講義で確保する席は基本的に最前列。別に、真面目に授業を受けたいワケじゃない。そう言うと誤解されるかもしれないけど、ハナはそこまで真面目過ぎるタイプでもない。情報系の学部は男子の方が多いから板書が見えないってだけの理由。しょぼんだよね。
そろそろ年内最後の授業って言って大袈裟に盛り上げる先生も増えてきた。年が明けてからが本番だけど一応学期末も近付いいるし、その言葉に煽られるのか今までより教室がざわざわしてるし男臭い。体育学部が密集してるのとはまた少し違う男臭さがある。
「あーもう!」
講義が終わって、男どもはぞろぞろと教室を出ていく。ハナはまだ板書してるのにその前を横切って。テメーら全員はっ倒す! そこに一列に並んで歯ぁ食い縛れ! ……なーんて、言いたいけど我慢しますよねー、早く全員通り過ぎろー。
最前列って黒板は見やすいけどプロジェクターを映すスクリーンが見にくいんだよね。これも146センチという低い身長を呪うしかなさそうだ。せめてあと10センチあればあと2つくらいは後ろの列にも座れたかもしれない。そうすればスクリーンだってよく見えたはず。
「ハナ、お前真面目だな」
「チッ」
「えっ!? 俺が何かしたか!?」
今の舌打ちはきっと地か素のどっちか。L先輩が上から話しかけてきたので板書が邪魔されたのと、L先輩の身長が呪わしいか。181センチもあるんだから10センチくらい分けてくれたっていいのに。10センチ分けたってまだエージより10センチも大きいんだし。
「どーしてみんな前の出入り口から出てくんですか、黒板が見えないんですよ! 何のために最前列確保してんのか意味わかんなさすぎてしょぼんですよ」
「あー、確かにお前は見えなさそうだもんな」
「L先輩にはわかんないんですよハナの苦労が」
「中途半端にタッパあってもな。こないだなんて高崎先輩にサークル室の蛍光灯取り換えさせられたし」
「そりゃ今のMBCCだったらL先輩しか届きそうな人いないじゃないですか」
もちろんこれが八つ当たりだということはわかっている。L先輩相手だというのをいいことに、割と言いたい放題。エージ相手だったら戦争になるし、タカティだと聞いてるのか聞いてないのか。果林先輩だと茶化されそう。
教室からは大分人がハケてきた。黒板も良く見える。先生は少し板書を消したそうにしているけど、そこはもう少し待ってとお願いした。だって見えないんだもん。消したところテストに出すんですかー、的なー、みたいなー、しょぼーん。
「はー、終わりっ! あ、先生ありがとうございましたー」
「ハナ、購買にでも行くか。あんまんと肉まん、どっちがいい?」
「えっ、どうしたんですかL先輩からのお誘いなんて。ちなみにどっちも食べたいです」
「今日の番組、ユノ先輩と一緒に聴いてたんだ」
今日は秋学期最後の昼放送があった日で、そこでは確かに「これだけ寒い日にはほかほかの中華まんが食べたいな」という話をした。お昼時でおなかが空いてたのもあるけど無差別に拡散して言ってみるものだ。こうやって、上から降ってくる幸運もある。
「あんまん肉まんはL先輩の奢りですか?」
「今日だけな。つか今日誕生日だってチラッと聞いたから」
「えー、それだけで済ます気ですかー? しょぼーん」
end.
++++
急遽ハナ誕のお話。しょぼーん。本当はタカエイときゃっきゃしてもらってもよかったんだけど曜日がなー。
冬のハナちゃんと言えばあんまんか肉まんを食べてるイメージがある。Lはそういうのじゃなくてカレーまんとかピザまんとか変わり種のが好きそう。
本当は今日とか向島も寒いはずだからそういうのも視野に入れたお話にしたかったんだけど、ガッデmしょぼーん