「朝倉ー」
「ああ、どーした宏樹――って、えっ」
「ちーづーちゃん」
「ぎゃああああっ!」
朝霞クンを引きずって青敬の大学祭に遊びに来たら、長野っちは元気そうで何より。そしてそのまま大学を回ってたら面白いモノを見つけちゃったモノだから、声かけちゃったよね〜。
「何でいるんだ洋平!」
「え〜、ちづちゃんヒドい〜、人の顔見て叫ぶなんて〜」
「朝倉ヒドーい」
「宏樹は黙れ」
元々大祭まであと1週間っていうこの時期に遊び回るのにいい顔をしてなかった上に、何が何やらわかってないような表情の朝霞クンに今の件の説明を入れてあげなきゃね。
「俺の高校の同級生でサッカー部マネ、今は青敬の放送部で映像編集をメインに活動してる、ちづちゃんだよ〜」
「インターフェイスの活動には出てないけど、作品出展の映像は大体朝倉が編集してる」
「ああ、そうなのか。でも長野はともかく山口の顔見て叫ぶとか。山口なんか一発ぶん殴ってやればいいだけだろ」
「うん、そんな朝霞クンが大好き!」
「うるさい」
「ぎゃっ!」
朝霞クンに一発もらった腰をさすりつつ、長野っちとちづちゃんがやいやいと言い合っているのを眺める。こういう、仲良しさんたちのちょっとしたケンカって、見てるのちょっと楽しいよね。
「朝倉はこの通り粗暴だし、か弱い長野さんも入院前まではよく小突かれたりして、痛かったなー」
「宏樹がか弱いかはともかく、アタシには洋平を殴れない理由があんだよ」
「長野を殴れて山口を殴れない意味がわからないんだけど」
「朝霞クンにはそうだね!」
「お前、弱みでも握ってんのか?」
「俺がって言うよりは〜、弟が?」
「朝倉、山口の弟と付き合ってるからね。その弟がブラコンで、山口を殴ってんの見られたときには別れる寸前だったらしいね」
「そーゆーコトです」
弟の航平も高校まで同じサッカー部で、その当時は知る人ぞ知るサッカー兄弟だったこともあったり(現に伊東クンは知ってた)。で、航平とちづちゃんは高校の時から付き合ってる。
ちづちゃんはうちに遊びに来たりしてるし両親公認の彼女ってヤツ〜? 今は遠距離だけど、たまに会えるときにはそれはもう人に見せつけるようにいちゃいちゃしてるでしょ〜。
「つーコトは、将来的には義妹になるのか?」
「そうだね〜、そのまま行けば〜。航平、頑張って一戸建て持てるくらい稼いで欲しいな〜、何かが間違って俺の部屋でいちゃいちゃされてもさ〜。あのとき大変だった〜、リビングで寝ざるを得なくて風邪ひいてさ〜」
「鬼! 悪魔! 呪ってやる!」
「あれ、ちづちゃんそーゆーの信じてないっしょ〜?」
「朝倉、そう簡単に呪うとか言わない方がいいよ」
「ほら、長野プロもこう言ってる」
長野っちと2人でちづちゃんを突っついて遊んでると、そればっかりに夢中になっちゃって周りがなかなか見えていなかった。無言で腰に食らったもう一撃が、現実へと俺を帰す。
「山口、これ以上用がないなら帰るぞ。ステージらしいそれがあるワケでもないしこの時間があればまだ台本を見直せた」
「あー、ゴメンって朝霞クン! 打ち合わせは後でちゃんとやるから〜! ね、インプットインプット! 肩の力抜いて〜? ほ、ほら、ウチのステージにちづちゃんの映像効果を合わせる妄想とかさ! 楽しいと思うな〜」
適当なコトを言って朝霞クンを引きずってきたのはとうにバレてると思う。それらしい文句も全部即興の言い訳だということも。遊びたかっただけなんだもん、しょうがないよね〜。
end.
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ふえるなのすぱんえっくす、つながり編。青敬の千鶴嬢と洋平ちゃんの予期せぬところでのあれこれ。
洋平ちゃんと長野っちは人をイジらせたら結構エグいと思うの。しかし対策時代、この2人にさらに石川を加えた3人にイジられまくってた高崎である。
洋平ちゃんが鬼か悪魔だとしてもそう簡単には呪えないものである。