春休みも終盤、情報センターにも春の繁忙期がやってきた。それと言うのは健康診断と同じ時期にある履修登録。新2年から4年まで、3日間の登録期間がある。
もちろん、それを過ぎて実際の講義期間が始まってからも、最初の1週間のうちは履修修正期間というのがあるらしい。例えば抽選に漏れたとか、思ってた講義と違ったとかで履修を変えられるとか。
ゴールデンウイークを過ぎるまでは学内に人も多いし閑散期ほど緩い状態ではいられまい、と現時点でいるスタッフに釘を刺すのはバイトリーダーも板に付いてきた林原さん。
「しかしまあ、よくもこんなに荒らす物だ」
「ホントですねー」
夕方5時までの履修登録時間を過ぎた後は、次の日に備えた準備や整理整頓作業がある。一応飲食禁止になっている部屋に散らかる食べ物の屑を拾ったり、パソコンの設定が変わっていないかチェックしたり。
1台1台マシンチェックをする林原さんの脇をすり抜け、机の下に落ちている紙ゴミを拾う。いくらゴミ箱がない部屋だからって紙ゴミをわざわざ机の下に転がさなくたって。もー。
「何だこれは」
「えっ、あイタっ」
「おい、大丈夫か」
「大丈夫です、ちょっと痛いですけど」
思いっ切りぶつけてしまった後頭部をさすりつつ、林原さんが驚いた原因を覗く。そこには開かれたCDドライブと、回って倒れた1枚のディスクがあった。
「えっ、何だったんですか結局」
「お前が机に頭をぶつけた衝撃でディスクは落ちたが、裏表逆に挿入されたままになっていた」
「えー……と言うか、USBじゃなくてですか」
「CD-Rだなこれは。データが記録された痕跡もある。一応遺失物扱いで保管しておくか」
「保管するのは2週間でしたっけ」
「そうだ」
たまにある忘れ物なんかも一応は保管している。もちろん保管期間の過ぎた物は温情も何もなくバッサリと処分する現場をこの1年の間に結構見てきましたよね!
「林原サーン」
「どうした土田、受付の準備は済んだのか」
「白抜き履修表のストックが結構捌けたンで刷りたいンすケド、コピー用紙のストックがないんスわ」
「スマン、届いたのだが言うのを忘れていた。今はとりあえず春山さんのロッカーに突っ込んであるからそこから持って行け」
「りょうかーいス」
情報センターも春は物要りで、注文して届いた物を置いておく場所がなかったりする。卒論やレポートラッシュで在庫が薄くなっていたコピー用紙も大量に発注したものだから、届く勢いもすごい。
それでなくても閑散期の遺産もある。林原さんが苦虫を噛み潰したような顔で悪いのはすべてあの人だと吐き捨てるからにはきっとそれは春山さんのことだと思う。
「あのプレッツェルはいい加減何とかならんか。川北、持って帰れと言っとるだろう」
「えー、たまにつまんでますよー」
「たまにとは言わん。ケースで持って行け」
「そう言う林原さんはどうなんですかー」
「オレもまだゼミ室にいくらか持っている」
履修登録期間の無料配布キャンペーンでも始めねばならん勢いだなと林原さんが言うものだから、受付で配るんですかとつい真顔で聞いてしまった。すると、冗談だと。
とても冗談には聞こえなかったんだけど、休みなく動いていた履修登録時間を過ぎた後の変なテンションというヤツで納得した。とりあえず、夕飯の買い物には小腹を埋めてから行こう。
「自習室を散らかす連中も問答無用でブラリに入れてやろうか。そんな気分だな」
「林原さんが言うと本当にやりそうで怖いですよー」
end.
++++
情報センター繁忙期のリン様とミドリ。冴さんもちらっと。春山さん卒業後のリン様はノビノビしていそうだ。
例のプレッツェルがまだ残っているらしい。多分第2陣とかも届いてると思うから春山さんの影はまだまだ付きまとうぞ!
この話は机に頭をぶつけるミドリがかわいいだけのヤツ。きっと思いっ切りぶつけたから結構痛いだろうなあ