ふんわりと、おいしそうな匂いが漂ってくる。お世辞にも広いとはいえないサークル室だし今は夕方でちょうどお腹が空いてくる頃にこれは正直言ってテロだと思う。
 おいしそうな匂いの元は、お花のカチューシャをしたハナちゃんが持ってきたトートバッグ。綿素材の大判の鞄には、ブレッドバッグと英語でプリントされている。

「おハナー! アンタまたそんな匂いさせてー!」
「果林先輩目が怖い! しょぼーん!」
「お腹空くから配給するか匂いを絶つか何かしてお願いだから! このままじゃアタシ死んじゃう」
「それじゃあ、パン食べたい人ー」
「はーい!」