさんを、たすけて!」



**



「あぁ、つまらない」

 灰かぶりは呟く。

 もう夜になってしまった。街は今日も薄汚れた大気に包まれている。煙突から出ていく煙で今日も街は汚れていた。

 けれども、それを普通の人々が見えるはずもない。灰かぶりにしかこの景色は見えないのだ。

 街で一番高い煙突に座り込んでいた灰かぶりは足をプラプラと揺らす。そして、下の様子を見つめつつ、今日在ったことを思い出す。

あの娘の母親の病気を治した。原因はこの煙突の煙。有害なものを出しているって、人間は気付きもしない。だから、胸を患う者が増えているのに。

それでその後は、そうだ。何故か娼婦に捕まったんだった。どうしてあんな人間が私を見えたのか解らないけれども、誓約は守らないといけないからって願いを叶えてあげたんだった。

 それで―――

 灰かぶりは自分の顔をそっと触れる。娼婦のもとから去る間際、お礼と言って彼女は灰かぶりに化粧を施した。

 鏡に映る姿は自分の真の姿を映し出す。けれども灰かぶりは今、鏡を持っていない。自分の顔には興味はないが、施された化粧には興味があった。

 だって灰かぶり女の子だ。それに化粧をされたという新しい出来事に、面白みがあると思ったから。



 その次の日から、また灰かぶりにとっては退屈な日々が続いた。誰からも話しかけられない。それよりも、人々が灰かぶりの姿を見て、まるで化け物を見るかのような目つきをするのだ。

 最初は耐えられた。けれど、次第にそれは灰かぶりが耐えられるものではなくなった。退屈を重ねて精神的におかしいのにその上、人々から化け物と罵られる。時折石や、卵、酷いときは汚物を投げられたこともあった。

 灰かぶりはもう我慢できなかった。

 灰かぶりはもはやこの街には用がないと考えた。そして、この街の人間はすべて悪と見なした。

 普段の灰かぶりならこんな安易な考えはしないのだが、灰かぶりは頭に血が上っていた。それほどまでに怒りで、我を忘れていた。

 まず、街の家々を壊して、逃げ惑う人々を殺していった。その中であの娼婦を見かけたような気がしたが、それだけだった。灰かぶりは決して人々の血で汚れないように、少しだけ宙に浮いて殺戮をしていった。

 それからやってきた城の兵たちを殺していった。指揮を執っていた中に、あの少年を見かけたような気がしたが、それまでだった。迫りくる槍や剣を避けて、風や炎で作った槍や剣で切っていく。

