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ゲーム部 番外編1

〜部活紹介〜

「ゲーム部だ。活動は、主に各自得意なゲームをして、その腕を上げている。活動は毎日放課後集まって活動している。たまに休日も活動を行っているが、これに関しては三か月に一回くらいか。合宿もある。合宿は己のゲームの腕をさらに上げるために、去年は不眠不休で各自の得意なゲームを交代で行なった。こんな感じでゲームしか行なっていないが、この部に入れば、絶対に自分の得意のゲームの腕を上げることはできる。入る価値は絶対あるはずだ。ゲームが好きな人は是非見学に来てほしい。ちなみに余談だが、俺が得意なのはトランプゲームだ」

+副部長の心の声 ver

「ゲーム部だ。活動は、主に各自得意なゲームを(命を懸けて)して、その腕を上げている。活動は毎日放課後集まって活動している。(まぁ、来てない奴もいるが)たまに休日も活動(山本兄のためのサバゲー)を(部員全員で協力して)行っているが、これに関しては三か月に一回くらいか(そうでないと体力がもたない奴がいるからな。特に時岡とか)。合宿もある。合宿は(毎年開催されるゲーム好きのための全国ゲーム大会の前に)己のゲームの腕をさらに上げるために、去年は不眠不休で各自の得意なゲームを交代で行なった。(そうでないと優勝は難しいからな。それにしても去年の合宿は、最終日に体力を使う鬼ごっことサバゲーが割り振られていたが、今年はどうなることやら……)こんな感じでゲームしか行なっていないが、この部に入れば、絶対に自分の得意のゲームの腕を上げることはできる。入る価値は絶対あるはずだ。ゲームが好き(で命を懸けてまでゲームをできるよう)な人は是非見学に来てほしい。ちなみに余談だが、俺が得意なのはトランプゲームだ」


〜会議の裏側 部長と副部長〜

「それにしても、突然どうしたんだ」

「えー、何が?」

きょとんと彼がこちらに視線を向ける。相変わらず内心が読めない奴だ、と副部長は悪態をついた。カードゲームが得意な副部長は、ポーカーフェイスも上手い。表情を変えるのが面倒で、基本無表情である。だから内心何を思っているのか分からないと言われるが、部長は違う。

彼は故意に人をおちょくるような表情や、にこにこと笑いながら、己の感情を消している。腐れ縁だから副部長はそのことを知っている。部員たちの前では素直に感情を曝しているようだが、クラスメイト達の前では時折、感情を消して道化を演じている。この状態になったらこっちが折れて大人しくするしかない。

「……一年を勧誘だなんて、俺は別に不要な気がするが」

「あぁ、そのことか」

部長が獲物を見つけた猫のように目を細めた。ニンマリと口角を上げる。

「僕だって本当はそんなやる気はないんだよ。でもさ、ほら、最近みんなが上がってるのになかなかそれを見せる機会がないだろう? だから、これを機に本気のみんなを見てみようと思ってさ。我ながらいい考えだと思うんだけど、どう?」

「そんなことだろうと思ったが……真面目に今年の一年がかわいそうに思えてきた」

「えー、先にシメておかないと後が大変になるだろう?」

部長の口を尖らして拗ねた口調に、副部長は呆れた顔つきを浮かべた。そしてまだ見知らぬ一年に心の中で合掌するのだった。

新入生たちとゲームをしよう編 屋外編その2

挫けそうになる気持ちを奮い立たせ、リーダー格の少年は受け取った袋を開けた。中にはたしかに、言われた通りの品が入ってる。

「つか、シャツに着替えるのってここでか」

「いや……さすがにここではちょっと……」

リーダー格の隣に立っていた1人が周囲を見回す。薄暗いとはいえ、すぐ後ろを見れば校舎は近い。校舎裏で、人気は少ないからといって誰かが来ないという保証はない。その上、すぐ後ろを振り向けば校舎が見える。窓から見ればすぐに目が入るこの場所を、誰かが見ることもあるかもしれない。

