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誰かの姉の日記

その報せを聞いたとき、不思議と涙は出ませんでした。弟と2人で荷物を受け取りに行って、そのときに初めて自分が泣いていることに気付いたのです。弟は私によく似ていますが、私より気の利く優しい子ですので、道中も私を気遣ってくれていたことを覚えています。
あの方はとても暖かくて眩しくて、そう、例えるならまるで太陽のような方だったのですが、今ではもう何を話したのかさえほとんど思い出せないのです。あの方について私が覚えているのは、その太陽のような面影と、ふと見せた月のような冷たい表情だけなのです。顔もはっきりと思い出せないのに、何故かその表情のことは覚えています。写真を見ても、あの方だけぼやけて見えてしまうのです。
弟とあの方の話をすることはほぼありません。優しい子ですから、私に気を遣っているのでしょう。そんな弟もすぐに戦争へと征ってしまって、もちろん寂しいのですが、大人しい弟が自分で決めたことですから、陰ながら応援したいと思っています。あの子には自由に、好きなように生きて欲しいと望んでいるのですが、何せ私に似てしまったせいで、きっとあちらでも生き辛いことでしょう。
あの子もあの方と同じように消えてしまうかもしれないと考えてしまうと、怖くて夜も眠れないのです。幼い頃からずっと2人で助け合ってきましたから、私に似たあの子はまるで私の映し身のようなものです。大切に、大切にしてきたつもりなのですが、きっとあの子が最期にこの私を選ぶことはないでしょう。何度も言っているように、あの子は私に似ているのです。選ぶものは、私と同じものなのです。
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