ようやく第三話です!!お待たせいたしました
中々、書く気にもなれず(いや、文章にすることが出来ないのほうが正しい)悩みました
とりあえず、リハビリも兼ねているので短めです
全七話の予定ですので、もうすぐ折り返しですね
これからどんどん、終わりに近づいていくのでお楽しみに!!
今までの話はカテゴリの“らくがき”のところから見ることが出来ます
要望がありましたら、今までの作品を一ページにまとめようかと思っています
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完全オリジナルな(腐的な表現も含むかもしれない)小説と日々のブログです。時折絵も書いたりしてます。なので閲覧は自己責任でお願いします。誤字脱字のご連絡、感想などはお気軽にどうぞ。ここに載せてあるイラスト、小説の無断転載等はご遠慮ください。
ようやく第三話です!!お待たせいたしました
本当にあの時、私はそう思っていたのです。
まさか二人に深い深い縁があるとは思わずに。
***
籠の中の鳥として生活していた夕霧にとって、岑雪という存在は大変眩しく、そして興味を引く存在となっていった。
再び再会したあの日から、もう半月は経っていたが、その間ずっと彼女は事あるごとに兄に会いに来たという名目で押しかけ、岑雪に会い、そして他愛もない話をして帰っていった。兄である蛍斗は夕霧が来るたびに仕事の邪魔だ、と言って追い出そうとするのだが、そのたびに岑雪が自分を庇う様に兄を説得して二人っきりになれる場所まで連れて行くのだった。
それだから夕霧は、岑雪が自分に気があるものだと信じていた。たとえ最初の出会いが突然で、その次の再会が最悪なものであっても、彼が忙しい中で自分と二人だけで会ってくれるという事実に有頂天になっていた。
だからこそ、彼女は彼との話の中での違和感や不審さに気付けなかったのである。
「桜を見に行こうか」
岑雪が目の前で微笑みながらそう言った時、夕霧は目を見開いた。
兵部省内のひとつの小部屋。其処に二人は居て蛍斗から隠れるようにこっそりと他愛も無い話し合っていた。大概は別の此処よりも少し大きい部屋で二人で過ごしていたのだが、今日は生憎其処は使われており、この小さな部屋で二人で過ごしていた。
いつもよりも岑雪の顔が近くて、夕霧は胸をときめかせながら彼を見つめ、相槌を打ったり、言い返したりしていたのだが、そんな中で本当に突然言われた言葉に彼女は驚き、そして沈黙した。
「え、あの・・・」
「君は桜は好き?」
少し首を傾げて此方を見る岑雪に、言葉を濁していた夕霧の頬は赤く染まっていく。
「す、好き・・・・ですよ、桜は。梅よりも・・・・私は桜が好きなんです」
「そっか。じゃあ、明日見に行こうか」
「あ、明日?!」
あまりにもそれは早いのではないか、と夕霧の頭を過ぎったのだが、満足そうに笑う彼の顔を見ていると何も言うことができなかった。目の前で彼が笑っていると言う事実は、夕霧にとって自分が彼の中にきちんと存在しているということであった。
「明日がちょうど見ごろでね、蛍斗も桜が好きだって言ってたから誘おうと思ったんだけど・・・君が居るから、やめた」
「そう、ですか。きっと綺麗なんでしょうね。楽しみです」
夕霧は期待に胸を膨らませて微笑んだ。それを見た彼も微笑んでくれると思った。
けれども彼は、夕霧の顔をじっと見ただけで、笑うことはしなかった。まるで夕霧の姿に誰かを重ねているような、そんな姿だった。
当日。夕霧は満開の桜の木の下で愛を囁かれる。
それは彼女にとっては思っても見なかった告白だったが、それでも彼女はそれを受けた。
そっと抱きしめられたそのときに、彼がどんな表情をしていたなんて夕霧は知らない。
自分を抱きしめながら彼が何を思っていたのかなんて、彼女に知る術はない。
***
彼は初めから私を逃すつもりはありませんでした。
私は初めから彼に捕まえられる定めだったのです。
そしてそれを理解できるほど、私は色恋に疎く浅はかだったのでした。