幾人かがちらりとちらりと、校舎を気にする仕草を見せる。その仕草に気づいた部長は、彼らとその視線の先とを見て「あぁ」と手を打った。

「もしかして、あっちで着替えたい? そうだよね……ここ、一応外だし、側から見たら変質者だと思われちゃうかもだよね」

その状況を作ったのはお前だ、と彼らは声を大にして伝えたかったが、ぐっと言葉を噛みしめた。

「気が利かなくてごめんね。ちょっと待ってね」

「たしか……ここに……」と部長がズボンの後ろから小型のトランシーバーを取り出した。

「あー、テステス。そっち聞こえてますか」

『……なんだよ、悪魔』

雑音が少しだけ紛れた後に、不機嫌そうな声が聞こえた。

「申し訳ないけど、そこでもう少し待機してもらってもいい? かわいい後輩たちが着替えたいんだって」

『は? 着替えさせてなかったのかよ』

「いや〜、すっかり忘れてたんだよねぇ。道具詰めるときは覚えてたけど、まぁ覚えてたのはそのときだけだよね」

『はぁ〜? そこは覚えておけよ。無駄な知識は覚えてんのに、必要なことは忘れてんなよな』

トランシーバーから、舌打ちが聞こえる。相手は声からして不機嫌そうだが、部長はやり取りの最中終始笑顔だった。ただし、それは意地の悪そうな笑みである。

「ごめんね〜。そこ寒いだろうけど、もう少し待ってて欲しいなぁ。きっと妹ちゃんも、お兄ちゃんは優しい人だからきっと待ってくれると思います、って思ってるよね〜」

『アイツの言うことは絶対に決まってる。しゃーねーな、待ってやんよ!』

――うわ、単純

このとき、新入生たちの心は1つになった。

「このことはしっかり妹ちゃんに伝えておくからね! じゃあよろしく」

トランシーバーを切って、部長が再びズボンの後ろに戻す。どうやら、ベルトの部分に引っ掛けているようだ。まっすぐ伸びたアンテナ部分が腰に当たっているのだが、部長は気にせずに上着の中にそれを隠す。

「ん? 何かなその顔? 何か言いたいことがある?」

「イイエ、何もナイです」

「そっかー、何もないならいいんだ。じゃあ、着替える場所に案内するねー!」

すぐさま一人が答えたが、片言になっている。それに気づかず、こっちこっちと軽く手を振る部長の姿に、ぞろぞろと彼らは続いた。その足取りは、なぜか重かった。

着替えが終わると、もう一度林の前に集まる。全員大人しく白いシャツを来て、ズボンも体育着のジャージズボンに履き替えている。これは上着を着替え始めた時に、部長が「あ、できればズボンも履き替えた方がいいかも〜」と言ったからだ。

「体育着って、君たちもらってる? ジャージみたいのなんだけど。持ってないなら君たちの分持ってくるけど、どうしようか」

問われた彼らは、お互い顔を見合わせる。一体これから自分たちに何が起こるのだろう、そんな不安に満ちた瞳を互いにしている。

嫌な予感は、時間が過ぎていくごとに増している。これから行われるのはサバゲー、いわゆるサバイバルゲーム、しかもご丁寧にペイント弾を使うらしい。せっかく新調した制服が、ペイント弾で汚れてしまうのは困る。それ以前に、ペイント弾って洗濯で落ちるのだろうか。

「あのー、ズボン借りてもいいっすかね?」

恐る恐る1人が手を挙げた。1人が手を挙げると、幾人かがちらほらと手を挙げる。部長は挙げられた手の数を数え、「半数かー、ちょっと待っててね。今から持ってくる」とすぐさま走って行ってしまった。半数も手を挙げていたのかと思うと、自分だけではないんだと手を挙げていた数人は少し安心する。

意外にも出て行った部長が戻ってくるのは早かった。手の中には大量のズボンが収まっている。

「片っ端から借りてきててよかった! 備えあれば憂いなし、だね!」

誰も「借りてたやつがあったのかよ!!」とツッコミを入れることはなかった。

「じゃあ、僕はさっきの場所で待ってるから。着替え終わったらこっちに来てね」

部長は大量のズボンを教卓の上に置く。「たっのしみだなぁ〜」とズレた鼻歌を歌いながら、彼は教室を出て行ってしまった。

それを見て1人が「これってさ、今なら逃げるチャンスかな?」と呟いたが、誰もそれに答えることはなかった。その上お互いに牽制しあって、というよりは逃げるなんて許さないと見合っていたからか、1人も欠けることなく結局は集合場所に戻ったのだった。

