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死刑宣告




「ボク、ノボリなんて嫌い」

 その台詞を耳にした瞬間、私の動きは唐突にスイッチを切られた自動人形のように静止した。真後ろからいきなし後頭部にぶっつけられた言葉は、鈍い音を立てて私の胸に突き刺さった。
 全く無害のつもりで居たら、突然胸倉を掴み上げられて、自分の存在を疎ましい、目障りだと、吐き捨てられたようなものだった。
 私は首を軋らせて後方を振り返った。

「ク、」
「ノボリ、嫌い」

 世界で一番大切な存在は、常と変わらぬ笑みではっきりと言った。弧を描くそこから発せられたそれは、ただ淡々と私の心を揺るがす。籠る感情の薄さが更に私のショックを膨らませた。
 なーんて、嘘だよ。いつものクダリならすぐにそう言うだろう。私が狼狽えている姿を見て楽しんでいるだけなのだ。芝居だ、寸劇だ、夢だ、幻だ。

「ごめんね?」

 何故謝るのでしょう。何故申し訳無さそうに嗤っているのでしょう。
 真っ直ぐな残酷を、真っ暗な世界の中で聞いて、ついていけない頭だけが能天気なことを述べた。
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