 灰かぶりは自分の周りが静かになるまで、それを続けた。

 足元は焼け焦げた死体や切り裂かれた死体の山。そのてっぺん、決してそれらを踏まないよう少し浮かんだ灰かぶりは無表情のままその死体たちを見下す。

 ようやく、静かになったようだと灰かぶりは思った。

 しかし、灰かぶりの異常な聴覚は近づいてくる小さな足音を聞く。身構えることもせず、灰かぶりは無言のまま手の中に自分の背丈よりも高い赤黒い灼熱の大剣を持つ。

 やってきたのはあの幼女。灰かぶりを見つめ、真っ青な顔で歯をがくがくと鳴らしながら近寄ってきた。

 灰かぶりはそれを見つめ、そしてバッと一瞬でそこから移動し、その幼女を大剣で貫く。

 幼女は目を見開いて、そのまま事切れた。傷口からどんどん火が幼女のその小さな体を燃やしてゆく。

 灰かぶりはめんどくさそうにその大剣をいとも簡単に振って、幼女を離した。振った瞬間に、幼女の体は死体の山へと投げられる。

 灰かぶりは瞳を閉じて耳を澄ませた。そして何も聞こえないことを確認してから、その瞳をあける。

「静か」

 灰かぶりはそう呟いてから、ふと下を見た。死体の上に小さな鏡が落ちている。その小さな鏡には灰かぶりが映っていた。

 それをじっと灰かぶりは見つめた。鏡には灰かぶりが映っている。

けれども、その顔は記憶の中にあった自分の顔ではなかった。変に赤く染まった頬。青く染められた唇。そして目元は赤黒く縁取られている。

 灰かぶりはその姿にあっけにとられた。鏡は自分の真の姿を映し出す。自分の真の姿がこんなことになっているなんて、灰かぶりは思ってもいなかった。

 灰かぶりは振り返る。そこには高くそびえたつ死体の山。自分が殺してきた者たち。その下の方には先程投げたあの幼女の遺骸が落ちていた。

 灰かぶりはそこで正気を取り戻した。自分はなんてことをしたのだろうと、後悔した。助けた者も、これから助ける者もすべて刈り取ってしまった。

 灰かぶりはしばらく呆然とそれを見つめ、やがて壊れたように高笑いし始めた。

 自分が滑稽な存在だとでも言うように、暫くずっと。



「あぁ、なんて滑稽なんだろう!」

 自分の顔を手で覆い、灰かぶりは姿を消した。







パタン



 語り終えた男は本を閉じる。

そして最後にと、口を開いた。



「灰かぶりが消えた途端、その街はまるで何事もなかったように元に戻りましたとさ。けれども、たった一人だけいなくなってしまった人もいるようだけどね。そして、灰かぶりは今もどこかにいる。以前会った時は元気そうだったから、今もどこかで自分の姿が見える人を探しているだろうよ。愚者の様にね」



            第一夜   了


体調

疲れが取れていないのか、微熱が続いております
治したいのは山々なのですが、自分の体調管理が全くできていないので無理な話……
しかも明日から出かけるので、なおさら悪くなること間違いなしでしょう
数日泊まりで出かけるので、こちらは暇ができたら現状報告くらいはしたい……!です

連続投稿ができるかわからないので、しばらくしたら前回の後編を載せたいと思ってます
お待ちを……!

ちょっと

上京してきて、まぁ戻ってきたって言った方が正しいのですが、そのためか最近忙しいです
夜型なのを矯正していることと、花粉症のせいで調子が悪いです
寝不足というわけではないんですが、運動とかしてないから体力がかなり落ちました
ですので、こちらの小説UPはかなり遅くなるかと
できれば来週中には、後編を載せたいです

物語(前)

この話は、一年前に書いた話です
私としても思い出深い話で、当時なんとかダークメルヘンにしようと気を張り巡らして書いた作品でもあります。後々にやってくる恐怖感を目指したのですが、最後で挫折した感がいっぱいの作品になりました
実を言えば、まだ話はつながっています。未完のままなのは、ただモチベーションの問題です
暇なときにこの作品の続きでも書いていきたいです。それほどまでに、この作品は長い物語なのです

****


この物語は事実と異なる虚実である



ある森の少し入った場所に一つの小さな小屋がありました。木で作られた小屋です。辺りは少し腐りかけている木の塀で囲われ、雑草と一緒でしたが綺麗な花が咲く花壇もありました。小屋の扉には窓が付いているわけでも、ベルが付いているわけでもありません。けれども、ドアの上の方にランタンが掛けてあってそれが偶に風で揺れていました。
室内はベッドと木の箪笥が置かれています。また、小さな椅子が一つと少し大きめの椅子が一つ置いてありました。そして入口のドアと反対側にはまた扉がありました。
その扉を開けると、なんとそこは温室でした。森の中だったはずなのに、温室のガラス張りの天井には一つも木が見当たりません。温室には見たことのない植物や鳥、そして虫たちが住んでいました。
その温室の奥へと行くと、どこかからか話し声が聞こえ始めました。その方角へ進んでゆくと、見事な彫刻が彫られた白いテーブルが見えました。その上には二人分のティーセットが置いてあります。そして真っ黒い髪の男が座ってティーカップに口をつけて優雅にティータイムを楽しんでいます。その向かいに座っている、金髪で青白い肌の少女も優雅に飲んでいました。

「どうだい、アリス。その身体の心地は?」
男がティーカップをテーブルに置きつつ、目の前の少女に問いかけました。
すると、少女は紅と蒼の瞳で男を見つめ、にっこりと微笑みました。

『最高よ、お父様。ワタシはこの身体がとっても気に入ったわ』
弾んだ声色で、少女は答えました。その答えに満足した男は、フッと目を細め、眩しそうに少女を見つめました。
『ねぇ、お父様。ワタシ、お父様に本を読んでほしいわ』
少女は目の前の男にねだるように瞳を向け、いつの間にか手元に持っていた本を差し出しました。
「……仕方ない、それがアリスの願いなら、」
本を受け取った男は苦笑いしつつ、本を開きます。

