「へへっ、えへへへへへ〜」

 さっきから、この人のにやけ顔が元に戻らない。人の家に突然押し掛けてきたかと思えば人のクッションに体を投げ出して、翳す左手薬指には青い石が埋め込まれたシルバーの指輪。
 俺はその指輪の出所も、その日に至るまでの経緯も確かに知っている。その後起こりうることも予測出来る。よかったな伊東、返事はイエスだぞ。その話は明日かもしれないし、数年後かもしれないけど。

「浅浦ク〜ン、ふふっ、うへへ」
「顔が崩れてるぞ」
「浅浦クンだから今更ー」
「はいそうですか」