こんばんは!先週と同じく、短い話でも書いてみようと思います☆
今日はスライム一家の当番です(当番?)
せっかくピ○コロさん熱があがったんだから、これをしておきたいと思います。
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人間のユキの昼食を調達して帰ってきた巨大スライムのアオが、ユキを上に乗せたまま、突然動きを止めた。
もうすぐ泉が見える、という距離だ。
「?
どうした?アオ」
スライムはどういうわけか、いつも通る道を迂回して、コソコソと遠回りする。とりあえずアオの好きにさせてみようと思ったユキは、スライムの動きが落ち着いたところでもう一度話しかけた。
「どうかしたのか?泉に何か変なやつでも来た?」
おそらく違うだろうと思うが一応聞いてみる。不審者がやってきたにしては警戒したようすはないし、第一泉には子供たちがいるのだ。
子供たち、と思い浮かべてユキはひょいっと顔を泉に向けた。
植物の向こうに見える泉のほとりで、子スライムたちが集まっている。
たぶん、遊んでいるのだろう。ユキにはアオの言葉はわからないが、つまりは子供たちが何かしているようなので見てみようということだろうと考えた。
「何してんだろ…?」
一匹の子スライムを10近い子スライムたちが輪になって囲んでいる。
しばらく静かにしていた彼らに、ユキが首を傾げると、突然中央の子供がプルプルと動き出した。
揺れる子に対し、周りの子スライムはなにやら構えている様子。
すると真ん中の子スライムがギュっと縮まったようだ。
まわりは「いよいよ来るぞ」とでも言いたげにそわそわしている。
「??」
目をこらすユキの前で、縮まった子スライムが、突然膨れた。
圧縮した風船を手放したような、ボンっとでも音がするように。
すると、その様子を見た周りの子スライムたちが、後ろにひっくり返ったではないか。
「え?何!?」
まるで見えない衝撃波をくらったかのように、ころころと転がる子供たち。かと思ったら、次の瞬間には飛び起きて、真ん中に殺到し始めた。
押しあいへし合い、どうやら次の真ん中を決めているようである。
それが落ち着いて、他の子らはまた少し距離を置いて周りを囲む。
そのころにはようやく、ユキにも子供たちが何をしているのかが見えてきた。
つまりは「ごっこ遊び」だ。
真ん中の子スライムがすごい攻撃を繰り出したようにアクションして、周りが後ろにひっくり返るという、何ごっこと言っていいかわからないが、理解するとすごく微笑ましい気持ちにユキはなった。
「へぇ、面白いことしてるな!」
ユキが理解したことでアオも隠れて見守る必要はないと思ったのだろう。森から姿を現す。
途中でユキは地面に降り立ち、「おかえりー」と寄ってきそうになる子スライムたちを「そのままそのまま!」と言って、自分も輪の中に入った。
「よーし、俺はそう簡単にはひっくり返らないぞ?思いっきり来い!」
子スライムたちはまさかの母の参戦に、大感激している。ぴょこぴょこ飛び跳ねるのをなだめて、真ん中の子スライムに向き直った。
「さあ来い!」
またもプルプル、ギュっとなって、ボン!
「うぁあッ」
ユキは大げさなくらい後ろに飛んでひっくり返って見せた。
「ははっ面白いな〜これ。誰が考えたんだよ」
子スライムたちが関心するように集まる中、ユキはケラケラと笑う。子供とは本当に発想が豊かだ。
すると今度は母の番とでも言うように、子スライムたちがユキを取り囲んだ。
起き上がって、「さてどういう動きをしようか」と思案するユキの視界を大きい影が横切る。
なんとアオが子供たちにまざって参戦したのだ。
あまり子供の遊びには普段参加せず、見守ることの多いアオなので、ユキは嬉しくなった。
「アオが相手でも手加減しないからな!」
低く姿勢をとり、腕を交差する。う〜っと唸って。
「だぁッ!!」
両手を左右に押し出した。
途端に、コロコロと楽しげに子スライムたちが転がる。しかしそんな中、アオだけは何故かそこから動かない。
あれ?とユキが構えを解いたときにようやくアオは動いた。
ドっ
バシャーン!!!
「!!!!
アオ!」
体の中央がぐにゅっとへこんだかと思った瞬間、アオは天高く飛び上がり、泉にダイブしたのである。
一瞬本気で慌てて、泉に入るユキに、巨大スライムは悠々と泳いでやってきた。
「あ、なんだフリかよ。
アオったら俺より大袈裟」
当然のように体に乗せてもらい、優しい感触を楽しむ。子スライムたちを見ると父親の喰らいっぷりに拍手喝采しているようにピョコピョコ跳ねていた。
「やっぱりアオが一番だな」
ちゅっと音を立てて口づけると、アオは嬉しそうにプルプル揺れて、泉の奥にユキを連れて行ったのだった。
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アオがしけこんだところでお休みなさい☆