そして物語を話し始めるのです。



本日、お聴かせするお話は二本です。
どうぞ、最後までお楽しみください。

〈哀れな男の話〉
〈灰かぶり〉
「哀れな男の話」

ある所に一人の男がいた。その男の名はジョアン。一年前成人した男だった。
ジョアンは住み慣れた村で母親と二人で暮らしていた。父親はいなかった。母親とジョアンを置いて街の女のもとへ行ってしまった。そんな父親をジョアンは嫌悪していた。そして母親を慕い、そして一生懸命働いて母親に楽をさせたいと考えていた。
ある日、ジョアンは森で迷ってしまった。村の近くには鬱蒼と木々が茂る森があるが、村の人々は決して入らなかった。ジョアンも入るつもりはなかった。
けれども、ジョアンはどうしても母にみずみずしい花を見せてあげたかった。母は病床で、最近はずっと窓の外から変わらぬ景色を見ていた。そんな母に気分転換をしてほしい、そうジョアンは考えたのだ。あの母の優しい紅い瞳が、ジョアンに向けられる、その瞬間が彼にとっての至福の時だった。
ジョアンの手には摘み取ったばかりの花々が咲き誇っていた。赤や白、黄色い花が、ジョアンが歩くたびに揺れている。
不安げな顔つきで辺りを見回し、ジョアンは溜息をついた。早く帰らなければ、母を心配させてしまう。ポツリと窓をベッドで横になりながら見つめている母の姿が脳裏に浮かび、ジョアンの足を急がせた。
やがて、ジョアンは明かりを見つけた。辺りはもう暗かった。その明かりは遠いようだが、ジョアンにとっては希望の光の様にも見えた。
駆け足で近寄って、ジョアンはその明かりが家の窓から漏れている明かりだと気が付いた。こんな森の中に家があるなんてジョアンは知らなかった。けれども、その家はしっかりとジョアンの目に映っている。
しばらく歩いて、ジョアンはその家の前に立った。家の周りには枯れた花々が申し訳なさそうに花壇に植えられていた。家を囲む塀も少し壊れている。時折、釘が飛び出ている個所もあって、危ない。
だが、何よりもこの家の方がジョアンにとっては不気味で仕方がなかった。木でできているようだが、屋根には雑草が生えている。それに壁の木だって、苔が生えているし所々腐りかけていた。
けれども、ドアの上の方にかけられているランタンにはきちんと灯が灯っているし、先程見た窓からは人影の様なものも見えた。人が住んでいることは確かであろう。
ジョアンは意を決して扉をたたいた。

「誰か、いませんか?」

「……どちら様ですか?」
中から男の声が聞こえた。ジョアンは少しだけうれしくなって、訳を話し始めた。
男はそれを黙って聞いていた。
「・・・・・と、いうわけなんです。村までの道のりをご存じでしたら、教えていただきたいのです」
ジョアンはできるだけ丁寧に訊ねた。
中の男は何も言わなかった。ただ、かちゃりと鍵を開けた音がしてから、扉がゆっくりと開いた。
「……どうぞ、お入りください」
ジョアンは驚いた。目の前の男の、その薄汚れた清潔感なんてまるっきりない容姿に驚いたせいもあるが何より、見ず知らずの人間を家の中に招く男の精神に驚いた。ジョアンは決して一晩の宿としてこの家を訪ねたわけではない。ただ村まで帰る道のりを教えて欲しかっただけなのだ。
家の中へどうぞとでも言うかのように差し出された男の手。ジョアンはそれを少し見てから首をやんわり横に振った。
「……いえ、僕はただ、村まで帰る道のりを教えてもらいたいだけなんです。こんな僕の様な見ず知らずの人間を家に招き入れるなんて、」
「ですが、貴方はこのままじゃ帰れませんよ?どちらにしろ、朝日を待たなければ、ここから出られないのだから」
淡々と紡がれた言葉にジョアンは先程よりもひどく驚いた。
「な、なぜですか?」
ジョアンの問いかけに男は首を傾げる。男の長い前髪のせいでその瞳は見えなかったが、その纏う空気がジョアンを訝しんでいるようだった。けれども、フッと息をついて、また淡々と言葉を紡いだ。
「ここから村へは確か近いはず。近いけれど、オオカミが出たはずだ。とっても腹を空かしたオオカミたちがな。だから、私は貴方の安全のためにもお勧めはしないのだが、」
――それでも教えて欲しいのか
男は口元を歪まして笑っていた。
ジョアンはそれを見て、一気に寒気を感じた。腕を無意識のうちにさすっても、温かくはならなかった。
少し考えたのちに、ジョアンは意を決してこう言いつつ、一歩室内へ踏み出た。
「……わかりました。ではお邪魔します」
男はやはり何も言わなかった。

