「朝倉さんて、大学でどういうことを勉強してるんですか?」
「え、俺?」

 バイトなんかをしていると、普通に大学生活を送ってるだけではなかなか知り合えない人との出会いがある。朝倉さんはバイト先での先輩で、青浪敬愛大学の4年生だ。
 ウチのバイト先は割と自由度が高い。店頭ポップの書き方だとか、おすすめの本につける「店員の声」という紙だとか。特に自由が利くのは特設コーナーを作ることに関してだと思う。
 伊東なんかは割と軽率に特設コーナーを作る。去年なんかはワールドカップがあったからサッカー関連の本をこれでもかとかき集めてコーナーを作っていた。このテの改装をウチでは魔改造と言う。
 俺が強いのは小説方面だから、文学賞の時期とか本屋が勧めたい小説みたいな時期になると個人的に忙しくなる。伊東のサッカーや俺の小説以外に、この分野ならコイツに投げろみたいな空気が出来ている。