「えー、15分押しで定例会を始めます」
例によって伊東のプチ遅刻から始まる定例会。ファンフェス終了後としては初めての会議になる。15分押しでというのにも全員慣れた表情をしているよ。
「今回はもじゃが欠席ということで、これで全員だね。ファンフェスが終わって少し経ちましたが、各大学の意見や反省などはまとまりましたか」
「はい」
「ん、朝霞君」
「ウチからファンフェスに出たのは3人だったけど、これはこれでライブだしいい経験になったと思う。今後は部との関係でインターフェイスに迷惑をかけないよう気をつけます」
「星ヶ丘は状況が状況だから、あまり酷いようなら僕たちに気を遣わなくても大丈夫だよ」
「いや、これは俺の力不足だ」
星ヶ丘の部内状況に関してはみんな仕方ないと納得しているけど、朝霞君は自分の非もあると言って曲げない。真面目なのはいいけど、確かにトップから見ると扱いに苦労しそうだという印象は拭えないね。
「あと個人的な意見としてはこーたが非常に有能で向島にはいい2年生がいるなと感動してる」
「は!? 神崎がかい?」
「あー、わかるー。こーたクンかわいーよね」
「いや、ヒビキ、あのウザドルのどこがかわいいんだい?」
「俺もわかるな。こーたってさ、何か側に置いとくと安心するフォルムだよね。ぬいぐるみみたいって言うか」
「そーそー! 大石クンそーゆーコト!」
なんてこった。ウザい界のアイドル略してウザドル神崎がインターフェイスではこんなに評価が高いだなんて。向島ではそんなことは全くないんだけど。
たまに見るだけだからよく見えるとか、隣の芝は何とか、ということなのかもしれない。これが毎日と言うか毎回のサークルで顔を合わせて見ろ。かわいいよりウザいの方が強くなるに決まってる。
「確かにこーたは何気にデキるんだよな。ミキサーも上手いし」
「伊東、お前もか…!」
「まあ、ミキサーが上手いってのは向島2年ミキの3人全員だから別にこーたに限った話ではないけど」
「そうかい?」
「でも、こーたは将来のことをしっかり考えてんだろうな。こないだ簿記のことについて聞かれたもんな、独学でもやれるモンかって。ちゃんとしてんだろうなー」
ファンフェスの反省のはずが、いつの間にか神崎を褒める会になっていた。と言うかここにいるメンツはどうしてこんなに神崎の良エピソードを持ってるんだ。
一応、僕も普段向島で見ているあのウザさや腹の立つ顔のことを言ったら見事なまでの集中砲火だよ。かわいい後輩なんだからそんなに下げてやるなってさ。
菜月、信じられるか。お前が普段殴ったり蹴ったりしてるウザドルを褒め讃える世界がここにあるんだ。野坂、嘘だと思うなら見に来い。ここじゃ神崎がいるなら向島は安泰だという世界だ。
「でも向島の2年生は基本優しいよね」
「……ヒビキ、連中のどこにそんな要素があるんだい?」
「今度ウチの植物園イベント手伝ってくれるって」
「それは優しいと言うか、啓子さんという絶対的な力に抗えないだけじゃないのかい? ん、青女さんから植物園イベントの話が出たことだし、ファンフェスの話はこれくらいにして活動報告にしようか?」
結局、ファンタジックフェスタの主な反省は装飾をもっと早めに作ろうということに落ち着いた。その他は不可抗力だったり個人の問題だったりしたから。
定例会の大きなイベントはとりあえず一段落。後は対策委員のサポートをしたり、次に迎えると思われる夏のイベントに向けて、その話が来るのを待つだけだ。
しかし、何で神崎なんだ? 僕にはそれが未だにわからない。
end.
++++
今回やりたかった神崎有能説。まあ、向島の良心と言うか、最後の正当派ツッコミではある。
他の大学の人はあまり神崎のウザい面を見ないからわからないんだと圭斗さんは思っているようだけど、外でよく見えるのもある種才能である。
しかし圭斗さんにはやはりそれが信じられないようなので、日ごろの行いと言うか何と言うか……