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一緒の刻


仕事が思わず早く終わって
彼女に連絡をした

「連休明けまで 割と忙しいから逢えないよ」

と 言われていたけど
彼女の家の近くでの仕事はあまり多くないし
顔を見るだけでもと思ったからだ


「仕事終わったよ 今近所だけど
少しでも逢えない?」
僕の問いかけに彼女は

「一旦家に帰ってシャワー浴びたい
結構埃っぽいから」

と快諾してくれた




「ひと月ぶり」


お互い 顔を見るなり
永いひと月だったと感想をもらす




元々彼女の方が 僕を気に入って
始まった付き合いだったのに


今じゃ 僕の方が彼女に夢中で
はしゃいでいる


そんな僕を見て 彼女は

「テンション変だけど 大丈夫?」
と笑っていた



大手チェーンの喫茶店に入ると 彼女は来たことが無いと言う

せっかくなので その喫茶店名物の

デニッシュ生地をドーナツ状に焼いたパン
これを 軽くローストして 上にソフトクリームを載せた デザートパンを注文する


「これに更に シロップ掛けるの?」

彼女は 自分の想像した甘さにちょっと 引きぎみに手を出した




「あ 美味しい」

どうやら 気に入ったらしい
ミニサイズとは言え 3/4をぺろっと食べてしまった

「お腹空いてた?」

気になって聞いてみたが

「一応食べて来た」





甘いものは べつ腹らしい




「そろそろ送るよ」

と立ち上がって 車に戻ると

「ゆうさんの時間が大丈夫なら まだ一緒に居られるよ」

と彼女




僕は ホテルに向かった




二人の時間



服を脱がすのも 楽しい



互いに 相手の温もりを確かめながら

相手を 欲した



自然とひらく
彼女の膝



僕は 彼女の中へ




意識が集中する



動かずに

二人 抱き合ったまま
お互いを感じあう





わずかな変化も見逃さないように


全神経を
お互いの繋がりに集中する





自然と
どちらからとも無く

腰が動いてしまう



至福の刻



息が乱れ

しがみつく 彼女の腕


一瞬 息が止まる



彼女の中で 脈打つ僕を
最後まで感じとると


彼女から 最後の吐息がもれた

忘れたな


話題:逢えない日に想うこと。


ここ数日で
彼女の生活環境に変化が起きた

あまりに急激な変化で
彼女自身が対応出来て居ないらしい





「今日逢えたらね」





たぶん忘れたな



逢える時だけでいいや
って思って


「生活優先ね
特に子供の事を疎かにするんだったら 別れる」
と 彼女に宣言していた





それなのに…


逢えないと思うと
もやもやしてる



うん

まぁ 仕方ない


時期を待つとしよう

戯れに言っただけ



Kumさんとは 何度か会っていたらしい



らしい

と言うのも 僕が全く覚えて居なかったからだ


お互いに 記憶の照合をすると


他の人と行ったと思っていた 一部の記憶が Kumさんとの記憶と合致する


どうやら 完全に記憶がすり替わっている


Kumさんとすり替わって記憶している人も

気丈で 逞しく振る舞っているのだけれど
とても 弱い部分を持って居る人で


どことなく2人は 似た雰囲気を醸し出していた




そんな曖昧な Kumさんとの記憶の中で

今でも鮮明に覚えている記憶がある





その日


Kumさんの仕事帰りに渋谷で会う約束をしていた

僕は昼間 何かの集まりで西麻布に行き
ただ帰るのが つまらなかったからだ


スペイン坂の店で 一緒に食事をした

「婚約したんだよ」
と話す彼女からは あまり嬉しそうな様子が感じられなかった


「結婚かぁ おめでとう
どんな人?」

ずっと『姉貴』と慕ってきた人が いよいよ結婚する
僕は素直に喜んで見せた


「良い人だよ」

彼女はあまり多くは話してくれなかった



それでも 食事とお酒が進むうちに
色々 話してくれた



親から逃げ出したくて 結婚を理由にする事


多少 問題のある彼氏だと言う事


結婚後 名古屋に行ってしまう事

などなど…



当時 彼女なりに
様々な問題を抱えていたのが 判る



夜の渋谷を 酔ってふらふら歩きながら


僕は彼女に言った

「名古屋行っちゃったら 当分会えないね
なんか淋しいなぁ」


「そうだねぇ もうあなたとも遊べなくなっちゃうね」


彼女の反応を見て
僕は わざと困らせたくなった

「結婚前にさ 最後の思い出作ろうよ」

「いいよ」


彼女は酔っていたせいか
サバサバと即答する


逆に僕が困ってしまった




それでも 若い欲望と 彼氏への嫉妬から


僕は かなり荒々しく彼女を抱いた








公園通りを歩きながら



「なぁ 俺達結婚しない?」
僕は切り出した



こんな状況で得られた ベッドの上での幸せでしか無いはずなのに
僕はその幸せが本物だと錯覚した



その時 僕には定職も無く 在ったのは夢だけだった

それでも 彼女の為になら夢を諦めて 現実を生きるのも悪くない

きっと色々困る事が 出てくるだろう
でも 命を取られるわけじゃない


なんとかなる


訳の解らない 根拠の無い理屈と
自暴自棄とも思える感覚が僕を支配していた




突飛な事を言い出された彼女は 歩きを止めて

