青葉女学園大学放送サークルABCの年間行事でも特に大きなイベントなのが、5月下旬の土曜日に近くの植物園でやらせてもらっているステージイベント。去年の感じでは子供が多い印象がある。
この植物園イベントというのが2年生主体でやることになっていて、どういうステージの内容や使う道具を決めたり、植物園サイドとの打ち合わせなんかをしたりする。
もちろん3年生の先輩もサークルに入ったばかりの1年生もみんなで協力してやるもの。だけど、2年生の働きはとても重要になってくるとは前々から言われていること。
「啓子、大道具なんだけど」
「うん、何か思いついた?」
トンテンカンと音を響かせる前にやることは、どんな道具を作るのかという設計作業。ちゃんと計画を立てておかないと後で大変なことになるのは目に見えている。
「背景の木が結構古くなってきてるから新しく作ろうと思って」
「うん、出来るならいいんじゃない?」
「それで、場所も取るから蝶番で折り畳み式に出来ないかと思って」
「なるほど」
もちろん、途中でバタンと倒れないようにする工夫も設計図には盛り込んだ。そんな仕掛けを実際にちゃんと作れるかと言えば、試行錯誤もしないといけないだろうけど。
サークル室では3年生の先輩がステージの打ち合わせをしているし、最近入ってきた1年生たちは小道具を作ってくれている。大道具は危ないし大仕事だから2年生が担当することにした。
「沙都子、アンタはどう思う?」
「折り畳み式なら収納の場所も取らないし、いいんじゃない?」
「そう」
沙都子は森の妖精をイメージした衣装を作るのが仕事で、人数分の服をそれこそ文字通り夜なべして作っている。この衣装に対する注文が多いのはヒビキ先輩と1年生のサドニナ。
沙都子は人間科学部に在籍していて家政科専攻だから被服の分野もお手の物。毎年このイベントで使う着ぐるみもいつの間にかキレイになっていたと思ったら沙都子の犯行だったということがある。
「あれ、沙都子その服色違わない? 森の妖精なのに青とか」
「これはKちゃんの分」
「アタシの?」
「Kちゃんは森の清流の妖精っていう設定で、凛とした様をイメージしてるんだよ」
「へえ、それは啓子にピッタリだね」
沙都子が言うには、ヒビキ先輩は森に降り注ぐ光の精霊だし、紗希先輩は森の中にゆったりと吹くさわやかな風のイメージなんだとか。1年生はみんな同じ妖精の子供というコンセプトで。
「本当は直クンの衣装も作りたいんだけど、直クンは基本着ぐるみだから残念だなーって」
「作るなら作ればいいんじゃないの。直だって別に四六時中着ぐるみ着てるワケじゃないんだから」
「ボクはいいよ、着ぐるみだし。その分他の子に回してあげて」
「ほら、直クンはこう言うから」
着ぐるみは過酷な仕事になるから、一番体力のあるボクがやるのがいい。去年もそうやって着ぐるみの中で子供たちに振り回されたりして、終わった頃には疲れきっていた。
ボクが着ぐるみをやることで紗希先輩にはミキサー面で負担をかけてしまうことになってとても申し訳なく思う。だけど紗希先輩は、着ぐるみは顔や声が使えない分難しいことだから立派な仕事だと励ましてくれた。
「ボクは今年も着ぐるみで闊歩するよ!」
「さすが直クン、イケメン…!」
「イケメンの使いどころを間違えてるけど」
「啓子、森の清流のように冷たい」
「なるほど。沙都子、そういう意味だったか」
「違うってばあああ!」
end.
++++
さとかーさんの学部設定みたいなものが登場してそれが生きてきた青女イベント準備回。最近忘れがちだった青女の植物園イベントである。
直クンはナノスパでも指折りのDIYキャラだと思うの(他には朝霞P、つばちゃんなど)。工具の似合う女子。イケメン。
まあ、ミキサーがどうしても足りなくなったら最悪向島の愉快な下僕たちにお願いすればげふんげふん