2017/12/17 修正

新入生たちとゲームをしよう編 屋内編その1

さて、林の前で彼らが顔を真っ青になっている頃。部室に残った生徒たちも同じく顔を青くしていた。ちなみに、ほとんどが紙を手にしたまま固まっている。
「とりあえず書いて部員の方たちと勝負しないと、ここから出られませんよー?」
――そんなに怖がることないと思うんだけどなぁ、と山本妹は新入生たちを見て思う。彼女は、ゲーム部の部員はただのゲームの好きの人たち、としか思ってはいない。だから、部員の人たちはゲームをして新入生と遊びたいだけなんだろう、という認識しかなかった。――ただゲームをするだけなのに、どうして新入生たちは怖がっているだろう。皆さんいい人たちなのに。山本妹は首を傾げた。
この時点でお気づきだろうが、彼女はあまりゲーム部のことを知らなかった。(むしろ知らされていなかったということが正しい)ゲーム部に所属してはいるが、もっぱら事務仕事が彼女の担当だった。

そんな中で1人の男子学生がブルブルと震えたかと思うと、突然立ち上がった。
「もう、意味わかんね……ちくしょう、やってやる。やってやんよ!勝てばいいんだろ、勝てば!!」
ヤケを起こしたように頭を掻き毟り、キッと副部長を睨んだ。睨まれても副部長の表情は変わらない。うすら笑みすら浮かべている。その様子を見た男子学生は「くっそ、見てろよ」と一言吐き捨て、副部長の待つテーブルに近づく。副部長の、テーブルを挟んで向こう側に立つと、備えつけられた椅子を思いっきり引き寄せて、深く座る。
「僕が得意なのは、カードゲームでね。あいにく手持ちはトランプしかないから、トランプゲームでいいかな? あぁ、その前に用紙を渡してもらえるかい?」
「……ほらよ」
副部長は手渡された紙に名前が書いてあることをさっと確認して、山本妹に渡す。
「はい、確かに受け取りました。こちらが控えです」
彼女は生徒に控えを手渡すついでに、小声で「頑張ってくださいね」と告げる。生徒は話しかけられたことに驚き慌てて彼女を見返すが、その時にはもう彼から遠ざかっていた。
「ゲームの選択肢は君に委ねる。どのトランプゲームを君は選ぶ?」
トランプがテーブルの真ん中に置かれる。生徒は置かれたトランプをじっと見つめてから、口を開けた。
「トランプゲームの中なら、俺は七並べを選ぶぜ」
「……七並べ? それでいいのかな?」
ゆっくりと繰り返された言葉に、生徒は勢いよく頷いた。副部長の余裕そうだった表情が、今はやけに驚いた表情を浮かべている。
「……意外だね。てっきり君ならババ抜きで来るからと思っていたよ」
その一瞬、生徒は目の前の人物が何を言っているのかわからなかった。呆然となった頭はしばらくそのままだったが、時間が経つにつれて思考回路が元に戻れば言われた言葉の意味を理解する。そして口から零れた言葉は最大の嫌悪だった。
「は? あんた、人のこと単純そうな馬鹿だと思ってんの?」
「そんなこと思ってないよ。ただ、2人でトランプゲームをするなら、たいていはババ抜きが主流だろう? だから、僕も君がババ抜きを選ぶと思ってしまったんだよ。これっぽっちも君を馬鹿にはしていないし、思ってもない」
けれど、と彼は言葉を続ける。
「君を勘違いさせてしまったのは申し訳ない。ここに謝罪しよう」
きっちり下げられた頭を見て、ぼそりと「……あんたくっそ真面目なやつってよく言われたことない?」と訊ねる。すると、「よくわかるね。知り合いには毎回言われてる」と返答された。新入生は呆れて物がいえない。
「さて、仕切り直しといこうか。七並べで構わないんだね」
生徒がゆっくりと首を振る。その様子を見て副部長は、テーブルの中央に置いてあったトランプを指さして「カットは君に任せるよ」告げた。

生徒は恐る恐るとカードを手に取った。

新入生たちとゲームをしよう編 屋外編その1

さて、部長に連れられて不良の外見をした彼らがやってきたのは校舎裏の雑木林だった。旧校舎裏にはうっそうとした林が広がっている。創立前からこの場所には林が広がっていたらしい。昼間は木々の隙間からの木漏れ日があって、明るい印象だ。昼休みになれば、生徒たちの絶好の散歩スポットとなっていた。

