今のMBCCは高崎先輩とカズ先輩、この2人の先輩に支えられている。アメとムチとかいろいろな言い方は出来るけど、高崎先輩は厳しくてカズ先輩は優しい。そんなイメージ。
他校の人にもカズ先輩は優しくて羨ましいとよく言われる。俺から言わせてもらえば、高崎先輩も厳しいけどカズ先輩はめちゃくちゃ厳しい。これだけは言っておきたい。
「よく言えば期待の裏返し、悪く言やお前が体たらくってな」
「五島、悪く言うな」
「いっちー先輩も厳しいかもしれないけど手は出さないんだからいいじゃん。アタシなんて高ピー先輩にどれだけほっぺたつままれてるか」
「それはお前のほっぺたがやらかいのが不運だった」
「それな、完全に癒しグッズ扱いじゃんね」
果林は高崎先輩に可愛がられてるイメージが強い。と言うか、果林が高崎先輩に懐いてる。あの人の懐のデカさと果林の物怖じしない性格が合ってんだろうなと思う。
「で、L、お前はカズ先輩に厳しくされるのが不満なのか」
「そうは言ってない」
果林曰く、高崎先輩はアナウンサー陣に対する講習で「どこが悪いからこう直せ」と直接言うことはあまりなく、自分でどこが悪かったのか考えさせて、改善させる方針らしい。
対して、カズ先輩。ミキサー陣に対する指導では「曲と曲の間の無音時間が長くなってるから、ヘッドホンを外してスピーカーからの音も聞いてね」とわかりやすい教え方。
それでもって、どうしてそういうことが起こって来るのかという解説まで入れてくれるらしいのだ。どうしてミキサーである俺がその話に「らしい」と伝聞調なのかって?
「それが俺に対しては「生音を聞け」だけなんだよ」
「あー」
「あー、これは高ピー先輩スタイルですよねー」
果林に言わせればその一言は、生音を聞いて自分の何が悪いのかを確かめろ、ということらしい。それで導かれるのが曲と曲の間のブランクが長いという事柄であれば、ひとまず正解。
生音を聞いてその問題が出てきても、次に考えなければならないのはどうすればその問題を解決出来るかということ。対処法なんていちいち教えてもらえないのが高崎先輩流。
「俺と高木の間で明らかに扱いに差がある。それが嫌とかじゃないけど、いっこだけ言えるのはカズ先輩はめちゃくちゃ厳しい」
「現時点でタカちゃんは面白いミキサーだけど、自分の正当な継承者って言ったらやっぱりLになるワケだから、厳しくなるのも当然ですよねー。って言うか1年生と同じ扱いを求めるとか」
「それはいいんだけど、って言うか五島もいるだろ」
「定例会と対策委員の違いってのもあるんじゃない? Lはより純度の高い後輩じゃんね」
「純度なあ」
「サッカーもするしね」
「いや、それは五島もだし」
俺からすれば、高崎先輩も厳しいには厳しいけど、サークルの外という意味でのプライベートな付き合い……と言うか家飲みを結構やってることもあってリラックス出来る相手になっている。
カズ先輩はサークルや定例会といった場でめちゃくちゃ頼れる先輩で、めちゃくちゃ厳しい先輩という個人的なイメージ。優しいのは事実だけど、それは4番目くらいに来る。3番目? あの人意外に職権濫用するよな。黒幕。
「高ピー先輩の不器用さをカバーするのもいっちー先輩だし、いっちー先輩がちゃんとしてなきゃMBCCは回ってないのはわかるんだけどね」
「あー、そーいやムトーさんもそんなようなこと言ってたね」
「果たしてLがどれだけいっちー先輩に近付いてくれるか」
「ホントだなあ」
「いや、つかお前も頑張れよ五島!」
end.
++++
ラブ&ピース成分を薄めたりっちゃん的ポジションに落ち着きそうなゴティ先輩である。
MBCCの機材部長は多分自分が目を付けたコイツと思う後輩を徹底的に扱きあげる傾向があるんだろうね。城戸女史もそうやっていち氏を育成してきた。
果林とゴティ先輩がやんややんや言ってるのにしょげしょげしてるLがかわいいだけのMBCC2年生トリオである。