研究の合間、思い出したように向かうのは情報センター。俺たち理工学部の学生には履修登録の他にあまり縁のないその場所には、今日もアルバイトと称してあの狐がいるはずだ。

「やあ、ミドリ」
「あっ、石川先輩お久しぶりです! 林原さんだったら自習室ですよー」
「そう、ありがとう」

 いい先輩のポーズで受け取ったカードキーを受信端末に翳し、ロックを破る。こんな時期に大学の情報センターに来る学生など数えるほどしかいないという話は聞いたことがある。どうせ今日も給料泥棒だろう。