玉波ちゃんの髪、とっても綺麗ね。まるで天女の羽衣のよう。そのままお空を飛んで、帰ってこなくなりそうで不安になってしまう。

それは…きっと、有り得ないわ。私はずっと千寿ちゃんの傍に居るもの。例え何が起きたってあなたの傍を離れる事はないわ。

ねえ、それは、どうして?
どうしてあなたは、そんなにわたしの事を想っているの?


「そんなこと、」
そんなこと、決まっている。
あなたが私を必要としてくれたのなら、それだけで私は生きていけるのだから。それがどんな理由であれ、あなたが私だけを見てくれているのなら、それだけが私の存在証明になるのだから。あなたが例え魂だけになったとしても、絶対に離さない、絶対に離れない。あなたを想う事が私の存在意義になる。私だけを見ていて欲しい。私だけのあなたでいて欲しい。あなた以上の存在なんて、この世に存在しなくていい。
椿がひとつ、音を立てて地面へと墜ちた。



──────────不思議な夢を見た。私と彼女は古い着物を着ていて、側にあった大きな木と、あの花は、一体何だったか。
思い出せないならそのままでいい。思い出さない方がいいのかも知れない。今の私には、きっと必要の無いものなのだから。彼女を護れるだけの強さを選び、私は今日も生きていくのだから。