「何か、朝霞クンの部屋にも就活の戦利品みたいなパンフが増えてきたね〜」
「そういう時期だろ。ま、お前とは別世界だろうけどな」
久々に朝霞クンの部屋に遊びに行くと、前に来た時とはまた違った雰囲気になっていた。業界のあれこれを書いた資料に、シャツやネクタイの数々。
前に来たのはインフルでバターンと行った朝霞クンを担ぎ込んだ時。その時は映画のDVDが机の上にいろいろ積んであって、消化期間なんだなあって思ってたんだけど。
「え〜、俺とは別世界って?」
「お前、よくある普通の就活しなさそうなイメージだし」
「決めつけないでよね〜。一応やることになってるよ、そういう約束だもん」
「約束?」
「ま、そーゆーコト」
ふーん、と何となくはぐらかしたことをそれ以上追って来ないのは、朝霞クンが俺に興味がないのか、聞いてもムダだと思っているのか。どっちでもいいんだけどネ。
そもそも、普通の就職活動をする体じゃなきゃわざわざ髪を黒く染め直したりする必要なんてないジャない。俺がいつだって余裕だと思われてるのも心外だ。
「朝霞クンは、やっぱりそっち方面なんだネ」
「まあ、単純に興味だな」
拾い上げた資料を見れば、それはイベントの企画とかそんなようなことをするお仕事に関する冊子だった。やっぱりまずはそこに辿り着いたかと。
そもそも朝霞クンが何をしてるのかって聞かれても、イメージがね。人間学部とかいうパッと聞き学部の名前で進路が想像出来ないという要素もある。
「セミナーってどんな感じなの?」
「ああ、まあ、話聞いたり周りの奴と情報交換したりとか、いろいろ」
「ふ〜ん。でも確かに朝霞クン人見知りしないから近くの人といろいろ喋ってそうだね〜」
「え、別に普通だろ。こないだも隣になった女子といろいろ喋ってたけど」
「ほら〜! 普通そーゆートコで女の子引っかけたりしないってば!」
「別にそういうんじゃねーっての」
「で、その子可愛かった? 何だったら朝霞クンの彼女に」
朝霞クンは本当にそういうんじゃないとは言うけど、そういうところで女子に話しかけたりなんかしたら下心を疑われても仕方ないよねよね〜。
で、気になるのはそのポニーテールの子のスペックですよね。もしよかったら朝霞クンの彼女候補とかさ〜。せっかく部活も引退して記憶飛ぶようなこともなくなるんだし。
「まあ、可愛いっちゃ可愛いけど男いるしな」
「え〜、そうなんだ〜」
「話してて思ったのは、部活も現役の頃にお前とはまた別にああいう明るくて雰囲気を良くするアナウンサーがいてくれたらもっといろんなことがやれたんだろうなと」
「え〜、俺じゃ不満だったってことー!?」
そう詰めよれば、そうは言ってないけど女の華ってのはまた違うモンだと弁解する。わかるよ? そりゃあ。そうやって思い起こすのは水鈴さんの華。結局俺は届かなかった。
悔しいケド、そこはどうしようもない部分だから認めざるを得ないよね。だからこそステージスターとしての華やかさは努力で身に着ける物だった。それが俺の生きる道、ってね。
「でも朝霞クンでもわかるほど男がいるって分かりやすい子もいるんだねえ」
「左手の薬指に指輪してたし、学生のうちに今の彼氏と結婚するって言ってた」
「ガチなヤツじゃん!」
「将来と言うか家庭についての現実的な考え方とか、勉強になった。彼氏はもっとしっかり考えてるらしいし家事も出来るらしい。一度話してみたいモンだ」
「朝霞クンてそーゆー「人」を追うの好きだよね〜」
end.
++++
困った時のバカップル、の話の裏ではこんな感じになっていました。キャメルのダッフル野郎サイドのお話。そして謎が謎呼ぶ山口洋平の就職活動である。
ダッフル野郎の方はポニテの子について「ああいうアナウンサーがいれば」って思ったようだけど、やっぱりそこに着地してしまう辺りまだまだ抜け切らないらしい。
ポニテの子の彼氏が朝霞Pも良く知るあの彼だとわかったときにはどんなリアクションになるのだろうか。そういうところはやっぱり楽しみだしドッキリにかけたい。