星ヶ丘大学の放送部に入って少し経った。雰囲気はまだまだよくわからないけど、今のところは人がいっぱいいて賑やかだし活気があるという印象。
先輩の話によると、1年生は夏のイベントが終わるくらいまでは見習いとしていろんな仕事をするらしい。いくつかある班にも、声がかかったり、引き抜かれたり、頼み込んだりと加入の方法はいろいろ。
「ゲンゴロー、やるぞー」
「はーい」
今お世話になっているのは、3年生のシゲトラ先輩こと鳴尾浜茂虎先輩と2年生のマロ先輩こと白河大信先輩。この2人は同じ班で、ディレクターではなく純粋なミキサーらしい。
「トラさん、部室使用許可は」
「いや? 取ったから問題ない」
「じゃ、改めて行こっか」
「はーい」
先輩たちからは星ヶ丘の放送部の内情について少し聞いた。部活では学年の上下関係が結構厳しいとか、パートでも暗黙の関係があるとか、幹部の言うことは絶対だとか。
マロ先輩が言うには、この班は永世中立班と呼べるほど争いごとには首を突っ込まない班だということらしい。逆に言えば、部活ではいろんな争いがひっきりなしに勃発しているということ。
特に、こっそりと語られたのがはみ出し者の流刑地・朝霞班のこと。部内でも特に変わり者の3人がいる班で、外からブースの中を窺い知ることは出来ない。
部活でちょっとでも悪い風に目立てば即島流しに遭って、不遇な扱いを受けることになるらしい。ただ、マロ先輩が言うには幹部たちが言うほど流刑地の人たちは悪い人でもないとか。
「部室を使うにも許可がいるんですか?」
「部室っつーか機材か。部室はクソ狭いし、誰がいつ使ってるとかってのを把握しとかないとめんどくさいとか何とかで」
「いろいろあるんですねー」
「――というのは建前で、朝霞の暗躍を未然に防ぎたいがため、という説もある」
「朝霞班ってそんなに物騒なんですか」
「いや? まあ、朝霞はステージの鬼だし戸田は短気だから怖く映るけど、人数の少なさを実力でカバーしてる面白い班だと思う」
「へー、上手いんですね」
単に部長の日高先輩が朝霞先輩という人を毛嫌いした結果の嫌がらせが横行してるだけだと先輩たちは呆れたように言う。ただ、そんなところに首を突っ込まないのが永世中立班としてのあり方。
「朝霞が避雷針になってくれてるから俺たちが平穏でいられるってのも多少はあるからな」
「戸田はともかく、朝霞さんと洋平さんは反体制派ってワケでもないっすけどね」
「インターフェイスがどうこう言われてるけど、やっぱ何かあるんだろ、流刑地行きになる要因みたいなのが。俺たちもインターフェイスのイベントに出てるけど、島流しに遭ってないのがその証明じゃんな」
「インターフェイスってそんなに怖い物なんですか」
「いや? 俺は出た方が断然楽しいと思う。ゲンゴローが少しでも出てみたいと思うなら出た方がいい」
「トラさんに同意。俺も洋平さん繋がりでインターフェイスの人とサッカーしたりして楽しくやってるし。マロって名前も緑ヶ丘の先輩が付けてくれたんだ」
部活やインターフェイスという物の話を聞くのがこの2人の先輩で本当によかったと思う。中立の立場から流刑地やインターフェイスに対する偏見もなく見られそうだから。
それどころかインターフェイスのイベントがあれば出てみたいとすら思う。こないだあったファンフェスというステージイベントの裏ではインターフェイスでも何かやってたらしいけど。
「シゲトラ先輩、次のインターフェイスのイベントっていつですか?」
「あー、いつだろな。でもそろそろ戸田が何か聞きに来るんじゃないか? なあマロ」
「そのはずっす。初心者講習会ってのがあったと思います。ぶっちゃけこれも俺やトラさんよりよっぽど親切丁寧なミキサー講習とかがあるから出た方がいい」
「あ、そうなんですね……」
部活やインターフェイスも、どうやらいろいろあるらしい。自分で見なきゃ本質なんてわかんないし、出られるイベントには積極的に出てみようか。
end.
++++
朝霞班、と言うかつばちゃんに一本釣りされる前のゲンゴローはどうやら世界のシゲトラとマロの世話になってたらしい。
朝霞班に引き抜かれてもゲンゴローは持ち前のコミュ力でこの2人の先輩とは仲良くしてるといいなと思う。
確かに見ようによっては朝霞Pは避雷針。同情はするけど助けると自分たちが酷い目に遭うかもしれないというので近寄らない人たちも多かったりするよ! あと実際ステージに関わるときは怖いのとw