ジョイサウンドの全国採点オンラインで、鬼束ちひろ「育つ雑草」と、谷山浩子「手品師の心臓」で4/11位らへんにいるヨウとかいう奴は私のことです。三位以内を目指したけど届かなかった。てか11人しかいないランキングが閑古鳥の巣箱状態で寂しいので誰か歌ってください。私を踏み台に一位目指してください。
というわけで、こんばんは。鮒目です。
今これiPhoneで打ってる時刻は25:40です。
本日は高校時代の友人・冬菜とカラオケ後、もう一人の高校時代の友人ーー彼女はHNを持たないのでここではアニアと呼ぶことにしますーーの誕生日飲み会をやりました。
カラオケは腹筋あたりに疲労を覚えるくらい歌い倒してきました。11時過ぎにフリータイムで入って16時半過ぎまでいたかな。一人勝手に平沢進メドレーしたりCoccoタイムに入ったり、冒頭で述べたカラオケ採点なんかをやってみたりしました。今までのカラオケで一番疲れた。その分とても楽しかった。
夕方からは横浜に移動し、誕生日飲み会。
アニアは文学の趣味が一番合う貴重な友人です。私に京極夏彦「百鬼夜行シリーズ」を勧めたのも彼女です。彼女と友人にならなければ、私は京極ジャンルにハマることはなかったでしょう。
昨年の誕生日プレゼントには、ロクシタンのプチギフトセットを贈りました。
今回は、京極先生がお話を考えた子供向けの怖い絵本「いるの いないの」と、角川文庫から出ているかまわぬ装画版の泉鏡花「高野聖」の二冊を贈りました。
前回ならば、ロクシタンなら絶対喜ぶだろ!と確信を持ってプレゼントできましたが、今回の品はちょっとバクチを打った感が強い選択でした。だって、誕生日のお祝いに怖い絵本て。立ち読みした時に一番最後のページでゾワッとしましたよ。でもそれをあえて選ぶという。加えて泉鏡花て。なにこのチョイス。私が貰えたなら欣喜雀躍するけど、一般的女子大生がこれを寄越されたら苦笑いされるのがオチであろう。
でも、さすが私と近い文学嗜好を持つ類友。いざ贈呈したら大層喜んでくれたのでホッとしました。京極先生ファンで、泉鏡花や三島由紀夫からなる耽美小説好き。私、まだ三島由紀夫作品読んだことないけど。
* * *
私が初めて読んだ泉鏡花作品は「外科室」という短編小説です。私、これがめちゃくちゃ好きでして。どのくらい好きかっていうと、この作品でレポート(という名の熱のこもった感想文)書いて出したらS評価もらえちゃったぐらい好きです。(先生優しっ!)
泉鏡花はオープニングの魔術師と呼ばれているそうで。
「外科室」の書き出しというのが以下の通り。
【実は好奇心の故に、然れども予は予が画師(ゑし)たるを利器として、兎も角も口実を設けつゝ、予と兄弟もたゞならざる医学士高峰を強ひて、其(それ)の日東京府下の一(ある)病院に於て、渠(かれ)が刀を下すべき、貴船伯爵夫人の手術をば予をして見せしむることを余儀なくしたり。】
一番頭の「実は……」は、〈あなたにだけ明かす本当の裏の事実〉を表しています。つまり、小説の視点主が、読者に向かって「あなたにだけ打ち明けますが…」と、いきなし内緒話をしかけてくるわけです。
この小説の視点主ーー主人公は画家で、この冒頭部をもっと分かりやすくすると、
医者の友人高峰に「なぁなぁ、絵を描く参考にしたいから、君が今度執刀する貴船夫人の手術を見せてくれよ」とせがんで、高峰を「ええ、うーんしょうがないな…」となんとか了解させたんだけど、実は絵を描く参考云々は体のいい口実で、本当は手術の立会いにやってくるキレイな女の人達を見たかったんだ!てへ!
という意味です。
本編を少し読めばわかるのですが、この主人公、確かに若い女性のことをよく観察しています。画家としての肩書きフル活用して下心丸出しの女性ウォッチングをする俗人として描かれているわけです。けしからん奴ですね。
さてこのけしからん奴の視点から外科室で交わされる人物の会話を聞き、動向を見ていくわけですが、この主人公の俗人設定がのちの展開にハマってきます。
ある理由があって貴船夫人は手術のためにする麻酔を嫌だと言い張り、どうしても手術するなら麻酔無しでやってくれと言って周りを困らせます。どうするどうすると取巻きがざわついていると、なんと高峰先生、麻酔無しでOK出します。そうして麻酔無しでの手術がはじまるわけですが、その結末を目の当たりにし、俗人の主人公は俗人であるが故に衝撃を受けます。
はじまりは手術の日から九年前。高峰が医学生だった頃、主人公とともに五月の植物園へ散策に行った時。躑躅の盛んに咲く時期で、丘に見事に咲いているところへ上ろうとした折、洋装の御者に守られて、三人の美しい貴族の婦人が向かいからやってきて、すれ違う。高峰は思わずふり返る。その婦人の群れの中に、あの貴船夫人の姿があった……。
【其後(そののち)九年を経て病院の彼のことありしまで、高峰は彼の婦人のことにつきて、予にすら一言をも語らざりしかど、年齢に於ても、地位に於ても、高峰は室あらざるべからざる身なるにも関らず、家を納むる夫人なく、然も渠(かれ)は学生たりし時代より品行一層謹厳にてありしなり。】
「外科室」で泉鏡花は、性を描かずにエロティシズムを表現しています。
これの授業を受けた時、先生はこう説明してくださいました。
「倫理にそむくから不倫という。泉鏡花は、『外科室』で〈不倫理〉を描いているのだ」と。
とある男女との間にすれ違いざまに成った〈不倫理〉。
男は、親しい友人にもそれを明かさず、ただ独身を貫くばかりだった。これは、夫人が手術の際に命がけで麻酔を拒んだ姿勢と近いものがある……私はそう思う。
外科室で何が起きたか。
それは小説を読んだ人のみぞ知るところですが、見目麗しい女性目当てに場に居合わせた主人公の目に、とても鮮烈な印象を与える出来事であることはお察しできましょう。
興味がわきましたら本屋にでも、図書館にでも、足を運んでみてください。そしたら寝る時間削いで熱弁ふるった甲斐があったというものです。今28時過ぎましたからね。ふへへ。
あ、あと個人的にできれば音読してみてもらいたいですね。文章のリズムがとてもいいんですよ。何度でも声に出して古風な響きをなぞりたくなる。