「おはようございますー」
「あ、ゲンゴローおはよ〜」
星ヶ丘大学でもテスト期間を迎えていて、心なしかみんないつもよりバタバタしているような気がする。それでなくても丸の池ステージももうすぐ。テストと正念場が重なるとかいう修羅場だ。
山口先輩はさすが、3年生だけあってテストも少ないらしくて余裕の表情。目の下にクマを作った朝霞先輩には余裕がないように見えるけど、山口先輩がステージ前の朝霞先輩は大体こんな感じだと教えてくれた。
「源」
「あっ、はい!」
「お前、テストはいいのか」
「はい、今日は3限までなので」
「参考までに聞くけど、履修登録の仕方や授業の受け方は鳴尾浜の影響を受けてないよな」
「あ、はい、その辺は部活に入る前のことなんで」
それならいいんだと朝霞先輩は手元の台本に目を戻した。質問の意図が少し見えないのが不安になる。チラチラと朝霞先輩と目を合わせようとしても、台本に真剣で目なんて合うはずもなく。
それならばと山口先輩に目で訴えてみる。さすが、山口先輩は俺の視線に気付いてくれる。「ん?」と傾げられた首に、俺も同じ動きで返してみる。鏡のように「ん?」とカクリ。
「山口先輩、履修登録の仕方ってどういうことですか?」
「単位は1・2年のうちに取れるだけ取っとけみたいなことだよ。つばちゃんも今テストでカッツカツなはずだよ〜」
「それは、大学生活を有意義なものにするため、みたいなことですか?」
「今の朝霞クンが人の大学生活を気にかけるはずナイナイ! すべてはステージに直結、でしょでしょ〜」
随分と人聞きの悪いことを言ってくれるな、と朝霞先輩は台本に目を落としたまま山口先輩にチクリ。ホントのコトじゃないという反論には、充血した目でギロリ。
「あの、そう言う朝霞先輩はテスト――」
「ゼミと出席+授業内の課題で評価100%になる講義、それといくつかのレポート(提出済み)だけだ。こんな時期にテストで教室にいる時間がもったいない」
「朝霞クンはちょっと極端だけど、1・2年のうちに単位を取っておけば、丸の池前はステージに向き合えるってコトだよ〜」
それは、俺の前に流刑地班のミキサーだった越谷さんという4年生の先輩が山口先輩と朝霞先輩に教えてくれたことらしい。ただ、朝霞先輩ほど極端にやれとは言っていないみたいだけど。
「で、それとシゲトラ先輩の関係って……」
「アイツはまだ2年の必修残してるはずだからな」
「えー!?」
「多分まだここに来てないはずだぞ。テストカッツカツだって喚いてたし」
卒業が怪しいという程ではないけど、部活とテストのバランスが取れなくなってバタバタする人も毎年何人かは出てくるらしい。そうならないように、比較的穏やかな1年生でやれることはやっておけと朝霞先輩は語る。
「そうだね〜、確かに俺去年ステージと対策委員とテストとバイトと資格の勉強でカッツカツだったし、計画性って大事だよ〜」
「山口先輩それはどうなんですか! バイトもやってたんですかテスト期間なのに」
「源、常人に山口は参考にならないぞ」
「え〜!? 朝霞クンだって常人には参考にならないよ〜!」
「あ、えーと……つばめ先輩を参考にしようと思います」
すると3年生の先輩は「それがいい」と声を揃えて台本に目を戻した。履修登録はまだまだ仕組みがよくわからないけど、秋学期はもうちょっと真剣に考えてみよう。
end.
++++
テスト期間中の朝霞班、3年生2人はいろんな意味でアホなので常人には真似できない模様。
洋平ちゃんのバイトに関しては仕方ないね、夏はるーびーに焼き鳥がうまーだからね、仕方ない。出来る能力なのも悪いよー
ゲンゴローにはこのまま何となく真面目にやっていってもらいたい……いろんな意味で極端な方向に振れなきゃいいよ!