「あー、不愉快だ。久々に酷い物を見た」

 石川が荒れている。ここまであからさまに不快感を示すことの少ない性悪狸がここまでになっているということは、本人の言う通りよほど酷い物を見たのだろう。
 石川は席に着くなりストレス発散の自棄食い用に持ってきたドーナツの袋を開く。その石川に対し、美奈が茶を淹れつつ何があったのかを尋ねるのも久々に見る光景だ。