            **

室内にはほとんど何もない。大小一つずつの三つ足の椅子と、木のテーブル、そして粗末なベッド、それしかなかった。
小さな椅子の上には白い洋服を着た金髪の少女人形がちょこんと座っている。そのしてテーブルの上には小さなティーカップが、その人形の方に置いてあった。ティーカップからは湯気が出ている。
「適当に座って」
男は人形の手前、大きな椅子に腰かけた。
「おいしいかい、アリス………そうか、おいしいのか。じゃあまた今度作ってあげよう」
にこやかに微笑んで人形を見つめる男の姿をジョアンは立ったまま見ていた。座る場所がないのだから、立っているしかない。
男はジョアンをいないように扱っていたが、ふとまるでたった今気づいたように瞳に入れる。そして自分が飲んでいたティーカップをジョアンに差し出した。
「飲むかい?」
未だに湯気が立ってはいるものも、その量は明らかに減っている。人が飲んでいたものをわざわざもらう訳にもいかなくて、ジョアンは首を横に振って拒んだ。
男は別に気を悪くした様子もなく、また人形の方へ視線を戻した。
「あぁ、そうだ。もし寝るのならそこのベッドで寝るといい。私はどうせ寝ないのだから」
そしてそのまままた人形にぼそぼそと話しかけている。
ジョアンはその様子を見つめ、まだ訊きたいことがたくさんあるのに、と思った。でも、もう男はジョアンの方を見ることなく、ただ目の前の『アリス』と呼ぶ人形に頻りに話しかけている。
だからジョアンは諦めた。そして言われるがままに粗末なベッドの上に横になった。
目を閉じると、疲れが一気に出てきたようでそのまま眠りの世界に入っていった。

フッと意識が戻った時、ジョアンの視界に広がったのは男の顔だけだった。男がジョアンの顔を覗き込んでいたのである。
「やあ、おはよう。もう朝だよ」
ふわりとした微笑みに、ジョアンは見惚れた。今は時折、髪の隙間から優しげな瞳がジョアンを見つめている。
「あ、あの、すみませんでした。ベッドまでお借りしてしまって…」
「いいんだ。あんなに歩いていたんだから、ベッドは必要としている人に利用されるべきだ。そうだろう?」
そう言って、コップを差し出す。木製のコップには温かそうなスープらしきものが入っていた。湯気が立ち、おいしそうな匂いに刺激され、ジョアンの腹が小さく鳴る。
「どうぞ、ポタージュだ」
クスリと口元で笑い、彼は傍にあった椅子を持ってきて、そこに座った。
それを横目で見つつ、ジョアンはフゥと息を吹きかけてから、一口そのポタージュを口に入れた。
「……おいしい」
「それは良かった。だいぶ疲れていたようだったからね、先にそれを飲んで体を温めるといい。それから食事をしよう」
温かいスープがしっとりと腹の中を満たす。
ジョアンは男の優しさが身に染みて、ポロリと涙をこぼした。零れた涙は滝の様に止まらず、どんどんスープの中に入っていく。けれども、止めることなどできなかった。
男はそんなジョアンを見つめて、そっとその頭を撫でる。その仕草が、母を思い出させるようで、ジョアンの涙はますます止まらなくなった。
けれども、暫くするとそれは枯れ果てたように止まり、ジョアンの目元を少し赤くさせた。
「す、すみません、突然……」
涙を払いながらジョアンが告げると男は何も言わずに首を振った。そしてそのままジョアンの手からカップを取って、自分が持っていたカップを渡した。
「それを飲むといい」
それだけ男はジョアンに告げて、カップを持ったままどこかへ行ってしまった。
ジョアンは渡されたカップを見つめ、また一口中に入っていたスープを飲む。冷めてはいたがやっぱりスープは美味しく感じられた。