けれども、今は夕方なので林の中は暗い。がさがさと風で揺れていて、何かが突然出てきそうな雰囲気である。

先頭を歩く部長は林の手前で止まった。

「そうそう、ゲームの前にこれにサインしてくれる?」

胸ポケットから四つ折りにされた用紙を取り出し、リーダー格の少年に渡した。ついでにボールペンも渡す。

「……なんだよ、これは」

「ただの契約書さ。さっき話したこととかが書いてある」

「勝ったら君らの好きにしていいってことが、堅苦しい文章で書いてあるよ。君らは人数が多いから……僕としては、代表として君にサインしてほしいな」

用紙を渡された少年は舌打ちして、名前を記入した。そしてろくに文章も読まずに、そのまま部長に用紙を返す。

「おら、これでいいんだろ」

「……確かに受け取ったよ」

綺麗にまた四つに折り直して、部長は胸ポケットに用紙をしまいこむ。

「うん。それじゃあ、これから一応ゲームのルールを説明するね」

きょろきょろと周囲を見回し、近くの草むらに手を入れる。大きくて、黒いビニール袋ひょいと軽そうに取り出した。そして取り出されたビニール袋を、部長がリーダー格の少年に渡す。渡された少年は訝しながらそれを受け取った。

「なんだよ、これ」

「その中には、一応防弾チョッキ的なのと無地のシャツ、あとペイント弾が詰まってる銃が入ってるよ」

「ペイント弾?」

「そう、ペイント弾。これからここで君たちはサバゲーもどきをして、僕らとゲームするんだよ」

――君たちって、そういうゲーム好きでしょう? 部長が、小さく首を傾げる。

その首を傾げた部長の瞳を見た彼らは突然、寒気を感じた。部長の黒い瞳には、何かしらの感情が浮かんでいたというのに、今は何もない。まるで黒い空洞のようだ。それでいて、顔はまるで能面のような顔つきで彼らを見ている。

ここで何人かは「とんでもない何かと自分たちは対面しているのでは」と思い始めた。あの瞳を見ると変に寒気を感じるし、猛烈に鳥肌が立っている。ちらりと横目で暗い林を見れば、まるで自分たちを飲み込んでしまうような恐怖を感じた。

