肩にもたれかかる 君の重みが消えて

僕は ゆっくりと目が醒めた



日の暮れた 電車内は
外の明かりが少ない所為か まるで鏡に囲まれている様だ


薄目を開けて
正面の窓に映る君を見ていた



すっかり伸びきった
洗い晒しの僕の髪



君が 斜め前からまじまじと見ている



そう言えば

「なんとかしなよ」

って言われていたっけ




以前

日だまりのテラスで
君が 僕の髪を切ってくれた事があった


ちょっとぎこちないけど

君のスラリと長い指が
僕の髪に分け入って ザクザクとすきバサミで整えてくれた



あの時間が

とても とても 楽しくて





根負けした君が

「切ってあげるよ」


と言うのを 待っている




ガタタタン


カーブで揺れたタイミングで

本格的に目が醒めた


「どうしたの?」


僕が訊くと

「見たいから見てる」


そう君は言って
僕を寝かしつける

重なる手

触れ合う脚



すぐ隣に 君の存在を感じながら

僕はふたたび 目を閉じる




もそもそと 君の動く気配で 目を開けると

君は悪戯っぽく微笑みながら 僕の方へ顔を近づけた



唇が触れ合う


愛しくて 離したく無い



でも君は スッと離れる


僕は 両手を伸ばし

離れる様とする君を捕まえて ながいキスをした





離れて お互いに照れ笑い



その 絶妙なタイミングが嬉しくて


最後に軽く チュッとした



「どうしたの?」


ワザと訊いた



「上着だしたくて」


答えになってない




目的地は
まだ だいぶ先だ




揺れる電車で 君と僕


もう少し

眠ろう




握った手の中に
君の温もりを 感じながら