しばらくして戻ってきた男の手にはパンが乗った皿があった。ふっくらとしたパンを差し出されて、ジョアンは恐縮しつつもそれを口に入れた。とてもおいしかった。
「そういえば、君に頼みたい仕事があるんだ」
食べ終わったジョアンに向けて男は言う。ジョアンはきょとんとしながら男を見つめた。
「仕事…ですか?」
「そう、簡単な仕事さ。金に困っているんだろう?昨日あんなに言っていたじゃないか」
男の言葉にジョアンは首を傾げる。確かに金には困っているが、そんなこと目の前の男に話した覚えがない。それに、昨日この男はずっと人形に話しかけていた。そんな男の言葉をジョアンは信じる気にはなれなかった。
「変な仕事じゃない。私が書いた原稿を街のある人物に届けるだけさ。簡単な仕事だろう?」
「それは、確かにそうですけど……」
ジョアンは言葉を濁らせながら悩み始める。
そんなジョアンの様子を見ていた男は無言のまま指を二本付きつけた。
「一回で、これだけだそう」
「……二十ですか?それじゃあ割に合いませんよ」
「いや、二万だ」
ジョアンは目を見開いてその指を見つめる。
男はそんなジョアンをあざ笑うかのように言葉を続けた。
「別に、迷惑料も入ってるからね。本来なら私が行かなければならない仕事でもあるけれど、手が離せなくなったんだ」
ちらりと男は顔を横に向ける。そこにはあの人形が、やはり小さい椅子の上に座っていた。
そんな様子の男を見つめ、ジョアンは少しだけ考えていたが、それをすぐに消し去った。そして、まっすぐに男を見つめ告げる。
「……わかりました。その仕事、お受けしましょう」

その後はとんとん拍子に話は進んだ。ジョアンの仕事は男が書いた原稿を受けとって、きちんと手渡したことを確認してから戻って報告するだけ。それだけで二万ももらえる。男は月の最後には渡せる状況にすると言ってその日の昼ごろにジョアンに手渡すと告げた。
仕事の内容はそれだけだった。ジョアンはなんていい仕事なんだろうと思った。ただ街に行って手渡すのを見届けるだけ。街まで行くのはそんなに時間はかからない。
帰路の間ジョアンはずっと自分が笑みを浮かべていることに気付いていた。けれども顔がにやけるのを止めることはできなかった。
「あぁ、ただいま、母さん。聞いてくれ、とてもいい仕事が手に入ったんだ」
自分の家の扉を開けて、一目散に母の部屋に向かった。
突然ジョアンが入ってきたことに、病床の母は驚いていた。
真っ白くなってしまった長い髪の老女がそこにはいた。そしてそれがジョアンの母だった。
母は驚いた様子をすぐに一変させ、にっこりとその紅い瞳を細めてうれしそうに口を開く。
「あぁジョアン。無事だったのね。昨日は帰ってこなくて心配したのよ。さぁ、もっと近くに来て、私に元気な顔を見せて頂戴」
ジョアンはにっこりと笑って母のもとへ近づく。そして母の目線に合わせるように少しだけしゃがんだ。
「心配かけてごめんよ、母さん。でも、もう大丈夫。これから生活もきっとよくなるからね」
母がそっとジョアンの頬を撫でる。ジョアンの記憶にあった綺麗な手と、もうだいぶ違う今の母の手。骨と皮だけの細い指が何度も優しく頬を撫でた。
「あんまり無理はしちゃだめよ」
「わかってるよ」
ジョアンは頬を撫でる母の手に自分の手を重ねた。

それからというものはジョアンにとっては平穏で、そして変わらない日々が続いた。
順調に進んでいく簡単な仕事。あまりにももらいすぎているからと、時折ジョアンは男の庭を整えた。雑草を抜き、綺麗な花を植えていく。塀だって、きちんとしたものを作り直して庭を囲むように置いていった。
その作業を男は時折見つめ、そして偶にだけれども自分の境遇を話すことがあった。
男は、昔は家族三人でここに住んでいたようだった。美人で気の優しい妻と、元気な一人娘。男は作家で、娘が楽しむような話を書いてはそれを読み聞かせ、そしてそれを世に発表してきた。そんな幸せな日々が永遠に続くと信じてやまなかった。
しかし、二人は殺された。その日は突然男に訪れた。男が仕事で家を留守にしていた間に、二人は盗賊か何かに殺されたのだ。死体はばらばらに切り裂かれて無残なものだった。
それからはあまり記憶がないらしい。今は娘の形見のあの人形と二人で暮らしているようだった。
ジョアンはそれを聞きながら、男に同情した。なんてかわいそうな人なんだろうと。
けれどもそれを男に告げることはなかった。この時に告げていたら、何かが変わっていたかもしれないのに。

