美しいと思った。地平線から昇る朝陽と、水平線へ沈む夕陽と、どちらも同じ太陽だ。違うのは自分の心境のみだろう。朝から晩まで実地勤務の日も珍しくないこの仕事も、徐々に慣れていることを実感していた。生と死が隣り合わせどころかすぐ真横にある仕事だ。それでも仲間と打ち解けられるようになっていたし、当時よりは狙撃の腕も上がったはずだ。人を殺すことに躊躇いはないかと問われれば即答はできないが、自分が生きる為に必要なことだと思っている。仕事であれば感情を表に出すこともない。
日の入りと共に仕事を始め、日の出に仕事を終わらせる日もあった。日が沈む頃、それを見届けながら現場へと向かう。沈む夕陽はまるで自分の心のようで、心まで闇に囚われないように気を引き締めていた。仕事を終え、昇る陽を見ながら帰路に着く。土埃で汚れた自分の身体を朝陽が照らすと、くすんで沈みかかっていた心まで清められているようで、とても好きだった。太陽が美しいと感じられるのであれば、今のわたしはきっと大丈夫なのだろう。生きている、と感じられる今が1番美しいのだと、それに気付かない振りをして、わたしは今日も眠りに就く。