「それでね、やっぱりプロの番組を聞いて意識を高めた上でこれから放送制作に携わる上でのモチベーションを上げてもらってね」
延々と続く大演説は終わる気配がなく、アタシたち対策委員は正直みんなその話にうんざりしていた。もしこれが前の対策委員の人がしてくれるタメになるアドバイスなら歓迎していたと思う。
野坂から聞いていたからいつかはこの瞬間が来るだろうとは思っていたけど、まさか本当に対策の会議に乗り込んでくるとは。向島の三井先輩という爆弾が火のついた状態でこっちに回ってきた、そんな状況。
「って言うか、三井サン何しに来たの? こっちはせっかく野坂が遅刻せずに来て会議を進める大チャンスなのに」
「僕は対策委員のみんなを正しい方向に進めるためにアドバイスしに来たんじゃない。ありがたく思ってよつばちゃん」
「頼んでねー……つか的外れもいいトコだ」
全員がつばめの言葉に頷かん勢い。野坂が遅刻せずに来るとかあと何回あるかわかったモンじゃないのに別の邪魔が入るとか。しかも基本上から目線。そんなの聞く気もないよね。
向島の三井先輩は、前までは主流だったプロ志向の人。スキー場DJにも行かなくなった今は、みんなで仲良く交流しつつ楽しくやろうという雰囲気。ここ2年でインターフェイスの大きく空気は変わったらしい。
アタシたちは今のインターフェイスに必要な初心者講習会を企画してるのに、やれプロ講師だ何だのと。でもって空気が変わったのを緑ヶ丘の意識低下とか言ってくるのが余計腹立つ(特に高ピー先輩を目の敵にしてるから)。
「講習でやって欲しいことは僕がちゃんと講師の人に伝えてあるし、対策委員のみんなが話し合うことなんて当日の会場設営のことくらいじゃない。気楽にやろうよ」
「……果林、そこまで言うなら会議閉めよう!」
「ちょっ、つばめ」
「うちらが話し合うことなんかないんだろ、はい、帰ろう帰ろう。お疲れしたー」
ガタッとつばめが立ち上がり、ドリンクのグラスを返却口に戻して階段を降りて行ってしまった。つばめを追って啓子さんとヒロ、他のみんなも立ち上がる。それを見て三井先輩は暢気に2年生は子供だねーとウルサい。
ポコンと携帯が何かを受信し、それを机の下でこそっと見ればつばめから。場所を変えて会議を再開しようとのことだった。そういうことか。それならアタシも立ち上がろう。
「みんな帰っちゃうみたいだし野坂、ご飯行こうか」
「えっ、ですが」
「今年の対策委員もまとまりがないみたいだから、野坂も苦労するね。僕が話を聞いてあげるよ。今までにも結構溜まってるでしょ」
「そういうことなら、アタシも帰ります。お疲れでーす」
「ちょっ、果林」
というのはポーズであることを、後で野坂にはメールを入れてここは囮になってもらおう。そもそも、アタシたちは普段から野坂がいない状態でもちゃんとやれてるんだから、慣れっこと言えば慣れっこ。
階段を降りると、つばめが1階奥の死角になるスペースに場所を取り直したと教えてくれた。とりあえず、先に動いたつばめだけがドリンクを買い直し、三井先輩がこの建物からいなくなったのを確認してから会議再開という作戦。
「果林、上どうだった?」
「あの人、野坂をご飯に誘ってたけど」
「まあ、いいんじゃない? 今日は囮になってもらおう。めんどくさい先輩の接待も議長の大事な仕事ということで」
「ですよねー」
「って言うかヒロ何なのアイツ超めんどくさいんだけど」
「ボクそんなん知らんよ!」
end.
++++
ノサカ頑張れ回。せっかくかーなーりー珍しく遅刻しなかったのに別のトラブルを運んで来た模様。本当にあともう何回もないのに……(初心者講習会までの日付と年度内にノサカが遅刻しない会議がw)
きっとつばちゃんはめんどくさい先輩や何かに対する対処と言うか、抜け道をある程度持ってるんだろうなあと推測。言ってもそこははみ出し者集団・朝霞班の敏腕Dである。
三井サンが高崎を目の敵にしてるような話なんかもいつかもうちょっと具体的にやってみたい。きっとチクチクチクチク棘があるんだろうなあ!