季節はどんどん冬が近づいてきていた。
けれどもジョアンはあまり生活のことについての心配はしていなかった。男からの金がだいぶ有り余っている。今年は裕福に年を過ごすことができると、ジョアンは考えていた。
しかし、一つだけ気になることがあった。
巷をさわがしている殺人鬼の話である。最初は街だけでの話だったのに、冬に入る前にはこの村にまでやってきたらしく、とうとう被害者が出てしまった。それ以来そいつはこの村の住人をどんどん無差別に殺していっている。
殺人鬼はバラバラに死体を切って、時折どこかの部分を持ち帰っていた。ジョアンの幼馴染だった粉屋のマリーもこの事件で命を落としていた。その時はマリーの首の部分だけが無くなっていて、あとはバラバラに置かれていた――
ジョアンは急に寒気を感じた。手に持っていたパンの入った紙袋を抱え込み、少しだけ足を速める。辺りはもう暗くなっていた。

何か嫌な予感がする、ジョアンは無意識に思った。
けれど、家はもうすぐ近くでジョアンはそのことが杞憂かと思った。ほっと安心して家に入った。
しかし家の中は何故か、かなり寒くなっていた。ランタンにも暖炉にも火がついていない。

「…母さん?」
返答はなかった。
ランタンに火をつけ、それを持ち上げる。ランタンの火によって辺りは薄暗いながらも明るくなった。
そこでジョアンは思いもよらないものを見る。母の部屋の扉が開いていた。普段はきちんと閉まっている筈なのに。暗くて部屋の中までは見れないが、この静けさはおかしいとジョアンは思い始めた。
「眠ってるのかい、母さ……」
ジョアンは言葉を紡げなかった。部屋には確かに母らしきものがいた。
部屋は紅く染まっていた。まるで母親の瞳の色の様に鮮やかに。
ベッドには母の手足がバラバラに置いてある。頭は床に転がっていた。あの紅い綺麗な瞳があった個所は仄暗い闇があるだけで瞳はない。そして頬には涙の様に血が流れていた。

「え、母さん…?そんな、嘘だ。嘘だ!」
ジョアンの叫びの様な悲鳴が部屋の中に響き渡った。

数日間、ジョアンは自分が一体どんなふうに過ごしていたかなんてわからなかった。覚えているのは、真っ赤な部屋と転がった首。たったそれだけだった。
月の終わりが近づいていたけれども、ジョアンは男のもとへ行ける状態でなかったし、行く気なんてなかった。
ジョアンは冬が過ぎるまでずっと家に閉じこもっていた。その間、村の誰かがやってきて何かを言っていた気がするのだが、もうそれすらジョアンは覚えていなかった。
手元にはもう、用のない大金。そして寒くなった家。虚無を抱えたこの心。
ジョアンは少しずつ、自分が自分で無くなってゆく感覚を感じた。けれどもそれを止めることも抗うこともできないまま少しずつおかしくなってゆく。

そんな日々を過ごしていたジョアンは、ふと玄関である扉の下の方に手紙が置いてあることに気付いた。外で隙間から差し込んだのだろう、所々土がついている。
封筒には何も書かれていない。怪しみながらもジョアンは封筒を開けて中の便箋を取り出す。
そこにはこう書かれていた。

『親愛なるジョアン君へ
 ようやく娘が帰ってきたんだ。そこで娘のためにパーティをしようと思う。是非来てほしい。娘も君に逢いたがっている。
 では、いつもの通り私の家で待っている』

読み終えたジョアンは少し考えてから身支度を整え始めた。もうどこか自分がおかしくなっていることを知っていたから、何も警戒なんてしなかった。
死んだ人間が生き返ることなんてないと解っていながらも。それを疑問にも思わずに。

