「どーしたの野坂が時間通りに来てるとか」
「俺だってやれば出来る」
「何を言ってるんですか、私が約束の1時間前に家に行って起こしたおかげでしょうが」
午前9時、星港市の植物園ステージ前。今日は青葉女学園大学放送サークルABCがここでステージイベントを行う。でもって俺とヒロ、そしてこーたが手伝いとして参加している。
MMPはラジオメイン、と言うかラジオしかやらない大学だから果たしてステージの手伝いと言われても力になれるのか疑問だったけど、俺たちに期待されているのは男手らしい。
それこそステージと言うだけあって、舞台には大道具もあるし、当然機材も搬入して組み立てなければならない。俺とこーたには機材面でのサポートとしての役割もあるとかないとか。
そもそも、どうしてそんなことになっているのかと言えば……うん、いや、まあ……啓子さんの圧力、げほんげほん、啓子さんのお願いをヒロが断れなかった、そしてそれに巻き込まれたのが俺とこーただ。
「こーたクンわざわざ野坂クンの家に寄ったの?」
「はい、そうでもしないとこの人は間違いなく寝坊しますし、一人で電車になんか乗せよう物なら間違いなく寝過ごして遅刻しますからね」
「こーたクンはエラいなー」
「ヒビキ先輩こーたなんか誉めんでもええんですよ」
「お前が言うなヒロ」
「そしたら、機材組み立てるから野坂クンとこーたクンにも手伝ってもらおうかな」
「はい」
前の対策委員だった福島先輩の先導で機材を組み立てていく。現在青女でアクティブなミキサーは福島先輩と直クンの2人だ。
話を聞くと、2人とも女子の平均よりは力があるらしいけど(直クンはイケメンだからともかく福島先輩はとてもそうは見えない)、如何せん2人での運搬は大変だ。
ミキサー陣が機材を組み立てるその脇を、アナウンサー陣と1年生がそれーっと声を上げて小道具なんかを運んでいる。大道具を運ぶのはどうやら機材の組立が終わってから。男手がね、必要ですからね!
ステージとは言え、機材を組み立てる基本はラジオとそう変わらない。少し違うところは福島先輩から教わりながら。うん、ためになる。屋外での機材セッティングの豆知識は大学祭で生かせるだろうか。
「やっぱり男の子がいると早いね。ありがとう」
「うん、さすが向島はミキサー王国だよ」
――と福島先輩と直クンは言ってくれるけれど、俺とこーたは実質何もしていない。
福島先輩は俺とこーたより重い物をひょいひょいと運んでいたし、機材のセッティングにしても俺とこーたが向島との違いを観察している間にそれを説明しながらササッと組み上げてしまわれたのだから。
「それで、野坂クンとこーたクンにちょっとお願いがあるんだけど」
「はい、何でしょうか」
「今日は、直クンが着ぐるみだから実質ミキサーがアタシ1人なの。1年生は壇上のお手伝いだから。それで、もしかしたらミキサーをお願いするかもしれない」
「ええっ!? そんな急にですか!?」
「ううん、配置転換とかで繋ぎのBGMを切り替えたりとかそういうので、コーナーを担当してくれってワケじゃないの。ゴメンね、言い方がちょっと大袈裟だったね」
「ああ、それくらいであれば」
「ほら、アタシ大道具や重い物運ばなきゃだし。ミキサーがいなくなっちゃうから。BGMが切れるとね、事故だからね」
……と言うか、それをさらりと言う福島先輩だ。普通に考えたら、そう、だよなあ。その状況で自分たちのやるべきことを考えて、こーたと目を合わせて答え合わせ。
「福島先輩、そういった運搬などを俺たちに指示していただけると」
「はい、野坂さんの言う通りです」
「本当? でもBGMのフェード遊びなんかは向島の子のセンスでやる方が」
「いえいえいえ! そんな滅相な! おっ、俺たち大道具の運搬がシタイナー、なあこーた」
「ええ野坂さん」
「それじゃあ、大道具の運搬をお願いしようかな」
ハイヨロコンデー、と棒読みの声が揃った。だって、ただでさえ男手としての仕事を現時点ではさせてもらえていないのだから。
大変な仕事を進んで引き受けてくれるなんて向島の子たちは優しいね、なんて福島先輩は笑顔を向けているけれど……言えようか、青女逞しすぎだろ、なんて。
「菜月ちゃんは2年生の後輩が可愛くて仕方ないだろうな、こんなにいい子たちなんだもん」
end.
++++
最後、紗希ちゃんの言葉にノサカと神崎は草を禁じ得なかった模様。可愛くてw仕方ないwだとwww
そんなこんなで今日は青女の植物園イベントという体なんですが、妖精さんたちが逞しすぎてね! 女だらけだと鍛えられるからね!
機材運搬にしても組立にしても紗希ちゃんの手際が良すぎて手が出せなかったノサカと神崎である。頑張れ、ミキサー王国。