「……なんか、嫌な予感がする」

彼らの中の1人がぽつりと呟いた。その周囲にいた少年たちは顔を真っ青にさせた。

新入生をお出迎えしよう編 その2

新入生たちは突然の出来事についていくことができず、ざわめいて周囲を窺った。しかし、周囲には自分と同じような顔つきの生徒しかいない。つまり、誰もこれから何が起きるのかわからないようだ。
それに対して、これから何が起こるのかを知っている側の部長や部員らは意地の悪い笑みを顔に浮かべている。新入生たちの混乱のざわめきを見て、どうやら楽しんでいるようだ。
「はーい、静かに!これから入部テストのルールを説明するよー」
勝手に新入生が出て行かないようにと、部長が扉の前に立っている。その隣に、ほんの数分前まで新入生たちとカードゲームをしていた副部長が立っていた。服装は変わらずディーラー服である。
「ルールは簡単!今あるゲームの中で部員の誰かに勝てれば、新入部員として入部確定だよ!一回勝負だから、頑張ってね」
部長の「勝てば入部できる」という言葉に、新入生たちは一瞬だけやる気を見せた。が、それはすぐに霧散する。
さっきとは打って変わり、何故か周囲の空気が重くなっていた。新入生たちが重たい空気の中で恐る恐る周囲を見回してみれば、今まで温厚な顔つきだった部員たちの目がギラギラとした目つきに変わっている。まるで蛇に睨まれた蛙のように、彼らは身動き1つ取れなかった。
「自分がこれなら勝てそう、って奴で勝負して欲しいな」
部長はかけていた眼鏡を外した。着ていた学ランの胸ポケットに、外した眼鏡をゆっくり入れる。新入生の顔を一人一人とじっくり見てから、にっこりと微笑んだ。
「君らの挑戦に、僕らは全力で応えるから、どうぞよろしくね。さぁ、始めようか楽しいゲームを」
これから演奏を始める指揮者のように、部長が深くお辞儀して見せた。それに伴って、ギラギラした目つきの部員たちがザッと席から立ち上がり、今まで使っていたゲーム綺麗に整え始めた。人生ゲームの紙幣やらはきちんとお札立てに片付けられ、ドンジャラのパイも最初の形に直された。
先程の姿とは打って変わって、もくもくと一身に整理を始める部員たちの姿に、新入生のほとんどは怯えをみせる。けれども怯える目たちの中には、ニヤニヤとした意地の悪い瞳もあった。そう、あのガラの悪そうな生徒たちである。
彼らは部室の隅に集まって何やらこそこそと話し込んでいた。おそらく、乗っ取りの算段だろう。
部員たちがゲームを整え、新入生らがその変わりように目を奪われているうちに、部長がそっと彼らに近づいた。そして、その中の1人の肩を叩く。
「……君たちはこんなゲームよりも、身体を動かすようなゲームの方がいいだろう? 外にぴったりなのを用意したから、移動しようか。詳しい説明は向こうでするけど、君らが何をしてもいいようなゲームを用意したよ。もし君たちが勝ったら、入部を認めるし、君らの好きなようにしてもいいよ」
ガラの悪そうな連中は、部長の言葉を聞いて一層笑みを深くした。「これはいい鴨がやってきた」きっと、そう思っているに違いない。
「さて、どうする? ゲームをするかい?」
「……もちろんするに決まってんだろ。なぁ、お前ら」
リーダー格の1人が同意を求めるように声をかけると、全員が首を振った。
「なら、移動しようか。副部長、ここは君に任せるよ」
副部長はさっきまでいた席に座り、トランプをカットしながら頷いた。
部長がガラの悪い生徒たちを連れて部長を出ていく。彼らが出て行ってすぐに副部長は鍵をかけ直した。幸い、鍵のかかった音は新入生たちの耳には入らなかったようだ。
「山本妹!新入生たちに用紙を配れ!」
「はい、わかりましたー!」
部室の奥から1人の少女が用紙を手に持ち、現れた。セミロングでセーラー服を着ている小顔の少女だ。新入生一人一人に手に持っていた用紙と鉛筆を配りそのたびに、にっこりと笑みを向ける。配り終わると、全員が用紙を手にしていることを確認してから唇を開いた。
「皆さんが手にしてる用紙は、これから部員たちとゲームするにあたって守って欲しい約束事が書いてあります。1つ目は部員たちとゲームして負けたら入部の資格がなくなること。2つ目は今日の出来事は他言無用ってこと。これらとその他こまごまとしたことが書いてある、ただの契約書みたいなものです。まぁ、もうここに皆さんがいらっしゃっているってことはこれを守ってもらわないと部室から出られないんですけどねー」
だから大人しくサインしてくださいね、と彼女は笑った。
その様子を見て、新入生たちが思うことは1つだった。
(あれ?もしかして俺たち、選択間違った??)
最初はただ、興味本位で部活見学に来ただけだった。それなのに今は部活の入部を賭けて、部員と勝負しなければならない状況になっている。そして勝負しなければこの部屋から出られない。明らかにこの異様な状況は、ただの部活見学ではないことは確かだった。けれども誰一人としてこの状況に異を唱えることは、何故かできなかった。

「さて、部員たちの準備もできたみたいだね。用紙にサインして、彼女に渡した人から、かかっておいで」
余裕の表情の副部長がトランプカードの束を静かに机の上に置いた。



新入生たちとゲームをしよう編に続く。

登場人物 2年(追加)

登場人物 2年生 (追加)

山本(妹)部活のマドンナ的な存在。経理担当。ゲーム?何それ状態の子。「皆さんが楽しいならそれでいいんじゃないですか。」
自分が兄の人質だとは気づいていない。双子の兄のことは好きだが、、NOt恋愛感情である。


山本(兄)双子の兄の方。サバゲーが得意な2年生。ケンカも強い。
妹を守るために、強くなった結果がコレ。部長らから勧誘されていたが拒否を続けていた。
ら、妹が入部していたので自分も結局入部するハメになった。
部長、副部長には口で勝った例がない。いつか妹と二人で退部することだけを考えている。

