「ちょっと、外を見てきてくれないか?」

いやに静かな窓の外。先程まではあれほど波がざわめき立ち、荒れ狂っていたというのに。不気味なまでの静けさは、本来安堵を覚えるはずが、逆に不安を掻き立てた。
カラコロ…と、若い管制官がそろりと様子を窺うように窓を開ければ、先程までの嵐が嘘だったかのような光が降り注ぐ。鈍雲は光明に裂かれ、行く宛もなく引いていた。

「晴れてますね。」
「そうか。」
「雪に変わったかと思ったんですが。」
「馬鹿野郎、雪にはまだ早いだろ。今降られても迷惑だ。」

報告を受け、彼も窓から身を乗り出す。波の音は、遠くなっていた。水面に映る月が揺らめき立つ。