一年ぶりの猫と犬の日シリーズです。
去年の犬の日はお話しが浮かばなかったためスルーしてしまいましたが、今日は行きますよ!ハイレッツラゴー!!
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獣王のいる城の周辺一帯の子供たちは、学校に通う義務がある。
そして城下で一番!王室御用達!がうたい文句の服屋の息子たちも、元気に学校へ通っていた。
「おかあ!いってくるにゃ!」
「いってくるにゃ!」
「おー。気を付けてな」
まだ開店前の店の入り口から、子供がきゃあきゃあ言いながら跳び出す。彼らから少し遅れて犬頭の獣人イギュがのろのろと出てきて二人に手を振った。
手を振り返して、ダダダっと走ったかと思うと、兄のプローははっと思い出したように立ち止まる。
そして母を振り返り、
「おかあ!俺らが帰るまで、まだ産まないでにゃ!」
「ガマンするニャ!」
そういって二人して「がんばってにゃー!」と叫ぶと、改めて学校へと走っていった。
残されたイギュはというと、家の前で、しかも大声でまだ産むなだの、ガマンだの叫ばれて、恥ずかしそうに顔を覆う。
「我慢ってったって、勝手に出てくるんだから仕方がねぇだろうが…」
言いたい放題の性格は誰に似たんだか、絶対にあいつに違いない、と店を見上げる。
二人目の時に、マヤに産んでらおうという作戦が敢え無く失敗して、それからイギュは子供を理由にマヤに迫るのはやめていた。
かといって、いまだにマヤをニャンニャンするには至っていないのだが、子育ての忙しさのせいか、そのような欲求も薄くなってしまっていたのだ。
そして、先ほど出かけていった子供たちの弟のほう、キオンが学校に入学したのを見計らったように、マヤに迫られ、現在3人目を妊娠中である。
「お前も犬頭かな〜。そろそろ猫頭の子供も見たいんだけどなぁ」
そうポツリと呟いて、腹を撫でていると、家の中から声がかかった。
「イギュ〜大丈夫にゃ?もう産気づいたニャ?」
そしひょこっと、猫頭の獣人で夫のマヤが顔を出す。
どうやらマヤが数年、子供を欲しがらなかったのは、自分の忘れ物を届けた際に産気づいて、ちょっとした難産だったことが理由だったようだ。
イギュとしては、産んでしまえば子供は元気だし、産後も良好だったので、あまり気にしていなかったのだが、「苦しい思いをさせてしまったけど、それでもまだ子供がほしいにゃ」と真摯に訴えたマヤに愛を感じてしまったりしている。
今も、すぐに戻ってこないイギュを心配して、様子を見に来たらしい。
「大丈夫だよマヤ。心配しすぎだ。
オラ、仕事するぞ」
「えぇ〜!今日は一緒に、出産に備えて大人しくしようにゃ!」
「何でマヤまで大人しくするんだよ。同じ家にいるんだから、すぐに知らせるってば!」
「いたっ痛いにゃ!尻尾ひっぱらないでほしいニャ!」
そうして中に入っていく二人を、ご近所の獣人たちは「相変わらず新婚みたいだな」と生温かく見守っていたのだった。
***
学校の前、それぞれの教室に向かう直前のこと。
「ロウ様!おはようございますにゃ!」
「おはようざいますニャ!」
「ああ、おはよう」
学校には、王の子で、次期獣王になるロウも教養と団体生活を学ぶためにやってくる。兄のプローはロウと同じ年で、キオンが産まれたときの縁もあり、仲がよかった。
「おはよう。プロー、キオン。弟はまだ産まれてない?」
ロウの隣で挨拶したのはハクだ。ハクとキオンも同じ年である。
ロウとハクは、それぞれにこの兄弟から「弟が産まれる」と何度も聞かせれていたため、十分すぎるほど知っていたのだった。
「今日かもしれないと言ってましたにゃ」
「ガマンしてもらうんですにゃ」
「ん?ガマン?」
何を我慢するのかよくわからなかったロウとハクだったが、この兄弟はちょくちょく勢いに乗り過ぎて意味のわからないことを言うこともあるので、あまりつっこまないことにした。
「無事に産まれるといいね。じゃあキオン、行こうか。
ロウ、またね」
「あぁ」
「にいちゃんバイバイにゃー」
「おう!学校終わったらすぐに帰るからニャ!」
そうして上級生の教室と、下級生の教室に別れる。
鼻歌を歌うプローの横顔をちらりと、ロウが見る。
プローとキオンは、大人になれば猫頭になる。しかし今は母親の特徴が大きく現れる幼少期のため、思い切り犬の頭だ。
未来の王は思った。
この兄弟の、特徴的な言葉遣いと顔が、合致するようになるのは、何年後なんだろうなぁ。と。
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プローとキオンは、星座のこいぬ座プロキオンからもらいました。3番目はなんて名前にしましょうね。
あとイギュ母さんは、すっかりマヤを転がせるようになりました(笑