新入生をお出迎えしよう編 その1

入学式が終わると、その数日後の全校集会で在校生と新入生が顔合わせをすることになる。それは「新入生歓迎会」と称し、わざわざ授業時間を潰してまでも行なわれた。
その時に校内の部活動の紹介がされる。最初は運動部系の紹介から始まって、次に文化部系に移る。大抵は部長が淡々と活動を話したり、分かりやすいようなパフォーマンスを行ったりと、この時だけは新入生だけでなく、在校生もがやがやと騒々しくなる。
その中でゲーム部は、なぜか部長ではなく副部長が壇上に上がり、部活の紹介をしていた。冷静にゲーム部がどのような部活か話しているが、着ているのは制服ではない。彼の勝負服である、ディーラー服を着込んで話している。
ゲーム部の面々や、ゲーム部について何かしら理解している者はそれを見て、「あぁ、やる気になってんなぁ、副部長」とか思うのだが、見慣れない他の人々にとってはただのコスプレにしか見えない。しかも紹介もただ「ゲームしているだけ」くらいしか彼は話さなかった。
そのため、その時点で新入生にはゲーム部が「真面目に」ゲームをしている部活だと思われるはずもない。紹介が終わった後の、主に新入生たちの方から聞こえるざわめきを耳にして部長はにんまりと笑う。
――ここまでは全て予定調和。ここからが、ゲーム部にとっての勝負所だ。

***
放課後になると、新入生たちが各自で興味を持った部活動の部室へと足を運ぶ。それは1人で、だったり入学式からそれほど時間が経ってはいないけれども、気の合った人たちと一緒に部活巡りをしていく。そのおかげで、普段は比較的静かな旧校舎も活気に溢れていた。
――さて、ゲーム部の部室は?といえば。
これまた意外にも、多くの新入生で賑わっている。彼らは、部員らが用意したボードゲームやカード、はたまたテレビゲームに群がって、一緒にゲームを楽しんでいる。
しかし、その中にはガラの悪そうな人が少なからずいた。部員たちは、その招かざる客の存在に気づいていたが、あえて何も言わなかった。新入生相手に、ただ純粋にゲームに買ったり負けたりと楽しんでいる。
――なぜかって? だってまだ、彼らは何も指示されてない。部員たちは、前もって部長から「今日は手を抜くように」と言われていた。これは、本当は部長ではなく、副部長の入れ知恵なのだが。
この部が、最初から新入生に本気でゲームする部とは絶対に思われない。きっとガラの悪い連中が、自分たちの新たな居場所を求めてこの部に来るはずだ。旧校舎は、その点で一番適している建物といえる。その上このゲーム部の部室は、実をいえば旧校舎の1階に居を構えている。近くには大木が植えてあり、夏場はちょうどそれによって日陰が作られて涼しいのだ。部室内にクーラーが設置してあるのだが。
ここまで好条件な部室の上に、一見すれば一番暴力に弱そうな外見の部活である。暴力で訴えるのが得意な彼らにとってすれば、この部室を奪うのは容易いと思うだろう。きっと、「簡単にこの部屋を奪い取れる」と考えているに決まってる。
それはこの部が、真面目な部活とは思われていないからだ。たとえば運動や演奏に、青春を捧げる陸上部や吹奏楽部は、傍からみれば「真面目な」部活だ。それに比べれば、ゲーム部はただ娯楽のためだけに活動する部だと思われても仕方ない。
だが、真実は違う。部員たちは、全員がいつでも本気でゲームをしている。だから、部長と副部長は「自分たちがゲームを使って、新入生を見極めるしかない」と思っていた。自分たちのように、本気でゲームを楽しみ、生命を賭けるくらいにゲームに全てを捧げられる覚悟ができる人しか部員としては認められない。それが部長の考えだった。
頃合いを見計らって部室を見回し、部長は部員たちに密かにサインを送る。前もって、それは決めていた。伊達眼鏡を外し、レンズを拭く動作がそれだった。念入りに眼鏡を拭いてから、かけ直す。もう一度部室を見回せば、そこには部長が見慣れている、本気の顔つきとなった彼らがそこにいた。
こっそりと、部室に一つだけの扉に部長が近づいて、鍵を閉める。ニンマリと笑みを浮かべて、一安心。これで、これ以上新入生は来れないね。
「よし、じゃあとりあえず、今ここにいる新入生たちだけに入部テストを行なうよ!あ、入部テストって言っても、入部資格があるかないかのテストだからね!」
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