「せーのっ、ドン」
「何なのこれは……」
「つーか、お前ら全員高木に抱くイメージはそれかっていう」
目の前には、ウィスキー、ウィスキー、ウィスキー。そりゃお前、いくら高木の誕生日を祝う目的の飲みだっつっても、これはあんまりだっていう。
アイツは自分でもまあこれくらいは飲むだろうなって言ってデカい瓶を常に置いてる男だっていう。他校の連中がそれを知らなくてもしょうがないとは言え。
インターフェイスの1年生の間では高木イコール常識人というのに付属して、酒豪のイメージが強い。ま、緑ヶ丘だから宿命みたいなモンではあるけど。
アイツの家に行く前、ミドリの部屋で一旦集合してみて荷物の確認をしたらこうだ。みんなアイツへの差し入れにウィスキーを選ぶ辺り、染みついてんだな。
「そりゃタカティと言えば、ねえ」
「じゃあエージの買い物を見せろー! ウィスキーは入ってないよね!」
「ああ、見せてやるべ!」
俺の買い物はこうだ。ウィスキーとかいうアイツの部屋に常備されてるモンは別に買う必要もない。だから、酒という意味で言えば缶チューハイがベター。
食うモンに関しては、アイツがよく食ってるお菓子とか逆に縁遠い揚げ物の惣菜。付け合わせにカットキャベツ。何だかんだ奴の夜は長い。それなりに戦える量が必要だ。
「何て言うかエージ、アンタさすがすぎてしょぼんだね」
「俺も好きでこうなってんじゃないっていう」
「ま、タカティの嗜好を一番わかってんのはアンタだもん、今回はしっかりしてもらわないとね!」
「たまにはラクさせてもらわんと割に合わんべ」
俺とハナのやり取りを眺めて、他校勢が変な顔をしている。俺と高木が一体普段どんな風に過ごしているのかと。それを言えば少なくともあのずぼらを常識人だと言う奴はいなくなるだろう。
何はともあれ、他に要りそうな物を擦り合わせていく作業だ。アイツの部屋にあるモンは大体把握している。何があって、何がないのか。いや、しまった。MBCCの無制限でどう変わったっけか。違う、それも延期になったんだ。
まあ、買い足すにしてもウィスキーに合いそうなモンをパパッと足しときゃいいだろ。それか、アイツが好きそうな割に普段はごちゃごちゃ言って買わないモンを。
「じゃあ、そろそろタカティに行くよーって連絡した方がいいね。メールで――」
「いや、メールじゃアイツは気付かんだろっていう。電話か、それがダメなら直接殴り込むかだな。休みは昼まで起きねーとか普通だからな」
「エージが言うならそうなんだなあ、しょぼーん」
そう言ってハナが高木に電話をしてみたけど、案の定通じない。ほーら絶対寝てやがるぞ高木のパターン的に。こうなったらいつ起きるかもわかんねーなっていう。
「って言うかエージ、アンタ直接殴り込むとか言ってるけどタカティのマンションってエントランスの時点でオートロックなんでしょ? 大丈夫?」
「ロック解除の番号は知ってるから問題ない。じゃ、行くべ」
――と、歩き出していたのは俺一人。漂う沈黙と、妙な空気。
「ん? お前ら何固まってんだ」
「いや……エージが話に聞いてたより奥さんしてんだなーと思って」
「はあ? ミドリお前何言ってんだっていう」
end.
++++
高木不在のIF1年生高木誕話。エイジがいかに嫁やってるかみたいなお話。MBCCでの無制限飲みは高崎の都合により延期されましたとさ
タカちゃんの酒豪伝説みたいなアレはもうインターフェイスの1年生たちの間でもお決まりみたいになってる。
ミドリは前々からそろそろ家事が辛いなーって思ってたのでエイジの存在が本当にうらやましいんだろうなあ!