「おはよー、っと、今日は盛り上がってるねー」
「大石先輩おはようございますー、あのですね、これなんですけど」
UHBCの1・2年生の間では現在スマホアプリのゲームが流行っていて、ヒマさえあればみんなやってるという状況。大石先輩は、今はこんなのがあるんだね〜と覗き込んでいる。
「アオの記録がなかなか破れないんですよ」
「ミドリ、難しいの?」
「ルール自体は単純なんですよ。この丸いのを同じので揃えると消えるっていうだけで」
「あっ消えた」
「これをしゅしゅしゅって上手いことやってスコアを伸ばしていくといいんですけど、誰がやってもランキングを破れないんですよー」
俺もやってみたいなあと大石先輩が言うものだから、どうぞとツカサ先輩がスマホを差し出した。慣れないのか、指先がふらふらしていてたどたどしい。
その間にもアオは淡々と、黙々とゲームに集中していた。確かにアオはこういうゲームに集中したら手が付けられないだろうなっていうタイプではあるけど、上手すぎるんだよなあ。
「あー、これで終わり?」
「ですね」
「ゴメンツカサ、もっかいやらせて!」
「いいですよ」
どうやら1回やって要領がわかったのか、大石先輩は少しずつハマりつつあるようだった。大石先輩のケータイじゃスマホゲームは出来ないから、こういうのは新鮮だったのかもしれない。
俺はなかなか上達もしないしアオには到底敵わないからマイペースに楽しむことにしているけど、これで本格的にやろうと思ったら課金する必要も出てくるだろうから、なかなか難しいところ。
「これ、大石先輩完全に火ぃついたな」
「わかるんですか?」
「大石先輩、相手がいると思うとなかなか力が出せないとか言ってるけど、逆に言えば自分の記録を破るだけなら延々とやってられる人だから」
「へー、そうなんですねー」
「ほら、水泳もリレーを除けば個人競技じゃん」
つまり、闘争本能の向く方向ということなのかもしれない。確かに、水泳って同じプールで泳ぐ人はいるけど、ある意味自分との戦いだもんなあ。
大石先輩ほど団体競技や班行動に向かない人もいないとツカサ先輩は優しさを短所として語る。きっと、同じプロデューサーだからこそ見えることがあるのかもしれない。
「ねえねえツカサー、これってー」
「ああ、これは広範囲のブロックを消せるヤツです」
「あっホントだありがとー」
すると、アオの様子が少し変わった。何やら大石先輩の様子を気にし始めたような、そんな感じ。
「アオ、どうしたの」
「序盤の面だけど、ツカサ先輩に記録破られたって通知が来て」
「えっ」
「うん、まあ、大石先輩だろうけど」
「アオ、大丈夫だ。大石先輩は多分ひとつの面をとことん極めるタイプだから安心して先に進めてもらって」
「信じますよ、ツカサ先輩」
私だって記録を破られたら破り返したくなる方なんですから。そう言ってアオはゲームに戻った。って言うか、今日ってサークル……大石先輩がこの感じじゃあ、まだまだ始まらないかなあ。
「ツカサ先輩、サークルって」
「そのうち千尋先輩が何とかしてくれるだろ」
end.
++++
あらゆる数字を破りに行くスタンスのちーちゃんは、パズルゲームなんかにハマるとどっぷりいっちゃうのではないかと思った。
UHBCだったらそのテのパズルゲームなんかは蒼希がめちゃくちゃ上手そうだけど、他の子もきゃっきゃとやってるといいなあと。そんなUHBC1・2年生である。
きっとこの後ちーちゃんは坂井さんにめっちゃ怒られたんだろうなあw