カーペットが焦げたんですよね。そう淡々と言う姿に、よほどのバカか感覚が失せてるかのどちらかだと思っていた高木でも、寒いとは一応思っていたことを知る。
12月にもなっているというのに未だにジャケット1枚だし、マフラーもしていない。部屋では極力暖房をつけずにジャージを2枚着て毛布にくるまっているという話を聞いたときには鳥肌が立った。
本人曰く光熱費がもったいないとのことらしいけど、バイトをしていないことを抜きにしてももう少し何かこう、あるだろ。と言うかエアコンにこたつにヒーターをつけてる俺には理解出来るはずもない。
「タカシ、部屋が燃えなくてよかったね」
「本当ですね。やっぱりヒーターはつけない方がいいですね」
「だからって極端だね」
「まあ、毛布にくるまれば大抵の寒さは解決しますし」
毛布にくるまればいいというのは同感にしても、コイツはバカだとしか言いようがない。カーペット焦がしたから暖房は使わない方がいいって。暖房からカーペットを離す、とかでいいじゃねえか。
「エージが来た時も暖房はつけないの?」
「そうですね、エイジをお客さん扱いすると破産しますし」
伊東が「俺が行ったときはよろしく」と念を押すと、それには「さすがに先輩が来たときはつけますよ」とのほほんと答えている。
――っつっても所詮高木基準であることには違いない。絶対ついてるかついてねえのかわからないような感じで、さっみィことには違いないだろうと想像して震えるだけの簡単な仕事。
「先輩たちは暖房をつけるんですか?」
「そうだね、朝は起きるのが辛いからね」
「つか暖房がねえと死ぬ」
「そう言えば高崎先輩、こたつは」
「とっくに出した」
部屋に机のない高木にしてみれば、こたつは未知の暖房機器だ。ただ、恐らく高木もこたつで堕落する人種だろうから、1年のうちは使わないのが吉だろう。エージが住み込んでるなら話は別だ。
エージと書いて家政婦と呼べるレベルだという話は聞いたことがある。冬の台所なんて地獄だぞ。そんだけ世話させといて、暖房くらいつけてやれよと思う。
「ヒーターは脱衣所と台所の間をうろうろするようになりました、カーペットも焦がしましたし」
「お前ヒーター移動したの絶対エージのためじゃなくてカーペット焦がしたからだろ」
「まあ、確かにきっかけはそれですけどシャワーの前後は厳しいですからね」
真面目に冬の光熱費を高木と比較したい気持ちに駆られた。下手すると2倍どころか3倍にはなるんじゃねえかと思う。俺もよく暖房を使いすぎだとは言われるが、高木は使わなさすぎだ。
こうまで差が出るのは、決してバイトをしているしていないだけじゃないはずだ。どうやったらそこまで暖房を削れるのか、その原理は少し気になる。
「タカシのそれは節約なの?」
「ですね。暖房を削らないと食べ物に困りますから」
「酒はどうしてんだ」
「酒は飲んでますよ」
「そこは削らねえのか」
「これ以上は削れませんね」
「一応は削ってんだな」
「削ってませんね」
歪みねえ。ただのバカか大物か。常々さみィ部屋にいるなら頭を冷やせとも言えねえし。
「食費を削って暖房に回すっつー考えにはならねえのか」
「ああ、なるほど」
「高ピー、それはダメ。いろんな意味でタカシは死ぬと思う」
end.
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暖房は高崎だけじゃなくてタカちゃんにもデッドオアデッドでしたねwww
ああそうだね、タカちゃんから食費削るといろんな意味で死ぬね。そろそろMBCCでもタカちゃんの生活の残念さは定着しつつあるのか!
お酒は必要経費だというのはMBCC的には常識なので、そこを深く突っ込まないし、削れとも言わないのがまた「らしい」。