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新入生たちとゲームをしよう編 屋外編その1

さて、部長に連れられて不良の外見をした彼らがやってきたのは校舎裏の雑木林だった。旧校舎裏にはうっそうとした林が広がっている。創立前からこの場所には林が広がっていたらしい。昼間は木々の隙間からの木漏れ日があって、明るい印象だ。昼休みになれば、生徒たちの絶好の散歩スポットとなっていた。

けれども、今は夕方なので林の中は暗い。がさがさと風で揺れていて、何かが突然出てきそうな雰囲気である。

先頭を歩く部長は林の手前で止まった。

「そうそう、ゲームの前にこれにサインしてくれる?」

胸ポケットから四つ折りにされた用紙を取り出し、リーダー格の少年に渡した。ついでにボールペンも渡す。

「……なんだよ、これは」

「ただの契約書さ。さっき話したこととかが書いてある」

「勝ったら君らの好きにしていいってことが、堅苦しい文章で書いてあるよ。君らは人数が多いから……僕としては、代表として君にサインしてほしいな」

用紙を渡された少年は舌打ちして、名前を記入した。そしてろくに文章も読まずに、そのまま部長に用紙を返す。

「おら、これでいいんだろ」

「……確かに受け取ったよ」

綺麗にまた四つに折り直して、部長は胸ポケットに用紙をしまいこむ。

「うん。それじゃあ、これから一応ゲームのルールを説明するね」

きょろきょろと周囲を見回し、近くの草むらに手を入れる。大きくて、黒いビニール袋ひょいと軽そうに取り出した。そして取り出されたビニール袋を、部長がリーダー格の少年に渡す。渡された少年は訝しながらそれを受け取った。

「なんだよ、これ」

「その中には、一応防弾チョッキ的なのと無地のシャツ、あとペイント弾が詰まってる銃が入ってるよ」

「ペイント弾?」

「そう、ペイント弾。これからここで君たちはサバゲーもどきをして、僕らとゲームするんだよ」

――君たちって、そういうゲーム好きでしょう? 部長が、小さく首を傾げる。

その首を傾げた部長の瞳を見た彼らは突然、寒気を感じた。部長の黒い瞳には、何かしらの感情が浮かんでいたというのに、今は何もない。まるで黒い空洞のようだ。それでいて、顔はまるで能面のような顔つきで彼らを見ている。

ここで何人かは「とんでもない何かと自分たちは対面しているのでは」と思い始めた。あの瞳を見ると変に寒気を感じるし、猛烈に鳥肌が立っている。ちらりと横目で暗い林を見れば、まるで自分たちを飲み込んでしまうような恐怖を感じた。

「……なんか、嫌な予感がする」

彼らの中の1人がぽつりと呟いた。その周囲にいた少年たちは顔を真っ青にさせた。

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