「慧梨夏ー、そっちどうだー?」
『うん、すこぶる順調! そっちはー?』
「いつも通り浅浦とぐだぐだしながら過ごしてるよ」
『ちょっ、だからどうしてうちがいないときばっかそういう萌えることを』
「お前はお前で戦いに出てんじゃないのか」
年末の戦争、もといコミフェのため東都エリアに遠征中の彼女と電話で交信を。まさか遠征中に電話をしたところで出てもらえるとは思わなかったから、こうやって会話が成立してるのは奇跡に近い。ちなみに今回は2泊3日の日程だ。
同人誌即売会については最近じゃテレビでも特集を組まれるようになったりしていて俺のようなごくごく普通の人にもその字面くらいは目に入るようになってきている。それでも、俺が思うような生温い世界じゃないということはわかるから、いくらミーハーな俺でも興味本位で近付く気にはならない。
「つーか姉ちゃんもいるんだろ、堂々とBL本開いても大丈夫なのか」
『多分大丈夫!』
「多分って」
『昔リナさんの机から商業BLの小説見つけたことあるから』
「言ってやるなそれを」
今回慧梨夏が宿にしているのは姉のリナさんの部屋。現在は東都で就職していて、向島には年1回帰ってくればいい方らしい。前乗りした日にもメールで「少女マンガ読み漁ってるー」とは聞いていたけど、姉ちゃんもまさかそっちの人なのか…?
『まあ、多少のことなら問題ないから!』
「はいそうですか」
『さすがに本作ってるとまでは言ってないけど』
「そこまで行くと仲良し姉妹の域を超えるぞ」
きっと今も慧梨夏はごろごろと戦利品を消化したり姉ちゃんの部屋にあるマンガを読み漁っているのだろう。慧梨夏のやることだ、想像には難くない。そもそも休みの日の慧梨夏の生活ぶりを見ていると、そうしてない方がおかしい。
慧梨夏の部屋で少女マンガをあまり見たことはない。少女マンガは隠すような本ではないはずだから、本当にないのだろう。言ってしまえば異文化の書物だ。それが、漫喫や本屋にお金を落とさずとも読める環境があるなら何となく手を出してみようかという気にもなるかもしれない。
「つかお前3日目にスペース出してんだっけ?」
『うちは1日目ー。3日目は片桐さんに挨拶して新刊買うのが最優先』
「例の片桐さんも出てんのか」
何て言うか、いつの間に俺もそういう用語を使って話すようになってんだとも思う。俺を無視して本を読み耽っている浅浦も、何一つ不思議な表情をしていないのがまた。まあ、元気にやってるなら問題ない。初詣に行ってからはまた互いの趣味で別行動だし。
「まあ、何はともあれ元気そうで何より」
『片桐さん今回ヘッドホンとか機械に力入れたイラスト集出してるんだって。帰ったらカズにも見せたげる』
「それはどーも。とりあえず無事に戻って来いよ。あと、会場から出たら現実世界だぞ」
『わかってるからー!』
そう言って電話は切れた。何はともあれ元気そうで何よりとしか言いようがない。あくまで互いの趣味には相互不干渉。遠征に関しては怪我なく病気なくトラブルなく頑張れとしか。とりあえず、大きなため息をひとつ。ふう。
「伊東、餅焼くけどお前も食うか?」
「食べる。、あっ浅浦、砂糖醤油作っていい?」
end.
++++
年末のお話が足りなくなったとかじゃないんだからねッ! スイマセン足りなくなって慧梨夏に電話出演してもらいました
ということでコミフェ戦況報告。慧梨夏姉が東都にいるという話をいつかやったのを引っ張り出してきた。どうやら宿にしているらしい。
いち氏の年末年始は基本的に浅浦クンと一緒にぐだぐだごろごろとしているだけだぞ!