根元的な願望として遠くに行きたいと思っていた。ここでない何処か遠くに行きたいと思って、始めそれは海外に向かった。いや、海外には向かっていなかったかもしれない。自分がまだ幼く、物心つく前は外界があるとは思っていなかったから。
死はいつも身近にあり、かつ遠いところであると、小さいながらに思っていたようにも考えられる。
しかし、まあ、海外へと意識が向いた。これが恐らく中学かそこらであろう。
海を隔てた向こう側が、自分には遠く、途方もないように思えた。だが、インターネットの台頭により、その海外も、今や手の届く範囲へと変わってしまった。この手が、意図せず遠くまで届くようになってしまった。
世界経済として、アメリカの大恐慌の煽りが、ヨーロッパへと伝わり、中国からこの島国までやって来た。これは、自分にとり大きな衝撃であった。何処に行こうが、結局はこの場所からさほど遠くはないということを思い知らされた。