男の家に付くと、ジョアンはその家の変わり様に驚いた。庭も、家も綺麗に整っているのである。庭の方は少しだけ雑草が生えていたが、それも気にならない程だった。明らかに自分が整えたときよりも綺麗になっている。
「やぁ、来ると思っていたよ」
いつの間にか扉が開いていて、そこから短めのさっぱりとした黒髪の男が立っていた。薄く笑ってジョアンを見ている。
「綺麗だろう?さすがにあんなに汚いとアリスが嫌がるからね。整えたんだ」
さぁ、どうぞ。男はまるで執事の様に優雅に一礼して扉をジョアンが通りやすいように開ける。
そこでジョアンはこの目の前の男が、あの作家であることに気付いた。
中の様子もだいぶ変わっていた。以前よりもやはり格段に綺麗になっているのだ。そして、入ってすぐの目の前の壁に以前はなかった扉が付いていた。
男はその扉もあけて、ジョアンに入るように促す。
恐る恐るその扉の中に入っていくとそこは温室だった。ジョアンが知らない木々や草花が植わっている。そして天井はガラス張りで青い空がそこには広がっていた。
「早く早く、こっちだよ」
立ち止ったジョアンの手を取り、男はさらに奥へと促していく。
奥の開けた場所に、見事な彫刻が彫られた白いテーブルが置いてあった。その上には三人分のティーカップ。男はジョアンに一番手前の席に座るよう告げた。そして自身はジョアンの左側に座る。彼の向かい側、ジョアンの右側には目を閉じているあの人形が座っていた。

「さぁ、はじめよう。アリスのためのパーティーを!」
にっこりと笑って、男は人形にしか見えない娘を見つめている。
ジョアンは目の前のティーカップを持ち上げ、少しだけ飲む。その間男は頻りに人形に話しかけ、そして見つめていた。
「……どうだい、アリス。おいしいかい」
幸せそうに人形を見つめる男。
そして、

「…………えぇ、とってもおいしいわ」

どこかで聞いたような声がその場に響いた。
ジョアンははっとして、人形の方を見る。目の閉じていた人形は、今やもうぱっちりと目を開け、優雅にティーカップを持ち、まるで本当の人間の様に振る舞っていた。ジョアンが見つめていることに気付くと、にっこりとその紅と蒼い瞳を細めて笑う。
その紅い瞳に、ジョアンは見覚えがあった。母の瞳、そっくりなのである。
「ねぇ、お父様。私お腹が減ったの。この人がとってもおいしそう」
人形が、いやアリスがその小さな指でジョアンを指さす。そして、綺麗な顔を歪めて微笑んだ。
背後に悪寒を感じて、ジョアンは振り向く。そこには男が、悲しそうな顔をしながらナイフを振り上げて立っていた。

「わかったよ、アリス」
ナイフが振り下ろされる。
走馬灯のように駆け巡った記憶の中で、ジョアンが思ったことはただ一つ。

――あの声は、マリーのものだ



割のいい仕事なんて世の中にあるはずないのに。
どうぞ、皆さんもお気をつけを。
さて、次の話の前に少しだけお時間をいただきましょう。
語り手が疲れるのは当たり前でしょう?



ぱたんと本を閉じた男は、目の前の少女に視線を向けた。

少女の瞳はもう閉じられていて、眠ってしまっている。薄く開いた桜色の唇から穏やかな寝息が小さく聞こえた。
「やれやれ、困った子だ」
男は椅子から立ち上がって、こっそりと少女に近づく。そしてゆっくりとその小さな体を抱き上げた。
「こんなところで寝てしまうと、風邪をひいてしまうよ、アリス」
慈愛に満ちた瞳で抱き上げた少女を見つめ、男は囁いた。
そしてゆっくりと歩いていく。
「さぁ、もう眠ろう。大丈夫だよアリス。続きは子守唄の様に聞いていればいい。そうすれば、君の願いは叶うのだから」

最近のこと

完璧に夜型の人間になったせいか、なかなか早々に眠ることができなくなりました
そのせいで朝に起きれません。起きたらもう昼になってます
私としてはこの状況をなんとか打破したいのですが、そう簡単に生活リズムを変えられるはずもなく……
今日までこんな自堕落に生活してましたが、明日からは……!と希望を持って今日は眠りたいです
取りあえず、目標は二時前に寝ることでしょうかね

そういえば

このブログの方にオリジナル小説を移動させますので、今まで支部の方に挙げていたものを削除しました
順次、こちらの方に載せていく予定です
一応、「倉庫」から飛べるようリンクを張り付ける予定ですが……大丈夫かな?
ですので、少々お待ちを〜

描いてみた

久しぶりに描いたー!!
この設定たちを見つけて、描いてみたけど昔の方がまだマシだったorz
でも描けて満足しました!!
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