公式学年+1年
++++
円卓が、荒れていた。嵐と嵐がぶつかって、風雨が吹き荒れ雷鳴が轟く。そんな表現をしても全く大袈裟ではないゼミ終わりの放課後。
班長の佐竹さんを議長に、鵠さんは安曇野さんを、俺はサドニナを止める係に回らざるを得なくなっている。どうしてここに青女のサドニナがいるのかと言うと、ちゃんと話せば長くなる。
青女でも授業を持っている先生が、緑大の大学祭に青女の面々を何人か助っ人として連れてきたのだ。そして先生に気に入られたサドニナは昼のラジオデビューも果たす。これがなかなか好評で現在に至る。
至ったまでは良かったんだけど、元々インターフェイスの方でサドニナと面識のあった俺のいる3班に居着くようになってしまったのだ。特に安曇野さんとの相性が最悪なのはお察しいただきたい。
「ふええ〜、タカティ助けてえ〜」
「高木、それ庇うならアンタから潰すし!」
「ええっ!? とばっちりだよ!」
「安曇野、高木は悪霊に取り憑かれてるだけで関係ねーじゃん?」
「こんなに天使なサドニナに悪霊なんてヒドーい!」
チッ、と2人分の舌打ち。かつてここまで鵠さんと安曇野さんの息が合ったことがあっただろうか。言ってしまえばこの2人も顔を合わせればケンカし合ってた方なのに。
「サドニナは何もしてないのに何でそこまで目の敵にされなきゃいけないのー! はっ、もしやサドニナのかわいさが」
「青女か冥界に帰れし」
「俺もそのキンキンの声がキツいっつーか」
「ふええ〜! みんなしてイジメるー! タカティー!」
「言っとくけど、俺はサドニナの味方ではないからね。インターフェイスとは違うってことだよ」
そう、俺は中立の立場を保っていたいんだ。それこそ言葉通り、どっちの敵味方ってワケじゃなくて。サドニナとは一応友達だけど、今は佐藤ゼミの学生としてのウエイトが強い。
「佐藤ゼミはみんなオタクだからサドニナも受け入れられるよって言ってたのにー!」
「誰が?」
「先生」
「つーか俺も高木もオタクではねーじゃんな」
「えー! オタクじゃない人もいたのー!?」
と言うか「サドニナの思ってるオタク」の方が少ないと思う。鉄道とか野球とかアイドルとか自衛隊とか、いろんなジャンルに精通してるオタク集団ではあるけど。
そのどれでもない俺からすれば、打ち込める趣味があることには憧れを抱いたりもする。それこそMBCC、しかもミキサーというアドバンテージがなければ面接の時点で弾かれてたのは間違いない。
「えっ、じゃあユカちゃんはー!?」
「佐竹さんはコスプレの人だね」
「えー、じゃあこの子は!」
「安曇野さんは歴史とアニメ・マンガだね。あとCGとかも得意」
「高木、余計な情報出すなしメンドクサい」
「えー! 人って見かけによらなーい!」
「黙らせるし」
「キャー!」
安曇野さんの手がスッとサドニナの喉元に伸び、本当にやりかねないと制止する手は鵠さんと同時に。その間もサドニナから安曇野さんへのジャンル質問が止むことはない。
「高木、ヒゲさんいつ飽きてくれんだろうな」
「本当だね」
切なる願いは、嵐が止むこと。平穏なゼミ生活を取り戻すこと。すべては先生の気紛れだ。
end.
++++
あずみんとサドニナがぎゃあぎゃあケンカしてるのをやりたかっただけだけど、例によってタカちゃんと鵠さんが大変なことに。
あずみんはイライライライラしてるし鵠さんもお疲れモード。由香里さんはタカちゃんの専売特許我関せず。タカちゃんがんばれ。
ヒゲさんもそのうち飽きるだろうしポイ捨てするときはそれはもう扱いが酷いのでどうなることやら。