無表情に僕を見つめている



その表情に僕は とてつもない恐怖を感じた

こんなの絶対にうまくいかない



ほんの数秒だけ
僕は 夢をみた事に気づいて

「ウソウソ 冗談」

と笑ってみせた












いや 僕は夢を見たんじゃない


彼女の状況を なんとなく把握しながら
想像した現実の重さに耐えられなくなって





逃げ出したんだ











それから数年後
「姉貴が 1年位で離婚したんだって」
とHirから聞いた

姉弟

高3の秋

親友のHirがある朝学校で僕にこう言った


「昨日初えっちしちゃったよ」



それは僕にとってちょっと衝撃的だった



実は 僕はかなり奥手で

周りには高2の夏に 経験済みと 訳の解らなかった見栄を張っていたが

未だ未経験だったからだ



先を越された


と思いつつも
一応 経験者って事で 余裕の振りをして

「おめでとう」

と言った

「で どうだった?」
もう興味津々で聞いた


「酔ってたし 夢中でさ
よく解らなかった

ゴム着けて 入れようと思ったんだけど
なかなか入らなくて

場所も判んないし

お前どうだった?」


「俺? まぁ入りにくかったよ
ってか 向こうも初めてだったから 痛がってさ
ホントに先だけだったし

って 話したじゃん」



まぁ なんとも都合の良い逃げ道だ




「それで どうしたのさ」
Hirに続きを話させる

「それでね
なんとかね 入ったんだけど
直ぐにイっちゃって
でお終い」


「そっかぁ やったなぁ
で誰と?」


「姉貴」


僕らは中2の時の
こっぱずかしい告白以降
Kumさんの事を『姉貴』とも呼んでいた



前日 Kumさんと遊びに行く話しをされていたっけ



その話を聞いて 僕はHirを許せなかった


僕らは Kumさんを 姉貴と慕い
恋愛対象にしないと 暗黙の了解があったからだ



その後
僕は かなり不機嫌だった



Hirも 原因が自分にあるのを 気づいていた様だった






それから
しばらく経って
何かの用事で都内に行った帰りに


Kumさんと会い

身体を重ねた



これが僕の
本当の初体験になった

初めての彼女

別れる


Junの言葉の意味が解らなかった




高校2年の春

校外サークルの新人で入って来たのが Junだった


ショートボブにした天然赤毛の

背が小さいくて可愛い娘


肩を抱くと 僕の腕の下にすっぽりと収まった


確か身長差25センチ位あったと思う


付き合い始めは

僕から言ったのか
彼女からだったのか

もしかしたら どちらも 何も言ってなかったかも知れない


でも 僕らはお互いに付き合っている事を意識してた



とは言っても 学校は別々で 住んで居る所も離れていたから

会うのは 月1のサークル定例会だけ

後は 時々電話で話をするだけだった


それでも
僕はかなり浮かれていて
悪友Hirに 嫌がられる程自慢していた




初めて2人でデートしたのは 夏休みになってからだった


サークルの合宿に参加出来なかった彼女の家に
合宿の報告をしに行った時



「ついでだけど」
と彼女が僕の誕生日を祝ってくれた


彼女の部屋に上がり
合宿の写真を見ながら 色々話をした

女の子の部屋に入る事が初めてでかなり舞い上がっていたのを 覚えている


帰り道

僕は 勇気を振り絞って 彼女の手を握った



彼女の小さな手が
ギュッと握り返してきた





駅までの道が やけに短く感じた

来るときも同じ道を通ったはずなのに



Junの事を大事にしよう
何があっても 守ってやろう


そう 素直に思った




それからしばらくして
残暑の都内の公園で2度目のデートをした


もう
どこをどう歩いたのか 何を話したか


全く覚えていない


ただ 何度も

彼女にキスをしたい
彼女に触れたい



そう思っては ガマンした




新宿で別れ

彼女が家に着いた頃を見計らって 電話をした



「今日は 楽しかったね
ありがとう」


「うん そうだね」


浮かれた僕とは 対照的に
彼女の反応は 重苦しかった

「どうした? 何かあった?
帰り 遅くなって親になんか言われた?」


門限らしい門限は無いと 聞いてはいたけど
あまり遅くならないように 帰したつもりだった


「違うよ 何でもない」

その反応は

何でもなく無いと すぐに判った


「Junお互いに隠し事は止めようって言ったよね?
ちゃんと話して欲しい」


すると彼女は
なにかの思いを断ち切る様に


「別れる」


とだけ言った



昼間 あんなに楽しく遊んだのに

ずっと 嫌だったんだろうか?


そんな雰囲気は 一切無かったのに




もう 訳が解らなかった



「俺 なんか悪い所あった?
あったなら 直すから言って

それとも 誰か他に好きな人出来た?」


「そうじゃないんだけど…」

はっきりしない彼女の態度に
僕はイライラしていた


「なんだよ Jun はっきりしろよ
何にも言ってくれなきゃ 俺だってどうにも出来ないだろ」








ながい沈黙が続いた








そして彼女が重い口を開いた






「だって 何もしてくれないんだもん」
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